価格重視のインド生産モデルが新型WR-V
新型ホンダWR-Vを見た第一印象は「ずいぶん、割り切ったなぁ」だった。
新型WR-Vはインドマーケットをメインとした、インド生産モデル。つまり、インド人向けに最適化されたSUVだ。こうしたインド生産モデルを日本へ導入するメリットは、国内での価格競争力を得ることだ。
新型WR-Vの新車価格帯は2,098,800~2,489,300円。同じくホンダのヴェゼル(マイナーチェンジ前 FF車)のガソリン車は2,399,100円だった。単純比較はできないが、WR-Vは最上級グレードを除けば、ヴェゼルよりも安価であることが分かる。
WR-Vは、ボディサイズが絶妙だ。Bセグメントながら、全長は4,325mm。BセグメントとCセグメントの中間サイズである。そのため、全長4,180mmのヤリスクロスと比べると、より立派に見える。さらに価格も安いとなれば、購入意欲はより強まるだろう。
初期の販売は好調のWR-V
ヴェゼルはハイブリッドのシェア比率が9割超だ。安価とはいえ、純ガソリン車のWR-Vが必要なのか? と、少々疑問に思ってしまう。しかもホンダは、2040年にグローバルでのEV/FCEVの販売比率を100%とする目標を掲げている。そんな目標に逆行するような純ガソリン車のSUVを、何故インドから輸入したのだろうか?疑問は深まる。
WR-Vを日本に導入した理由は、ホンダ独自のマーケティングによるものが大きい。ホンダは、過去にも隙間を上手く狙い、小さなマーケットを拡大してきた経緯がある。
日本マーケットでは、200万円前半から半ばくらいの価格で買えるSUVが欲しいというニーズあったという。しかし、そのマーケットでは、トヨタ ライズなどのAセグメントのSUVがライバルになり、ホンダの営業力ではトヨタに敵わない。AセグメントSUVの価格で、それ以上の価値の提案が必要だ。そこで白羽の矢が立ったのが、インドで販売予定だったWR-Vだった。
新型WR-Vは、2024年3月に日本へ導入された。ホンダの目論見通り、WR-Vはヒットモデルとなる。販売開始から約1カ月後の時点で、WR-Vの総受注は約13,000台だ。販売計画は3,000台/月なので、販売計画の4倍以上を1カ月で売ったことになる。初期受注が販売計画の数倍となるケースは、新型車であればよくある話。
2024年上半期の登録車販売台数は10,582台で30位となった。3月末の発売だったので、実質3カ月でこの販売台数は販売計画以上であり、WR-Vの販売が好調ということがよく分かる。ホンダの狙い通りといえるだろう。
装備を割り切ったWR-V
新型WR-Vは、安価が正義ということを証明した。ただ、安価なのには訳がある。搭載エンジンは1.5Lのみ。カーボンニュートラル時代なのにアイドリングストップ機能さえ装備されていない。
軽自動車のN-BOXでも電子制御パーキングブレーキを装備している時代に逆行し、手引きのサイドブレーキ仕様だ。
電子制御パーキングブレーキが装備されていないので、アダプティブクルーズコントロール(ACC)使用時は、車速が25km/h未満になったときには自動解除される。渋滞追従機能(停止、停止維持、再発進など)は装備されていない。
安価な分、かなり割り切った仕様となっている。
SUVトレンドを取り入れた外観デザイン
WR-Vの装備類は、かなり割り切った印象が強い。だが、外観デザインは、なかなか秀逸だ。売れるSUVのデザイントレンドを上手く取り入れている。
特徴的なのが、フロントフェイスだ。大きな顔と大きなグリルを組み合わせ、フェイス上部サイドに睨みの効いた細めのヘッドライトを配置した。人気SUVデザインによくあるパターンのデザイン手法である。小さなボディサイズながら、重厚感と迫力のあるフェイスに仕上がった。
サイドボディは、筋肉質なデザインに、樹脂製ブラックのフェンダーアーチモールが加え、タフネスさを強調している。
リヤまわりは、水平基調のコンビネーションランプでワイド感をアピールした。ドッシリとした安定感のあるシルエットを持つ。さらに、最低地上高は195mmと十分なレベルだ。最近流行りのオフローダー系タフネスデザインの王道である。全高も1,650mmとヴェゼルより70mmも高いので、意外なほど立派に見え、クラスレスな印象が強い。
