トヨタ クラウンエステート試乗記・評価 SUV界隈のグランドツアラー!

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【トヨタ】2025/05/15

トヨタ クラウンエステート Zグレード

 

 

18年ぶりに復活したクラウンのワゴンが「クラウンエステート」

 

海外市場も見据えて開発され、送り出されたのが16代目クラウンだ。まず「クロスオーバー」が先陣を切って登場し、これにフォーマルな味わいを強めた「セダン」が続いた。そして、第3弾がホイールベースを詰めて運動性能を高めた「スポーツ」である。新世代のクラウンは、パワートレインだけでなく駆動方式もホイールベースも違う仲間を積極的に増やし、新しいファン層を獲得することに成功した。

予告されていたように、最後の大物がベールを脱いだ。「大人のアクティブキャビン」を掲げて登場したのがマルチに使える「エステート」だ。クラウンのステーションワゴンは、11代目を最後にカタログから消えていた。だが、ファンが多かったし、便利だから18年ぶりに復活させたのである。

トヨタ クラウンエステート Zグレード
2.5Lハイブリッド

トヨタ クラウンエステート RSグレード PHEV
2.5L PHEV

トヨタ クラウンエステート RSグレード PHEV

 

 

SUVをベースにワゴンテイストを加えたクラウンエステートのデザインを評価する

 

ただし、ただのワゴンではない。最新作はSUVとワゴンのクロスオーバーだ。ポイントは、SUVをベースとしたクロスオーバーモデルであるということ。そのたため、パッと見た目はSUV色がかなり強い。逆に、ワゴンをベースにしたSUVとのクロスオーバーが、スバルのレイバックでワゴン色が強いモデルだ。同じSUVとワゴンのクロスオーバーモデルながら、見た目の印象は全く異なっていることが分かる。

クラウンエステートの最低地上高は、クラウンの中で最大の175㎜(RSは165㎜)を確保した。全高も1625㎜と、クラウンの中では最も背が高い。

大きな期待を背負って登場したエステートは、日本に先駆けてアメリカで発売されている。エクステリアは、伸びやかなシルエットだ。ホイールベースは「クロスオーバー」と同じ2850㎜で、「スポーツ」より80㎜長い。

フロントマスクは他のクラウンと同じように切れ長のヘッドライトと薄いスリットグリルの組み合わせだが、バンパーフェイスは専用デザインとした。ハッチゲートを備えたリアは、一文字のリアコンビネーションランプでワイド感をアピールする。タイヤとホイールは21インチだ。

トヨタ クラウンエステート Zグレード

トヨタ クラウンエステート Zグレード

トヨタ クラウンエステート Zグレード

トヨタ クラウンエステート Zグレード

 

 

フルフラットな荷室は車中泊に便利!?

 

16代目クラウンは、全席特等席という考え方で開発を進めた。エステートも同様だが、特等席をラゲッジルームまで広げている。インテリアは、他のクラウンと同様に水平基調のひろがり感を強調したインパネを受け継いだ。存在感の強いセンターコンソールも特徴で、質感もクロスオーバーのデビュー時より高められている。クラウンらしいと感じられるのは、視認性や操作性にも徹底してこだわったことだ。

インテリアカラーは、サドルタンのほか、ブラックと新色のグレイッシュブルーを設定した。フロントシートは大ぶりで、ホールド性だけでなく座り心地もいい。ホイールベースが長いこともあり、リアシートも快適に座れる。頭上の空間、足元スペースともに不満のない広さを確保している。

だが、エステートの最大の自慢は、広大なラゲッジスペースだろう。リアシートは6:4分割可倒式だ。5人が座った状態でも荷室容量は570ℓを確保した。リアシートを前に倒し、隙間を埋める拡張ボードを伸ばすと荷室の奥行きは2mになる。この状態では1470Lの荷室が出現するのだ。9.5インチのゴルフバッグを3セット収納することができる。完全フラットな荷室だから、車中泊もラクだ。長身の人が車中泊しても、寝心地はいいと思われる。

トヨタ クラウンエステート Zグレード

トヨタ クラウンエステート Zグレード

 

 

パワーアップした2.5LハイブリッドとPHEVを設定したクラウンエステート

 

クラウンエステートの気になるパワーユニットは、クラウンスポーツと同様に2機種を用意した。「Z」グレードは、2.5Lの直列4気筒DOHCエンジンにモーターのハイブリッドで、クロスオーバーよりパワーアップを図っている。

「RS」グレードは、同じエンジンのPHEV(プラグインハイブリッド)だ。どちらもリアをモーターで駆動する4WDのE-Fourで、トランスミッションは電気式無段変速機を組み合わせた。
ハイブリッド車の「Z」もPHEVの「RS」も、クラウンシリーズやハリアーなどと基本的なメカニズムは同じシリーズパラレル方式のトヨタハイブリッドシステムIIである。

心臓は2487ccのA25A-FXS型直列4気筒(直噴+ポート燃料噴射)DOHCエンジンで、これに2つのモーターを追加してドライバビリティと燃費を大きく向上させた。

ただし、エステートは車両重量が1890kgに増えているため、クロスオーバーとスポーツよりエンジンの出力とトルクを高めている。「Z」の最高出力は140kW(190ps)/6000rpmと、4ps引き上げられた。最大トルクも236N・m(24.1kg-m)/4300〜4500rpmと、1.6kg-m増強されている。

