歴代リーフのノウハウを得て大幅に進化した3代目リーフ
量産BEV(バッテリ電気自動車)のなかでもっとも長い歴史を誇り、BEVの世界を牽引してきたのが日産のリーフである。
センセーショナルなデビューを飾ったのは2010年だ。その第2世代は2017年秋に登場した。初代と2代目リーフを通して日産はBEVに関する膨大なデータを収集し、この知見を3代目リーフ(ZE2系)の開発に活かしている。
3代目リーフ(ZE2系)は、プラットフォームから電動パワートレインまで全面刷新した。2025年6月のグローバル発表会を開催し、その直後にプロトタイプに試乗する機会も得た。そして2026年春、待望の量産モデルがデリバリーを開始している。
不安を完全払拭した最長702㎞の航続距離!
3代目リーフ(ZE2系)は、5ドアハッチバックからクーペSUVへと生まれ変わった。エクステリアは、アリアから採用した「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」の流れを汲む躍動感あふれるデザインだ。日産車初のLEDホログラフィックを採用したリアコンビネーションランプも目を引く。
プラットフォームは、アリアのCMF-EVプラットフォームをベースに開発された。電動パワートレインは、モーター、インバーター、リダクションギアを一体化した「3-in-1」構造だ。
先代と同じようにFWDだけの設定で、バリエーションは大きく分けると2つである。駆動用バッテリーの容量が55kWhの「B5」と78kWhの「B7」が用意された。タイヤサイズは、Gグレード系が235/45R19 、SとX系グレードが215/55R18となる。
新型リーフの一充電走行距離(航続距離)は、グレードによって異なる。B5 SグレードはWLTCモードで521km、B7 Xグレードは702kmだ。ちなみにもっとも一充電走行距離(航続距離)が短いB5 XグレードとGグレードでも469kmを達成している。
一充電距離距離を延ばすことができた理由は、急速充電の高効率化を図ったからだ。エネルギー密度の高いAESC製の新型バッテリーを搭載し、B7は受電性能を150kWの急速充電まで対応可能としている。
水冷式温度調整システム導入! 課題のバッテリー冷却問題も解消
ナビのルート設定とリンクしてバッテリーのコンディションを適切に管理して充電効率を高めるナビリンク・バッテリーコンディショニング機能を搭載したことに加え、水冷式バッテリー温度調節システムの緻密な制御によって温度管理を徹底したことも見逃せない。
新型リーフB7は、150kW対応の急速充電器を使えば、バッテリー残量10%から80%まで約35分で充電することが可能だ。短時間で長い航続距離を確保できるように改善され、安心感を増した。
回生ブレーキのコントロールパドル装備で、より便利で乗りやすくなった
新型リーフ初の公道走行でステアリングを握ったのは、大容量バッテリーを積む高性能仕様の「B7」だ。FWDだからシングルモーターになるが、最高出力は160kW(218ps)、最大トルクは/355Nm(36.2kg-m)と、満足できるパワースペックを手に入れている。
先代のリーフe+より車重が200kg以上増えているから、グッとのけぞるような鋭い瞬発力は影を潜めた。だが、モーターならではのリニアな出力特性と緻密な制御によって気持ちよくパワーとトルクが盛り上がっていく。唐突感のないジェントルなパワーフィーリングが好ましい。滑らかに加速し、混んだ街中の走りでも速度をコントロールしやすいから、BEVに初めて乗る人も戸惑わないだろう。
先代リーフで好評だったワンペダル制御の「eペダルステップ」も受け継がれている。アクセルを緩めるだけで、最適な減速コントロールが可能だ。しかも、Gグレードには、新たに回生ブレーキコントロールパドルも装備している。
これは、ガソリン車のステアリング変速パドルのようなもので、回生の強弱は4段階の調整が可能。急な下り坂や高速道路で加減速したいときには、とくに重宝した。
ハンズオフできるだけじゃない! 洗練さが増した先進運転支援システムの「プロパイロット2.0」