内装の質感は良好。荷室容量も大きいWR-V
インパネデザインは、水平基調のシンプルなデザインだ。広さをアピールしながら、スイッチ類をセンターコンソール上部に集中配置し使いやすくしている。
メーターは、7インチTFT液晶メーターとアナログスピードメーターを組み合わせた。7インチTFT液晶メーターには、走行モードなどの基本情報に加え、ホンダセンシングなどの情報が表示される。ステアリングにはパドルシフトを装備し、走る楽しさをアシストする。
快適装備面では、インド生産車らしくエアコンの風を後席へ届けるリアベンチレーションが全車標準装備されている。ただし、逆に冬が寒い日本マーケットで装備して欲しいシートヒーターの設定は無い。
驚いたのは、インテリアの質感だ。新車価格が安いので、かなりチープなイメージを抱いていた。試乗してからは、このクラスでの平均点より少し上といった印象に変わった。この新車価格で、この質感なら十分納得できるレベルだろう。
WR-Vは、使い勝手も良好だ。ボディサイズがやや大きいため、後席も広め。また、WR-Vの荷室容量は、クラストップレベルの458Lを誇る。ヴェゼルが404Lなので、実用性は高い。リヤゲートもワイドに大きく開くので使い勝手もよい。最小回転半径は5.2mなので、狭い駐車場ではヴェゼルよりも扱いやすい。
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燃費面は少々物足りない
新型WR-Vに搭載されたエンジンは直4DOHC 1.5Lのみで、最高出力118㎰、最大トルク142Nmだ。駆動方式は全車前輪駆動(FF)で、4WDの設定はない。
このエンジン、いわゆる実用タイプ。高回転まで気持ちよく回るとか、感応的なサウンドとは無縁。だが、ホンダ車らしくキビキビと元気よく走る。エンジンの回転数が4,000rpm前後を超え、速度が上がってくるとロードノイズなども加わり、車内はなかなか賑やかになる。市街地走行では、エンジンの回転が高くならないので、静粛性は十分なレベルといえる。
惜しむべくは、このエンジンにアイドリングストップ機能が装備されていないこと。そのため、WR-VのWLTCモード燃費は16.2~16.4km/Lと物足りない数値となった。同じくアイドリングストップ機能が無いヤリスクロスの燃費は、18.3~19.8km/L。ヤリスクロスの方が、ボディサイズが小さく少し車重が軽いとはいえ、燃費差が付いた。
乗り心地は硬め。パドル付きCVTは使い勝手が良い
新型WR-Vの乗り心地はやや硬めだ。大きな凹凸が続く路面だと、リヤサスペンションを中心に、ややゴトゴトした動きになる。それでも、ボディに妙な振動が入ってくるようなことは無かった。逆に、路面が荒れていないシーンでは、なかなか快適だった。速度が少し上がると、しなやかさを増していくタイプだ。
ハンドリングは、ホンダ車らしい適度なスポーティさで、キビキビ曲がる。少し硬めのサスペンションセッティングで、カーブでは車体の傾きも適度に抑えられていて安心感がある。
ミッションはリニアな加速感が得られる「G-Design Shift」を搭載したCVTが搭載されている。7段変速が可能で、しかもパドルシフトが全車標準装備されている。よりスポーティな走りが楽しめるだけでなく、街中ではパドルシフトを使い、エンジンブレーキを積極的に使って減速するなど、実用面でも使い勝手が良い。
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WR-Vのグレード構成は3つ。中間グレードのZが人気
新型ホンダWR-Vに搭載されているエンジンは、1.5Lガソリンのみ。グレードはエントリーの「X」、中間の「Z」、最上級の「Z+」の3グレード構成になる。
