アリアの本命!? NISMOがついにデビュー
リーフに続くバッテリーEVとして日産が送り出したのがアリアだ。だが、正式発表直後に新型コロナウイルスや半導体不足を理由に新規の受注をストップ。これに工場のトラブルが重なったこともあり、生産計画は大幅な修正を強いられた。期待の「アリアe-4ORCE」も販売が延び延びになってしまった。
しかし、3月下旬から全グレードの注文受け付けを再開し、6月にはスポーツモデルのアリアNISMO発売を開始する。
アリアNISMOは、電動4WDの「e-4ORCE」をベースに、エアロパーツや専用サスペンション、専用タイヤ&アルミホイールなどを装着し、ハンドリング性能に磨きをかけたスポーツグレードだ。
走行モードは、スポーツから「NISMO」モードに変更。モーターのシステム出力もアップしている。アリアNISMOのバリエーションは2つだ。バッテリー容量66kWhのB6とバッテリー容量を91kWhに増やしたB9があり、その価格差は約100万円となっている。残念なニュースは、アリアNISMOの投入を機に、他のアリアも120万円の値上げを行ったことだ。
最大トルク600Nm! 大幅パワーアップされたアリアNISMO
日産のテストコースであるグランドライブでステアリングを握ったのは、アリアNISMOのB9 e-4ORCEである。エクステリアは、専用のエアロパーツを装着し、空気抵抗を5%低減しながらダウンフォースを40%も増大させ、安定感を大幅に高めた。
エアロパーツは、NISMOのロゴマークが誇らしげなフロントバンパーを筆頭に、ドアとサイドモールフィニッシャー、リアではディフューザーや2段のリアスポイラーなどで、赤の挿し色もノートなどより大人っぽいドレスアップとしている。
Vモーションデザインのフロントマスクは、バンパーの変更によって精悍さと安定感を増した。だが、リアビューのほうが見た目の変化は大きく、ちょっと見ただけでNISMOと分かる。足もとはエンケイブランドの20インチ専用アルミホイール(8.5J)にミシュラン製のパイロットスポーツEV(255/45R20)の組み合わせだ。
アリアNISMOのインテリアは、エクステリアと比べると控えめなアレンジである。スタータースイッチが赤ベースとなり、インパネには赤の挿し色のステッチを加えた。本革巻きステアリングも専用で、12時の位置にレッドのラインが入っている。
フロントシートは、NISMOのロゴが入った専用品だ。スエード調ファブリックが基本で、サイドは合皮とした。レカロ製シートがオプションでも用意されていないのは意外である。ただし、レカロシートでなくても座り心地はよく、身体にフィットするし、サポート性、ホールド性ともに良好だった。
EV専用のプラットフォームに搭載するのは2つのモーターだ。フロントモーター、リアモーターともに最高出力218ps(160kW)/5950〜11960rpmで、最大トルクはそれぞれ300N・m(30.6kg-m)/0〜4392rpmを発生する。最大トルクは変わっていない。だが、モーターのシステム合計出力は、B9のノーマル仕様が290kW(394ps)であるのに対し320kW(435ps)まで引き上げられた。ちなみにB6ベースのNISMOのシステム出力は270kW(367ps)だ。2つのモーターを搭載し、バッテリーも重いことから車両重量は2220kgに達している。
レスポンス抜群の新設定NISMOモード
試乗は、クローズドコースだったこともあり、スポーツモードに代えて採用されたNISMOモードを存分に試してみた。スタンダードモードでもアクセルを踏むと瞬時にパワーとトルクが立ち上がり、力強い加速を見せる。鋭いレスポンスで気持ちよくスピードを乗せ、モーターの滑らかさも際立っていた。ワンペダルドライブのeペダルも慣れると便利だ。
次にNISMOモードで走ってみる。応答レスポンスはさらにシャープになり、パワーとトルクの盛り上がりも力強さを増す。刺激的な加速を披露し、瞬時に速度は100km/hを超えた。