モーター(前後とも交流同期発動機)の最高出力と最大トルクはPHEVの「RS」と変わらない。フロントモーターは134kW(182ps)/ 270Nm(27.5kg-m)、リアモーターは40kW(54ps)/121Nm(12.3kg-m)のスペックだ。システム出力はクロスオーバーとスポーツの234psに対し243psを発生する。ハイブリッド燃費は 20.3km(WLTCモード)を達成した。

トヨタ クラウンエステート Zグレード

トヨタ クラウンエステート Zグレード
2.5Lハイブリッド

 

 

優雅さを感じる加速フィールをもつ2.5Lハイブリッド

 

クラウンエステートの2.5Lハイブリッド車は、モーターを優先しての発進だから、滑らかにパワーとトルクが立ち上がる。軽やかで力強いいい加速を披露するが、あくまでもジェントルだ。

アクセルを踏み込むとモーターの後押しによってクルマが前に押し出されるが、クラウンらしい優雅さがある。EV走行できる領域も広いから、静粛性などの快適性も高い。クロスオーバーがデビューしたときに気になった4気筒エンジンの不快なノイズも上手に抑え込んでいる。スポーツモードを選べばレスポンス鋭いキレのいい加速を楽しめた。

トヨタ クラウンエステート Zグレード

 

 

PHEVの高評価かポイントは、パワフルで高い静粛性!

 

PHEVの「RS」はニッケル水素電池に替えて大容量のリチウムイオン電池を搭載している。2.5Lエンジンの最高出力は130kW(177ps)/6000rpm、最大トルクは219Nm(22.3kg-m)/3600rpmだ。モーター出力などはハイブリッド車と変わらない。

気になるWLTCモード燃費は20.0kmだが、システム最高出力は「Z」を大きく上回る225kW(306ps)を誇っている。EV走行での一充電航続距離は89kmだ。

実際に走らせてみると「Z」との差は予想以上に大きかった。EV/ハイブリッドモードで発進すると、蹴り出しの一瞬だけはリアをモーター駆動して4WDになるが、その先は基本的に前輪駆動である。街中や市街地を流れに乗って走るときは、モーターだけの上質なEV走行を披露した。

アクセルを踏み増しすると、すぐにパワーとトルクが立ち上がる。加速はEVのように滑らかだ。快適だし、コーナーでは減速もうまい。エコモードに切り替えても重量ボディを無理なく加速させるなど、必要にして十分な実力を身につけていた。

クラウンエステートは、バッテリー容量が大きいこともあり、モーター動力のアシストによる伸びのある気持ちいい加速を楽しめる。低回転域では、エンジンの再始動が分かる場面もあるが、加速時でも静粛性は高い。

高速走行で耳につくのは、ロードノイズやルーフレール付近からの風切り音だ。スポーツモードを選べばダイレクト感が強まり、パンチの効いた加速を引き出すことができた。

トヨタ クラウンエステート Zグレード

 

ロングドライブにピッタリなハンドリングと乗り心地

 

クラウンエステートのサスペンションは、フロントがストラット、リアはマルチリンクで、タイヤは大径の235/45R21を履いている。後輪操舵のDRSとリアモーター駆動の4WDシステム(E-Four)の採用もあり、軽やかな操舵フィールを見せつけた。

路面追従性がいいだけでなく、直進安定性も素晴らしい。味付けを変えたDRSの効果もあり、違和感なくコーナリングでき、ワインディングロードでは安定したコーナリングを見せた。また、低速での不快な揺れやフリクションも上手に抑え込んでいる。

サスペンションは路面によっては、少し引き締まった印象を受けた。操舵フィールや身のこなしは「スポーツ」ほどクイックではないが、長いホイールベースを意識させない自然な回頭フィールだ。

E-Fourも通常は黒子に徹しているが、アクセルを踏み込むとモーターが巧みにリアにトラクションをかけてくれる。中立時のステアリングの落ち着き、そこから切り出したときや戻したときの滑らかさなど、一連の動きはとても滑らかだ。

ワインディングロードでの減速コントロールと、高速道路での追従クルーズが上手なことにも驚かされた。前走車との距離の保ち方、減速に加え、カーブの大きさによる速度調節も絶妙である。

新世代クラウンの最後に登場した「エステート」は、ちょっと販売価格は高い。だが、ロングドライブ派にとっては頼りになるパートナーになるだろう。まるで、SUV界のグランドツアラー的だ。

<レポート:片岡英明

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トヨタ クラウンエステート新車価格

・Z(2.5Lハイブリッド) 6,350,000円

・RS(2.5L PHEV)  8,100,000円

 

 

トヨタ クラウンエステート燃費、ボディサイズなどスペック

代表グレード:クラウンエステートZ

代表グレード クラウンエステートZ

全長×全幅×全高  4,930mm×1,880mm×1,625mm

ホイールベース  2,850mm

トレッド(前/後)  1,605mm/1,615mm

最低地上高  175mm

車両重量  1,890kg

荷室容量  570L

エンジン型式・タイプ  A25A-FXS型 直4DOHC ハイブリッド

総排気量  2,487cc

システム最高出力   243㎰

燃費(WLTCモード)  20.3㎞/L

駆動用主電池  バイポーラ型ニッケル水素電池

駆動方式   E-Four(電気式4輪駆動)

サスペンション  前:ストラット、後:マルチリンク式

タイヤサイズ   235/45R21

最小回転半径  5.5m

 

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