ZとZ+の装備には大きな差が無いので、実質XとZの2グレードから選ぶことになる。ちなみに、Z+は、Zに加えZ+専用エクステリア(ベルリナブラック・フロントグリル、シルバー・ドアモールディング、シャープシルバー塗装ドアロアーガーニッシュ)などが装備されている。
主に加飾の違い程度なので、シンプル仕様で割り切ったWR-VであればZで十分だ。Zの新車価格はZ+より約14万円も安価だ。一般的に新型車のデビュー直後は、最上級グレードが最も高い人気を得るが、WR-Vの場合は中間グレードのZが最も売れている。
では、XとZ、どちらを選ぶかだ。このグレード間の装備差は、とにかく大きい。下記の装備はXには装備されておらず、Zには標準装備されているものだ。
- コンビシート(プライムスムース×ファブリック)
- 本革巻ステアリングホイール+本革巻セレクトレバー
- ソフトパッド
- パーセルカバー
- LEDフォグ
- 17インチホイール
上記の装備差で、新車価格の差は約25万円となる。徹底的にシンプルで、価格重視であれば、Xが良いだろう。満足感のある装備を欲するのであれば、やはりZが無難だろう。
発売から1カ月後の人気グレードとボディカラーは以下の通り(構成比)。
■グレード
- Xグレード 15%
- Zグレード 55%
- Z+グレード 30%
■人気ボディカラーベスト3(構成比)
- 1位プラチナホワイト・パール 35%
- 2位クリスタルブラック・パール 28%
- 3位メテオロイドグレー・メタリック 18%
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リセールバリューを考慮すると、カラー選びは気にしたい
リセールバリューを考慮するならば、注意したいのがボディカラー選びだ。WR-VのCMやカタログなどの訴求色は赤系。しかし、初期受注の人気カラーベスト3には入っていない。つまり、赤系は人気ボディカラーではないのだ。恐らく、中古車マーケットのボディカラー人気も新車と同じとなる可能性が高い。こうなると、赤系のボディカラーを選ぶと、売却時にリセールバリューが下がると予想できる。
つまり、リセールバリューを重視するのであれば、黒系もしくは白系が無難ということになる。
また、購入後に後悔・失敗したと思わないためには、WR-Vの割り切り装備をしっかりと理解しておきたい。シンプル装備で十分、購入価格を抑えながら、見栄えのよいSUVに乗りたい、というのであれば大満足で買って正解になる。
逆に、高速道路は頻繁に使うので全車速クルーズコントロールは必須。低燃費性能も重要。電子制御パーキングブレーキによるオートホールド機能も欲しい、という人だと、むしろ買って後悔・失敗する選択になる。WR-Vの購入では、こうした装備の優先度をしっかり見極めることが最重要だ。
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ホンダWR-V新車価格
WR-V X | 2,098,800円 |
WR-V Z | 2,349,600円 |
WR-V Z+ | 2,489,300円 |
ホンダWR-V燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード | WR-V Z+ FF |
全長×全幅×全高 | 4,325mm×1,790mm×1,650mm |
ホイールベース | 2,650mm |
トレッド(前/後) | 1,540mm/1,540mm |
最低地上高 | 195mm |
車両重量 | 1,230kg |
エンジン型式 | L15D型 |
エンジンタイプ | 直列4気筒DOHC |
総排気量 | 1,496cc |
エンジン最高出力 | 87kW(118ps)/6,600rpm |
エンジン最大トルク | 142N・m(14.5kgm)/4,300rpm |
燃費(WLTCモード) | 16.2km/L |
サスペンション | 前:マクファーソン式 後:車軸式 |
タイヤ 前後 | 215/55R17 |
最小回転半径 | 5.2 m |
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