日産エルグランド(E53系)試乗記・評価 こだわり抜いた乗り心地と走りの良さで再チャレンジ!

はてなブックマークに追加 Googleブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録
【日産】2026/05/24

4代目日産エルグランド(E53系)走り

 

満を持して約16年振りのフルモデルチェンジとなった4代目エルグランド

 

2026年7月頃の発売が予定されている4代目新型日産エルグランド(E53系)のプロトタイプ車に試乗した。4代目新型エルグランド(E53系)は、約16年振りのフルモデルチェンジとなる。

新型エルグランド(E53系)の登場を待ちわびていたエルグランドファンにとっては、まさに望眼欲穿状態だったはずだ。

4代目日産エルグランド(E53系) フロントスタイル

 

 

約16年間フルモデルチェンジできなかった理由は「あのトラウマ」?

 

新型エルグランドが、これほど長い時間フルモデルチェンジしなかった大きな理由は、やはりライバル車であるアルファード&ヴェルファイアにE52型エルグランドが完膚なきまで叩きのめされたことによるトラウマだ。

しかも、エルグランドは、ほぼ国内専用車なので、新型を投入してもハズすとリスクが大き過ぎる。フルモデルチェンジしたはいいが、3代目E52系エルグランドの二の舞はゴメン状態。容易にエルグランドのフルモデルチェンジができなかったのも理解できる。

だが、Lクラスミニバンのパイオニアは初代エルグランドだ。確かに3代目E52系エルグランドは、販売面ではアルファード&ヴェルファイアに惨敗した。

しかし、当時20系だったアルファード&ヴェルファイアは、3代目E52系エルグランドの走りの良さに完敗。そこで、30系アルファード&ヴェルファイアでは、リヤサスをダブルウィッシュボーンに変更し、乗り心地と操縦安定性を大幅に高めたことからも、トヨタがいかに3代目E52系エルグランドを研究していたのかが分かる。

Lクラスミニバンのパイオニアとしての誇りと、走りのよさでは負けていなかっただけに、日産にもプライドがあった。4代目E53系エルグランドが登場するまでの約16年間、打倒アルファード&ヴェルファイアを達成するために、勝機をうかがっていたのかもしれない。

そして、2026年7月頃にデビューを予定している新型4代目E53系エルグランドは、なぜアルファード&ヴェルファイアに惨敗したのかを徹底的に研究。その上で、日産らしさをプラス。ミニバン界の絶対王者、40系アルファード&ヴェルファイアと勝負できるモデルに仕上げてきた。

4代目日産エルグランド(E53系) リヤスタイル

 

 

「大きく見えること」は、最重要課題!?

 

新型エルグランドは、まずボディサイズを大きく変更。ボディサイズを先代E52系エルグランドと、40系アルファードと比較してみた。新型エルグランドのボディサイズは、日産測定値。正式発表後のカタログ値と異なることもあり。

()内はE52型エルグランドとのボディサイズを比較した数値。

【】内はアルファードと比較した数値。

新型エルグランド(E53型)ボディサイズ

全長:4,995mm(+30mm) 【±0】

全幅:1,895mm(+45mm) 【+45mm】

全高:1,975mm(+160mm) 【+40mm】

 

このボディサイズ比較で、すぐに気になるのが、新型エルグランドはすべての項目で先代E52系エルグランドより大きくなっている点。さらに、全長を除くと40系アルファードよりも大きくなっていることが分かる。この数値にも新型エルグランドが40系アルファードをしっかりと研究していることが分かる。

これだけ40系アルファードよりボディサイズが大きくなっている理由は何か? それは「大きく見える」ということ。

4代目日産エルグランド(E53系) フロントアップ

4代目日産エルグランド(E53系) リヤアップ

 

 

 

全高を低くしたのは、大英断だったが失策でもあった先代エルグランド

 

先代E52系エルグランドは、全高を下げることで重心高も下げ、走行性能を重視した。これは、当時、大英断だった。走ることが楽しいミニバンに仕上がった。走行性能を大幅に高めた後発の30系アルファード&ヴェルファイアさえも、カーブでのグラグラ感は先代E52系エルグランドには敵わなかったほどだ。

