スズキ eビターラ(e VITARA)試乗記・評価 BセグメントSUV+4WDのユニークな組み合わせで勝負!

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【スズキ】2026/05/09

スズキ eビターラ フロントスタイル

 

車名は従来モデルのビターラだが、BEV専用プラットフォームを使用する本格派

 

スズキが初めて送り出したBEV(バッテリー電気自動車)が「eビターラ」だ。スズキのBEV世界戦略車だが、トヨタとの共同開発車でもある。プラットフォームやモーターなどのメカニズムには共通するところが多い。

初めて対面したのは、正式発表前の2025年夏だった。最終プロトタイプにサーキットで試乗したが、強烈な印象を残している。そして年が明けた2026年1月16日、ついに発売にされた。

母体となったビターラは、日本でエスクードを名乗っているBセグメントのクロスオーバーSUVである。そのBEV版がeビターラといえるが、プラットフォームやパワートレインだけでなくフォルムも専用デザインだ。

注目のプラットフォームは、BEVのために設計された「ハーテクトe」を採用した。サスペンションもストラットとマルチリンクの4輪独立懸架となっている。

スズキ eビターラ リヤスタイル

 

 

BセグメントSUV+AWDの組み合わせは、世界的にも稀

 

注目したいのは、2WD(FWD)だけでなくフルタイムAWD(4輪駆動)を設定していることだ。BセグメントのコンパクトなBEVは少数だが、それ以上に少ないのがAWDモデルである。

AWDは、ヒルディセントコントロールやトレイルモードを装備するなど、オフロードや雪道走行も苦にしない。2WDは駆動用バッテリーの容量が49kWhの「X」」と61kWhの「Z」、AWDはバッテリー容量が61kWhの「Z」だけの設定とした。ちなみに駆動用バッテリーは中国のBYD系列のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーだ。

高出力バッテリーを搭載するZの2WDモデルは、128kW(174ps)/193Nm(19.7kg-m)と、必要にして十分なモーター出力を発生する。そのパフォーマンスは、2.0Lクラスのガソリンエンジンを超えるほどだ。

ノーマルモードを多用することが多かったが、エコモードでも街中の走りなら速い流れに無理なく乗れる力強さを秘めている。スポーツモードで俊敏な加速を楽しもうとすると発進時にアクセルの踏み込み量を多めにする必要があるが、冴えた加速を披露した。

スズキ eビターラ フロントアップ

スズキ eビターラ リヤアップ

 

ガソリン車からの乗り換えでは違和感なし!

 

eビターラは、ガソリン車から乗り換えても違和感のない加速感も魅力のひとつだ。唐突な感じにならないように、湧き出すようなパワーとトルクは意識的に抑えた。

だから、自然体で渋滞した道路から山岳路、高速道路までこなすことができる。AWDは2WDと同出力のフロントモーターに加え、リアに48kW/114Nm(65ps/10.7kg-m)を発生するモーターを追加した。システム出力は184ps/31.3kg-mだ。

車両重量は100kg重くなっているが、2.0Lクラスのターボ搭載車を超える力強い加速を見せつけた。モーターの特性でパワーとトルクが低回転から盛り上がるから、間髪を容れず痛快な加速を引き出せる。

スポーツモードをチョイスすれば、豪快にスピードを上げていく。しかもモーターは回転を上げて行ってもノイズが高まらないから快適だ。

スズキ eビターラ メーター

 

 

回生ブレーキの強弱をコントロールするパドルシフトが欲しい!

