すべてにバランスがとれた万能オープン【VWゴルフ カブリオレ試乗評価】の目次
合理的な4シーター、カブリオレ
少しクルマに詳しい人なら、この新型VWゴルフカブリオレ をひと目見たときに、まず運転席&助手席あたりからグイっと伸びている骨太なロールバーがあったのを覚えているだろう。あれはあれで、ストロベリーバスケットなどと呼ばれるなど、ゴルフカブリオレを象徴するようなものだった。新型ゴルフカブリオレになり、そのロールバーは廃止され、スッキリとした印象のスタイリングへ変更されている。また、すでに販売を終了しているVWイオスのハードトップではなく、ゴルフカブリオレは、ソフトトップを採用しているのも特徴のひとつだ。
ルーフを閉じた時のクーペ のような美しさが魅力だったイオスのハードトップではなく、なぜソフトトップなのかは、色々あるだろう。イオスが1590kgという車重に対して、ゴルフカブリオレは1470kgと120kgも軽量だ。単純に屋根だけの重さではないにせよ、軽さは燃費に効く。これだけ、燃費だ環境だと言われ続けている自動車業界において、ヨーロッパのエコカーをリードするVWが車重増により燃費が悪化するハードトップを選択するのが難しいのは容易に想像できる。当然、金属のルーフよりソフトトップの方が安価になるはずなので、販売価格にも影響が出るだろう。実際、イオスの2.0TSIが478万円だったのに対して、399.9万円(細かく刻んできた)というのはルーフのコスト以上にお買い得感は高い。
と、さすがVWといえるほど合理的である。VWゴルフカブリオレは、4シーターのカブリオレだ。実際に購入をしない立場でみれば、オープンカー は屋根の収納スペースが必要。そうなれば、割り切りが必要で、なにも4人が乗車できなくてもいいのでは? と、思ってしまう。しかし、日本は税金や維持コストが恐ろしく高い。そのため、複数台の車両を維持するのはむずかしい。そうなると、もしものときに4人乗れる、後席をカーゴスペースとして使えるなどなど、例えメインは2人で十分だったとしても、実際の購入者目線なら、そう考えてしまうのも当然。そういう意味では、日本マーケットにピッタリだろうと評価したい。
さらに、ルーフの開閉にかかわらず、トランクは約250Lの容量をもっている。リヤシートは50:50の分割可倒式。トランクスルーにもなるので、カブリオレとは思えないほどの荷物が積める。また、最小回転半径は5mと小さいので、趣味性のクルマ=不便という図式がほとんど当てはまらないくらい合理的なのである。
ゴルフより、高級感のある重厚な走り
試乗するために、運転席に乗り込むと、まず気が付くのがAピラー。ゴルフより短くより傾斜が強くなっていて、顔の前まで迫ってくる印象だ。近くにあるためか、ピラーそのものも太く感じる。このAピラーの角度と短さが、普通のゴルフとは違う少しエレガントな雰囲気を醸し出しているのだろうと評価する。
早速、ルーフをオープンにした状態で走ってみる。サイドとウインドウを立てていると、ほとんど無風。フロントウインドウが短いので、もっと風が入ってくるかと思ったが、想像以上に風の巻き込みはない。リヤにあるウインドリフレクターを出して、100km/hくらいまで速度を上げても風の巻き込みの心配はいらない。耳元では、ゴーっという風の音が聞こえるのに、ソヨソヨと微風が頭の上を撫でていく程度だ。これなら、同乗者の女性の髪形をさほど気にすることはないだろう。
ソフトトップの開閉も早い。オープンで9.5秒、クローズで11秒。センターコンソールにあるスイッチひとつで開閉ができる。30km/h以下なら、走行中も開閉がOKというのも便利な機能。例えば、ズルズルと低速で動いているような首都高速で突然の雨。停車して他のクルマの迷惑になることもなくルーフを閉めることができる。
驚きだったのは、オープンボディになったのにゴルフはゴルフだった。補強されたボディと重くなった車重のおかげ? なのか、しっとりとした重厚感のある乗り味になっていた。普通のゴルフより、高級感があった。ルーフを閉めると、静粛性も高く、カブリオレであることを忘れてしまうほどだ。アウディA5カブリオレに試乗した時も、ソフトトップの静かさに驚かされたが、価格が約半分のゴルフカブリオレも同等のレベルにある。
シート生地も気が効いていて、炎天下でも表面の温度上昇を抑えるクールレザーを採用。オープンボディやレザーシートならではの悩みも解決。シートカラーも4色あり、ボディカラーとの組み合わせで選ぶことができる。
機能面では、ほとんどケチを付けたくなる部分がないくらいの完成度を誇る新型VWゴルフカブリオレ。しかし、VWは真面目過ぎる感じもある。シートカラーが4色になって選べるのは進歩だが、できればソフトトップのカラーも選べたり、インパネのパネルの素材を変え選べる工夫があるとうれしい。こういう、遊びクルマ的要素が多いクルマには、自分だけの仕様にできるオリジナリティが欲しい。
ちなみに、オープンボディになって重くなったとはいえ、0〜100km/h加速は8.4秒と俊足で10・15モード燃費は15.4km/Lと低燃費。エコカー減税の対象車でもある。4人乗り、荷物も乗る、低燃費、走りも楽しめる、小回りもきく、まさに、なんでもありの超合理的パッケージのVWゴルフカブリオレ。少々、地味目のスタイリングに納得がいけば、なんの問題も感じさせたない1台になるだろう。
代表グレード | VWゴルフ カブリオレ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4260×1780 ×1430mm |
車両重量[kg] | 1470kg |
総排気量[cc] | 1389cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 160ps(118kw)/5800rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 24.5kg-m(240N・m)/1500-4500rpm |
ミッション | 7速DSG |
10・15モード燃費[km/l] | 15.4km/l |
定員[人] | 4人 |
税込価格[万円] | 399.9万円 |
発売日 | 2011/10/1 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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