しかし、この大英断が失策だったのだ。Lクラスミニバンユーザーのニーズは「大きく見え、他のミニバンを見下ろせる着座位置であること」だったからだ。

先代E52系エルグランドは「小さく見える」。少々、大袈裟さだが、これだけで売れなくなったのだ。日産側も小さく見えることで、嫌がる顧客がいるとは予想していたものの「まさかこれほどまで・・・」といった状態。

こうしたこともあり、新型エルグランドは、全高、全幅をアルファード&ヴェルファイアよりもボディサイズを大きくした。しかも、フロアもやや高くして、着座位置も先代E52系エルグランドより、グッと高くなった。見下ろし感もアルファード&ヴェルファイアに負けていない。見た目の大きさ勝負では、新型エルグランドに軍配が上がる。

4代目日産エルグランド(E53系) インパネ

4代目日産エルグランド(E53系) メーター

 

 

脱オラオラ系は、賛否両論!? 和モダンな内外装デザイン

 

そして、新型エルグランドのデザイン。これは、少々賛否が分かれる部分だ。ミニバンデザインでは、アルファード&ヴェルファイアのように迫力あるオラオラ系の人気が高い。しかし、新型エルグランドは、力強さを感じさせながら、オラオラ系とはやや異なる洗練さで勝負に出た。

新型エルグランドのデザインコンセプトは「The private MAGREV」(MAGREV:リニアモーターカー)。非日常の旅に出かける高揚感や期待感あるデザインとした。

最近の日産デザインは、日本らしさをデザインに取り入れている。フロントグリルは、日本の伝統工芸である「組子」をモチーフとした。サイドパネルの大きな面構成と緻密なディテールのコントラストは、日本庭園のように広いスペースの”間”と緻密に仕上げられた細部”整”の考え方を取り入れている。アルファード&ヴェルファイアのオラオラ系デザインに対して、新型エルグランドは和モダンテイストで勝負する。

インテリアは、プライベートラウンジのような空間を目指した。運転席からの景色は、フロアが高められたこともあり、かなり高め。十分に「見下ろす」感ある設定。ただし、乗車時はややよじ登るようになるのは、ちょっと残念なポイント。このあたりは相反する要素だが、「見下ろす」感による優越感を重視した。

インパネデザインは、かなりコッテリ系。エッジの効いた面が複雑に組み合わせられている。ユニークではあるものの、ラウンジのような落ち着いた雰囲気とはちょっと異なる。木目調パネルやシームレスな静電スイッチなどを効果的に使い高級感を出している。

内装関連では、エクステリアの組子パターンのキルティングで統一感を持たせた。ディスプレイは、14.3インチの大画面統合型インターフェースディスプレイを採用。高級感あるインパネにまとめている。

ただ、全体的に質感面はもう1ランクアップさせてほしいと感じた。新型エルグランドの狙いなのかもしれないが、全体的にシックで派手さはない。アルファード&ヴェルファイアは、ギラハデ豪華系なので、このあたりもマーケットでどう判断されるか注目ポイントだ。

4代目日産エルグランド(E53系) フロントシート

4代目日産エルグランド(E53系) 2列目シート

4代目日産エルグランド(E53系) 3列目シート

 

 

 

モータードライブ車らしい瞬発力ある加速感

 

さて、試乗。試乗コースは、横須賀市にある日産追浜工場に隣接する「グランドライブ」。クローズドのコース。試乗車は、新型エルグランドe-4ORCEだ。

まずは、アクセルを軽く踏み込むと、2.5トン近いと推測される重い車体が、グイっと加速していく。日産のモータードライブ車は、ある程度アクセルをモータートルクを瞬時に立ち上げ、力強い加速を披露する傾向がある。それは、新型エルグランドも同じ。瞬時に最大トルクを発揮できるモーターの特徴を生かしているのが特徴。モータードライブ車らしいパワフル感と抜群のアクセルレスポンスが、運転する楽しさを与えてくれている。

他メーカーでは、ガソリン車からの違和感なく乗り換えられるように、あえて緩い制御にしているメーカーも多い。だが、モータードライブ車は魅力は素早い加速と電気による超絶良好なレスポンスにある。あえて、それを緩くする必要はない。それだけに、日産のモータードライブ車に乗ると、これが正解! と、思ってしまうほどだ。