 

eビターラは、高速クルージングでも静粛性は高い。ワンペダル制御の「イージードライブペダル」は回生ブレーキの強弱を3段階に調整でき、違和感なく使うことができた。

だが、完全停止までは持っていけないし、「強」でも効きはマイルドだと感じる。走行中に回生モードを変えられないのも残念だ。回生ブレーキの強弱をパドルシフトでコントロールしたいところだ。

また、高速道路ではヨーロッパ車のようにコースティングさせたいし、山岳路などのステージではパドルシフトも欲しいと切に思った。

スズキ eビターラ シフトノブ

スズキ eビターラ モータールーム

 

 

引き締まったスポーティな乗り心地

 

サスペンションは、フロントがストラット、リアはマルチリンクとしている。乗り味は、欧州テイストだ。専用開発されたプラットフォーム、ハーテクトeと相まって剛性感たっぷりの骨太の走りを披露した。電動パワーステアリングの操舵フィールは敏感すぎることもなく扱いやすいセッティングだ。

荒れた路面でも突き上げを上手に抑え、安心感がある。高速走行時の安定性も合格レベルだ。硬めのシートを採用することもあり、乗り心地は引き締まった印象を受けた。だが、スピードを上げていくとしなやかな動きに変わり、気にならなくなる。

eビターラのリアモーターは注意深くチェックするとリアからの押し出しを感じた。通常の走りでは、前後50:50の駆動力配分にあり、滑りやすい路面や減速するシーンでは、フロント側の駆動力を高める味付けだ。

こうしたどっしりとした味わいのAWDに対し、2WDは軽快感を強く打ち出している。今回は使う機会がなかったが、AWDは滑りやすい路面での脱出性能を高めるトレイルモードを、2WDはスノーモードを装備した。

スズキ eビターラ フロントシート

スズキ eビターラ リヤシート

スズキ eビターラ 荷室

 

eビターラは、完成度が高く多くの人にお勧めできるBEV!

 

eビターラは、BEVビギナーからBEV買い替え派まで、多くの人に勧められるトータル性能の高いクロスオーバーSUVだ。

BセグメントのコンパクトSUVだが、キャビンは十分な広さを確保し、ラゲッジルームも機能が充実している。

フロントシートは大振りで、大柄な人でも座りやすい。だが、シートの硬さを意識させられた。リアシートもしっかりとした造りで、スライド機構と3分割可倒機構を装備する。思いのほか膝もとに余裕があり、畳めばフラットなラゲッジルームが出現した。

気になる一充電走行距離は、ボトムグレードのXがWLTCモードで433km、ZのAWDは472kmを確保している。もっとも航続距離が長いのはZの2WDで、520kmだ。

実電費を7掛けで計算しても、不満のない航続距離だろう。ボトムのXでもインテグレーテッドディスプレイやメモリーナビ、ステアリング&シートヒーターなどが標準。販売価格と走りの実力を考えると満足度は高い。Zになると運転席パワーシートやプレミアムサウンドシステム、ガラスルーフなどの快適装備が加わる。

eビターラはインド製だが、見栄えも質感も日本製のSUVに負けていない。外観もスタイリッシュだ。B、CセグメントSUVのライバルにとっては、手強いBEVになるだろう。

<レポート:片岡英明

 

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スズキ eビターラ新車価格

・X  前輪駆動  49kWh 3,993,000円

・Z  前輪駆動  61kWh 4,488,000円

・Z  4WD  61kWh  4,928,000円

 

スズキ eビターラ航続距離、電費、ボディサイズなどスペック

代表車種  eビターラ Z 4WD

全長×全幅×全高  4,275×1,800×1,640mm

ホイールベース  2,700mm

最低地上高  185mm

車両重量   1,890㎏

荷室容量  238~306L

乗車定員  5名

最小回転半径  5.2m

モーター型式  フロント:1CG、リヤ:2CG 

システム最高出力  135kW(184ps)

モーター最高出力  F:128kW R:48kW

モーター最大トルク  F:193Nm R:114Nm

一充電走行距離(WLTCモード) 472km

バッテリー総電力量  61kWh

電費(一充電走行距離÷バッテリー総電力量)  約7.7㎞/kWh

バッテリー種類  リチウムイオン

駆動方式  4WD

サスペンション型式  F:ストラット R:マルチリンク

タイヤサイズ  225/55R18

 

ライター紹介

モータージャーナリスト

片岡英明

1954年、茨城県生まれ。自動車専門誌で編集に携わった後、独立してモータージャーナリストに。新車だけでなく、クラシックカーやEVなどにも精通している。AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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