その高精度さと高い実力に舌を巻いたのは、大きな進化を遂げた先進運転支援システムの「プロパイロット2.0」だ。中間グレードのXだけでなく、最上級Gグレードにもオプション設定なのは残念だが、オプション装着するだけの価値はある。
新型リーフは、ステアリングの左側に新しいレイアウトのスイッチがあり、操作性が大きく向上した。高速道路でハンズオフドライブを可能にしているが、渋滞した道路でもかなり賢い安全な走りを披露する。
そして、高速走行では驚くほど上手な追従クルーズと正確なレーンキープを見せつけた。運転支援システムと相性のよいBEVの面目躍如たるところだ。
3代目リーフは、プロパイロット2.0の採用を基本にセッティングされているのだろう。プロパイロットを作動させると、ハンズオフにしてもビシッと直進を保つ。
レーンキープと前走車を追っての追従クルーズはベテランドライバーのように上手だ。ロングドライブでは疲労を大幅に軽減でき、市街地での走りでも高い信頼性を披露してくれた。気になったのは、100km/hを超えたあたりから風切り音が出ることだ。
「乗り心地重視」の日本専用チューニングサスペンション
新型リーフでは、アリアと同じCMF-EVプラットフォームに加え、サスペンションも一新した。フロントは、形式こそストラットだが、新設計だし、リアはマルチリンクを採用する。
シャシーからサスペンション、ステアリングまで剛性アップを図り、ボディのねじり剛性は86%、リアサスペンションの横剛性は66%もアップした。電動パワーステアリングも剛性感たっぷりの気持ちいい操舵フィールだ。
サスペンションは、乗り心地にうるさい日本のユーザーに向けて専用チューニングを施している。一般道では、スポーティかつ軽快な味わいが強い印象を受けた。切り初めから操舵レスポンスは鋭く、ロールも上手に抑え込んでいる。狙ったラインを正確にトレースし、乗り心地との妥協点も高かった。
ただし、スピードを上げてのコーナリングでは、ボディの上屋の乱れが意外に大きいと感じる場面がある。前にテストコースで試乗したプロトタイプと比べると、ロールの発生が早いし、挙動も大きいように感じられた。
新型リーフの乗り心地は基本的にいいが、荒れた路面や段差を駆け抜けると揺れの収まりが気になる。高速直進安定性は合格点だ。
海外勢とも十分に勝負できる高い完成度
BEVならではの機能装備も充実している。ACコンセントを新設し、リーフのキャビン周辺で家電を使うことが可能になった。普通充電ポートにコネクターを挿すだけで給電できるようになり、住宅電力供給のV2H機能に加え、再生可能エネルギーに利用するV2Gにも対応可能とした。
先代から大きく進化した3代目リーフは、トータルで見ても同クラスの海外勢に負けていない。廉価版の「B5」を選んでも満足度は高いはずだ。
<レポート:片岡英明>
日産リーフ(ZE2系)新車価格
・B5 S 4,389,000円
・B5 X 4,738,800円
・B5 G 5,648,500円
・B7 X 5,188,700円
・B7 G 5,999,400円
新型日産リーフ(ZE2系) B7航続距離、電費など主要諸元
代表車種 リーフB7 G
全長×全幅×全高 4,360×1,810×1,550mm
ホイールベース 2,690mm
最低地上高 135mm
車両重量 1,920㎏
乗車定員 5名
荷室容量 420L
モーター型式 YM52
モーター最高出力 160kW(218ps)
モーター最大トルク 355N・m(36.2kgf・m)
一充電走行距離(WLTCモード) 685km
バッテリー種類 リチウムイオン
バッテリー総電力量 78.0kWh
電費(一充電走行距離÷バッテリー総電力量) 約8.8㎞/kWh
駆動方式 前輪駆動(FF)
サスペンション型式 前:ストラット 後:マルチリンク
タイヤサイズ 前後 235/45R19
最小回転半径 5.3m
ライター紹介
モータージャーナリスト
片岡英明
1954年、茨城県生まれ。自動車専門誌で編集に携わった後、独立してモータージャーナリストに。新車だけでなく、クラシックカーやEVなどにも精通している。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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