「AIR」と「CROSSTAR」、2つの個性とした3代目新型フリード
日常使いに寄り添った、機動性の高いコンパクトミニバンとして高く評価されているのがホンダのフリードだ。2016年に登場した第2世代は、モデル末期まで安定した売れ行きを見せ、8年間も第一線で活躍を続けた。
そして2024年6月、満を持して3代目がベールを脱いでいる。商品コンセプトは、先代がキーワードとして掲げた「ちょうどいい」を受け継ぐ「“Smile” Just Right Mover(“スマイル” ジャスト ライト ムーバー)」だ。
エクステリアは、ウエッジシェイプを基調に柔らかい面を織り交ぜた洗練度の高いデザインで、ハンサムに見える。ヒンジドアに両側スライドドアの構成は、今までと変わらない。
新型フリードのデザインは、大きく分けると2種類だ。ステップワゴンと同じようにフレンドリーなキャラクターと顔立ちの「AIR」、そして先代から加わったアウトドア系風味の「CROSSTAR」を設定した。ヘッドライトはLED化され、2連のデイタイムランニングランプとターンシグナルで個性的な顔立ちとている。
ボディサイズは、ちょっとだけ大きくなった。全長は先代より45㎜長く、全高は105㎜低い1755㎜(FF車)となっている。だが、全高はアンテナ形状の違いによって低くなっただけだ。先代とルーフの高さは変わっていない。ホイールベースは先代と同じ2740㎜にとどめている。全幅は「AIR」が5ナンバー枠いっぱいの1695㎜だ。これに対し「CROSSTAR」は1720㎜である。フリードとしては、初の3ナンバー車となった。
基本となるのは、3列シートの6人乗りだ。2列目は左右が独立した、快適なキャプテンシートになる。そして「AIR」のFF車だけに設定したのが3列シートの7人乗り仕様だ。2列目は3人掛けのベンチシートである。また、「CROSSTAR」には、先代のフリード+のように収納にもこだわった2列シートの5人乗り仕様を設定した。特徴のひとつである低いラゲッジフロアを活かせるように工夫し、スチール製のボードやラゲッジフックなどを装備している。
ガソリン高騰時代にうれしい「e:HEV」の優れた実燃費
新型フリードのパワートレインは、一新された。ハイブリッドとガソリンの両方を設定し、総排気量はどちらも1496ccだ。主役を張るハイブリッド車は、1モーター式のi-DCDから2モーターの「e:HEV」に変わっている。
優れた熱効率のLEB型直列4気筒DOHC i-VTECエンジンに駆動用と発電用、2つのモーターを組み合わせた。トランスミッションはツインクラッチDCTではなく一般的な電気式の無段変速機だ。基本的にはフィットと同じものである。
エンジンの最高出力は78kW(106ps)/6000〜6400rpm、最大トルクは127N・m(13.0kg-m/4500〜5000rpmだ。モーターの最高出力は90kW(123ps)/3500〜8000rpm、最大トルクは253N・m(25.8kg-m)/0〜3000rpmである。
新型フリードは、スポーティな味わいだ。モーターアシストの美点が際立っている。2.5Lクラスの太いトルクを低回転から発生するから加速は力強いし、モーター駆動ならではの滑らかな加速フィールも魅力だ。
エンジンで発電を行い、モーターで駆動するシリーズハイブリッドが基本となっているから、一般道の走りはモーターが主役だ。EV走行の割合は多くなったこともあり、静粛性は大きく向上した。高速走行などで、エンジン負荷が低いシーンでは、エンジンだけで走行し燃費を向上させる。
優れたドライバビリティに加え、静粛性に代表される快適性も先代を相手にしない。しかも、加速時には、耳に心地よいエンジンサウンドを奏でる。不快なノイズを抑え込んでいることに加え、振動も大幅に減った。気になる燃費は「e:HEV」のクロスターは、FF車で25.5km/L(WLTCモード)だ。街乗りでの燃費も17km/Lに迫り、高速走行を主体とした走りでは25km/Lを超えている。最近はガソリン価格が高騰しているから、うれしい進化だ。
先代より1ランクアップした新型フリードの乗り心地
新型フリードのプラットフォームは、先代からの改良型。だが、リアを中心に剛性を高めている。サスペンションは、FF車がストラットとトーションビームの組み合わせを継承した。だが、リンクやアームなどの配置を見直している。4WDモデルはリアをド・ディオンアクスルとした。
タイヤサイズは全車共通で、185/65R15だ。電動パワーステアリングの容量をアップしたことも功を奏し、狙った方向に気持ちよくクルマが向きを変える。背の高さを意識させないのがいい。
ハイトワゴンは、ステアリングを切り込んでいったときに上屋の動きがワンテンポ遅れることが多いが、新型フリードは前後のバランスがよく、ふらつきや上下動も上手に抑え込んだ。一体感があり、唐突に上屋が動かないから同乗者も酔いにくいだろう。元のレーンに戻るときの動きも滑らかで、収まりがいい。優れた接地フィールも自慢だ。FF車でもしっかりと駆動力が伝わってくる。