4代目日産エルグランド(E53系)荷室

4代目日産エルグランド(E53系)荷室

 

 

500Nm超!の大トルクを発揮する第3世代のe-POWERを搭載

 

新型エルグランドに搭載されたパワートレインは、国内初投入となる第3世代のe-POWER。発電特化型1.5LのZR15DDTe型エンジンが搭載されている。この発電特化型1.5LのZR15DDTe型エンジンは、1.5Lターボ。専用大型ターボが装着されている。

一般的に、低排気量+大型ターボの組み合わせは、大パワーは出るがアクセルレスポンスが大幅に悪くなる。昔のドッカンターボをみたいなものだ。

しかし、e-POWERのエンジンは発電専用。なので、アクセルレスポンスの悪化は関係ない。燃費のよい回転域で、効率よく高トルクを発揮できればよいからだ。

そんな第3世代のe-POWERを搭載した新型エルグランドのアクセルを床まで踏み込んたが、ライバル車より少し速いかなぁ、くらいだった。豪快! っというほどの瞬発力はないもが、十分は力強さといったところ。

詳細なモータースペックやシステム最高出力などは、現在非公表。ただ、日産によると最大トルクは500Nm以上だという。500Nmほどの大トルクなら、もっと速いんじゃないか? と、思ったのだが、車重が重いことがマイナス要因になっていると考えられる。

4代目日産エルグランド(E53系) 第3世代e-POWER

 

 

乗り心地とクルマ酔いの関係とは?

 

そして、新型エルグランドは、乗り心地にこだわった。乗り心地というより、むしろクルマ酔いしない乗り心地といった方がよいかもしれない。

ミニバンは、多人数乗車が前提となる。2列目や3列目シートに座る乗員は、近年、移動中に長い時間スマホやゲーム機を使うことが多い。画面を凝視しているが、移動中は頭と体が揺さぶられている状態が続く。体や三半規管は、揺れで移動していることを認知。しかし、スマホやゲームをしていると、視覚は画面を凝視しているので、移動しているように感じないことが多い。こうしたことで、脳の中で情報のギャップが生まれクルマ酔いするとも言われている。

そもそもクルマ酔いは、乗り心地だけでなく、スマホなどの画面を凝視することも原因のひとつ。しかし、乗り心地悪い=クルマ酔いする、というイメージが顧客には強いようで、乗り心地が悪いとクルマ酔いするということで、購入リストから外れるというのだ。とくに、小さな子供をもつ親などは、クルマ酔いに敏感だ。

4代目日産エルグランド(E53系) 荷室

 

 

IDSにe-4ORCE、ブレーキバイワイヤなど、乗り心地をよくする技術を大量投入!

 

クルマ酔い防止のためだけでなく、乗り心地がよいことに越したことはない。そこで、新型エルグランドは車体を穏やかに動かすIDS(インテリジェント ダイナミック サスペンション)電子制御ショックアブソーバーを開発。いわゆる、減衰力可変ダンパーだ。

IDSは、クルマの動きや操作を検知し、1/100秒毎に演算。最適な減衰力に変更する。また、パーソナル、スポーツ、スタンダード、コンフォート、エコ、スノーと6つもあるドライブモードにも対応。最適な減衰力としているのだ。

さらに、日産のお家芸ともいえる電動4WDである「e-4ORCE」が加わる。前後の回生ブレーキの強弱をコントロール。停止時のカックンブレーキ感も大幅に低減。色々なシーンで、前後の揺れを滑らかに制御し頭や体が揺さぶられるケースを少なくしてくれる。

乗心地へのこだわりは、ブレーキにも及ぶ。新型エルグランドには、ブレーキバイワイヤ技術も投入された。このブレーキバイワイヤは、直接油圧でブレーキをコントロールするのではなく、ドライバーがブレーキペダルを踏んだ量やスピードなどを演算し電気信号に変換。メカ側が油圧などを緻密にコントロールして減速する機能。