また、減速フィールにも手が入れられているから操る楽しさは格別だ。面白いのは、BOSEプレミアムサウンドシステムに追加されている専用EVサウンドで、アクセルワークとリンクしてフォーミュラEのサウンドを模した高周波の音を奏でる。何種類かあれば、その日の気分によって選べるので、さらに運転が楽しくなるだろう。
本物のプレミアムスポーツEVがアリアNISMO
サスペンションは、ストラットとマルチリンクの組み合わせだが、これも専用にチューニングしている。リアを中心にスプリングレートを高め、フロントサスペンションなども手を入れた。意外だったのは、走り出した瞬間から乗り心地がよかったことである。テストコースだったことを差し引いても、ベースになったB9と同等か、それ以上の快適な乗り心地を実現し、路面のいなし方も上手だ。
高速域では、エアロパーツが効果を発揮しているのが分かるほど、ビシッと真っ直ぐに走ってくれる。コーナリングやスラロームでも狙った通りにクルマが向きを変え、コントロールしやすかった。e-4ORCEの駆動力配分を、意識してリアを強めの設定としている。そのため、したたかな接地感を身につけながら、操っている楽しさが増した。初期のロールを上手に抑え込み、そこから先の挙動の乱れも巧みに封じている。
デュアルピニオン式の電動パワーステアリングも気持ちいい操舵フィールだ。スラロームではノーズの入りがよく、連続するコーナーの出口ではリア駆動のように後方から押し出されている感じが強いなど、一体感のある走りが楽しい。身のこなしは軽やかで、運転が上手くなったと感じられる。しかも、日常の走行域で快適性が高いなど、ファミリーカーとしての実力も非凡だ。後席に人を乗せてのロングドライブも快適だろう。
レカロ製のシートやブレンボ製のブレーキなど、名門ブランドのパーツが用意されていないのは、ちょっと残念な気がする。だが、ブレーキ性能に物足りなさを感じることはなかったし、ハードなコーナリングでもシートのサポート性とホールド性は満足できるものだった。バランス感覚、落としどころは絶妙だ。多くの人が気負わずに痛快な走りを楽しめる上質なプレミアムスポーツEVの筆頭であることは間違いない。
運転を楽しむ走りの質感が高いし、快適装備と安全装備も充実している。1000万円に迫るプライスタグにドキッとさせられたが、輸入車と比べてもトータル性能は高いなど、かなり魅力的なスポーツEVだと感じられた。
<レポート:片岡英明>
日産アリア NISMO価格
・アリアNISMO B6 e-4ORCE(66kWh) 8,429,300円
・アリアNISMO B9 e-4ORCE(91kWh ) 9,441,300円
日産アリアB6 VS マツダMX-30 EV MODEL徹底比較評価
日産アリアNISMOの電費、航続距離、ボディサイズなどスペック
代表グレード:アリアNISMO B9 e-4ORCE(91kWh )プロパイロット2.0
全長×全幅×全高 (mm) 4650×1850×1660
ホイールベース (mm) 2775
最低地上高(mm) 165
乗車定員 (名) 5
車両重量 (kg) 2220
タイヤサイズ 255/45R20
最小回転半径 (m) 5.4
サスペンション (フロント/リヤ) ストラット式/マルチリンク式
駆動方式 4WD(e-4ORCE)
モーター型式前後 AM67
フロントモーター最高出力 (kW<PS>/rpm) 160〈218〉/5950-11960
フロントモーター最大トルク (N・m<kgf・m>/rpm) 300〈30.6〉/0-4392
リヤモーター最高出力 (kW<PS>/rpm) 160〈218〉/5950-10320
リヤモーター最大トルク (N・m<kgf・m>/rpm) 300〈30.6〉/0-4392
駆動用バッテリー種類 リチウムイオン電池
総電力量(kWh) 91.0
WLTCモード 航続距離(km) -
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