ワインディングロードでもコントローラブルで、狙ったラインに正確に乗せることができた。乗り心地は、不快な突き上げを上手に封じている。先代より1クラス上質になった印象だ。だが、大きな段差や目地の乗り越えでは振動の押さえ込みに少し物足りなさを感じた。これが惜しいところだ。
4WDモデルは、リアの駆動力をアップしている。今回の試乗では実力を引き出すことは叶わなかった。が、4WDで走行できるシーンを増やしているようだから、雪道での試乗が楽しみだ。
割り切り派にお勧めなガソリン車
新型フリードのガソリンエンジン搭載車は、ヴェゼルなどと同じ1496ccの直列4気筒DOHC i-VTECで、トランスミッションは無段変速機のCVTを組み合わせた。ただし、税制上の優遇がなくなったことと、高価なバッテリー交換の負担を減らすためにアイドリングストップを廃止している。
パンチ力と燃費は「e:HEV」搭載車に及ばないが、思いのほか軽快な印象だ。また、「e:HEV」搭載車とは30万円以上の価格差があるから、買い得感は高い。割り切り派にはいいだろう。
快適性重視なら、お勧めは6人乗り?!
新型フリードは、パッケージングも8年分の進化を遂げた。水平基調のダッシュボードは、ファブリック生地を張り込むなどの工夫によって見栄えがよくなっている。アップライトな運転席からの見晴らしは先代以上にいいし、シート構造を見直したからホールド性も向上し、快適に座れるようになった。シフトレバーは一般的なストレートゲート式になったから、狙い通りのポジションを選びやすい。Bレンジも違和感なく使えるように進化している。
2列目のシートは快適だ。キャプテンシートをおごる6人乗り仕様なら、快適にロングドライブを楽しめる。左右に動かせばウォークスルーできるし、寄せればロングスライドが可能だ。後席の人が快適に座れるようにリアクーラーを装備したこともうれしい進化である。
3人掛けのベンチシートも厚みがあり、座り心地は悪くない。3列目シートも、先代よりサイドの視界がよくなったから、寛げるようになった。3列目の快適性が高められ、ラゲッジルームの収納などの使い勝手もよくなっている。
ステップワゴンはいらない? と、思えるほど魅力的な新型フリード
第3世代の新型フリードは、機動性の高さに磨きをかけるとともに、快適性や実用性を大きく向上させた。先代と違って、ロングドライブや走りにこだわるファミリー派にもおすすめできる魅力的なミニバンに成長している。兄貴分のステップワゴンを検討している人にとっても気になる存在だろう。
また、低床、大開口のバックドアの使い勝手のよさを生かして福祉車両の「クロスター スロープ」も登場した。こちらも大きく進化し、魅力的だ。
<レポート:片岡英明>
2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー「ホンダ フリード」に決定!
ホンダ フリード新車価格
■1.5Lガソリン車
・エアー FF 6名 2,623,500円/4WD 6名 2,854,500円
・エアーEX FF 6名 2,812,700円/FF 7名 2,856,700円/4WD 6名 3,043,700円
・クロスター FF 5名 2,928,200円/FF 6名 2,972,200円/4WD 5名 3,159,200円/4WD 6名 3,203,200円
■1.5L e:HEV(ハイブリッド)
・e:HEVエアー FF 6名 3,022,800円/4WD 6名 3,253,800円
・e:HEVエアーEX FF 6名 3,212,000円/ FF 7名 3,256,000円/4WD 6名 3,443,000円
・e:HEVクロスター FF 5名 3,327,500円/FF 6名 3,371,500円/4WD 5名 3,558,500円/4WD 6名 3,602,500円
ホンダ フリード燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:フリードe:HEV エアーEX(6人乗り)
ボディサイズ:全長4310×全高1695×全幅1755mm
ホイールベース:2740mm
車両重量:1480㎏
駆動方式:FF(前輪駆動)
最小回転半径:5.2m
エンジン型式:LEB型 直列4気筒DOHC 16バルブ
排気量:1496㏄
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター型式:H5型
モーター最高出力:123PS(90kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
WLTCモード燃費:25.4㎞/L
動力用主電池種類: リチウムイオン電池
サスペンション前/後:マクファーソン式/車軸式
タイヤサイズ前後:185/65R15
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