このブレーキバイワイヤを使うことで、ドライバー操作(ブレーキ量)と車両状態(路面勾配,車速など)からスムースに停止する最適な車速を計算し、ブレーキ力を調整する。

とくに、静止に近い低速域でのブレーキ制御は上手く、想像以上にスーッと自然に止まる。前後Gをコントロールして、頭や体を揺さぶられないようにするための技術。さり気ない機能だが「運転上手くなったね」と、思われるくらいだった。

4代目日産エルグランド(E53系) センターモニター

 

絶妙に減衰力を変化させ全速度域で快適さをアップするIDS

 

テストコースを走行中では、IDSの存在を十分に感じることができた。低速域では、タイヤのゴツゴツとした印象はなく、滑らかに走り抜けていく。速度が増してくると、徐々に減衰力が高められ、しっかり感ある走りへ変化。

スタンダードモードでは、それでも乗り心地重視といった印象は変わらない。スポーツモードにすると、最も引き締まった乗り味に変化する。それでも、乗り心地重視系。

個人的には、スポーツモードであれば、もっと引き締まった足にして欲しいと感じるほど。というのも、テストコースの一部には、急激に登り下りしながら、タイトなカーブが右へ左へと連続する。

こうした道で、気持ちよく走ろうとすると、車体の傾きが戻るのがやや遅い印象があった。そのため、ヒラヒラと軽快に走る抜けることが難しい。Lクラスミニバンにヒラヒラ感を求めるのは無理があるのかもしれないが、IDSの減衰力の振り幅をもっと大きくすれば、さらに走っても楽しいミニバンになりそうな気がした。

4代目日産エルグランド(E53系) 静電スイッチ

 

絶対的な安心感と走る楽しさを与えてくれるe-4ORCE

 

もっとヒラヒラ感が欲しいとか言っておいて、少々矛盾するかもしれないが「曲がる」に関しては新型エルグランドは、とても高いレベルにある。操舵レスポンスは、大型ミニバンであることからややダルなのだが、速度を問わず操舵量に対してしっかりとクルマが反応。

後輪モーターのトルクが大きめなのか、カーブの出口でアクセルを踏むと、後輪駆動車のように、後ろからグッと押されるようにグイグイ曲がっていく。アクセルの操作ひとつで、走行ラインを自在に変えられた。運転していて楽しいし、誰が乗っても高いレベルで安定して曲がってくれるのは高評価。多くの人が運転しやすいと思うはずだ。

4代目日産エルグランド(E53系) センターコンソール

 

 

ただの4WDじゃない! ライバル車にはできない走りを支えるe-4ORCE

 

e-4ORCEは、単に雪道など滑りやすい道で安全に走るためだけの機能ではない。前後左右のモータートルク配分を自在に変化させ、瞬時により安定して気持ちよく曲がる機能でもある。これは、モーター駆動だからこそできる技だ。

ライバル車も後輪に小さなモーターを設置しているが、基本は滑りやすい道でトラクション(駆動力)を確保するためのもの。新型エルグランドと同じ電動4WDではあるが、e-4ORCEとは、まったく異なる思想で開発されている。この走りの違いは明確。走行性能にもこだわった先代E52エルグランドのDNAを新型エルグランドでも感じた。

 

燃費と価格でライバル車に勝てるのか?

 

優れた乗り心地と安定した運転しやすい走りを高いレベルにまとめ上げた新型エルグランド。価格や細かいスペックは、未だ非公表。だが、あの超人気Lクラスミニバンにも勝る実力を秘めていいることを実感。

一度、試乗してみることをお勧めしたい。あとは、気になる燃費性能と価格がライバル車に勝るのか? は、デビュー時までお預けとなりそうだ。

<レポート:大岡智彦

 

日産エルグランド新車情報・試乗評価一覧

【動画】トヨタ アルファード (40系)内外装レビュー

40系トヨタ アルファード/ヴェルファイア新車情報・購入ガイド 

中古30系トヨタ アルファード VS 新車トヨタヴォクシー

トヨタ アルファード VS 日産エルグランド

トヨタ アルファード&ヴェルファイア新車情報・試乗評価一覧

ライター紹介

自動車Webサイト CORISM編集長

大岡 智彦

自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポート、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。趣味は、まったく上手くならないゴルフ。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

【関連記事】

【オススメ記事】