2026年1月から納車開始する新型リーフ!
2010年12月、日産がCセグメント市場に送り出したのが、世界初のグローバル量産BEV(バッテリー電気自動車)となる「日産リーフ(ZE0型)」だ。
その開発は、カルロス・ゴーン元CEOが先頭に立って積極的に推し進めたものだが、BEVブームの起爆剤となっている。日産インテリジェント・モビリティを具現化した2代目リーフ(ZE1型)は、2017年10月に登場した。基本的なアーキテクチャは初代のものを受け継いだが、内外装は大きく変わっている。
リーフは海外でも好評を持って迎えられ、15年間で70万台以上の販売を記録した。そのうちの18万台は日本のユーザーだ。総走行距離は280億kmにも及ぶ。このリーフを愛用しているユーザーの92%は「次もBEVにしたい」と考えている。15年間にわたるリーフの販売で得られた多くの知見をベースに、第3世代の新型リーフ(ZE2型)は開発された。正式デビューは25年10月で、26年1月から発売を開始する。
「3-in-1」構造とし大幅コンパクト化したパワートレイン
歴代リーフから受け継いだDNAは、地に足がついた技術で、快適かつ楽しいドライビングをサポート。新型リーフ(ZE2型)の開発エンジニアが目指したのは「スーッと滑らか。ずっと乗り続けたくなるクルマ」である。
どんなクルマよりも気持ちよくドライブできることに加え、初代から培ってきたEV性能を磨き上げた、誰もが安心して乗れるBEVを目指した。大きく変わったのはデザインとパッケージングだ。5ドアハッチバックから時代が求めるクーペSUVへと変貌を遂げている。
3代目新型リーフ(ZE2型)は、アリアのCMF-EVプラットフォームをベースに、新型のリチウムイオンバッテリーをフラットなフロアの下に敷き詰めた。新型リーフ(ZE2型)の電動パワートレインは、第3世代だ。モーター、インバーター、リダクションギアをパッケージ化した「3-in-1」構造とした。
6分割スキューローターのモーターを斜め構造配置とするなど、コンパクトに設計した駆動系とエアコンユニットは、フロントのボンネットのなかに効率よく収められている。この構造を採ることにより、振動とノイズも少なくなった。
新型リーフB7の出力は218㎰&355Nm!
新型リーフ(ZE2型)の気になるモーターのパワースペックは、2種類のチューニングを用意した。ベース車の「B5」はバッテリー容量55kWhで、モーターの最高出力と最大トルクは130kW/345Nm(177ps/35.2kg-m)を発生する。2代目リーフのe+に迫る動力性能だ。
上級の「B7」シリーズは、78kWhの駆動用バッテリーを搭載し、モーターもパワーアップしている。最高出力は160kW(218ps)に引き上げられ、最大トルクも355Nm(36.2kg-m)と、10Nm余裕を増した。試乗したのは19インチタイヤを履く最上級グレードの「B7 G」と18インチタイヤを履く「B7 X」だ。
新型リーフ(ZE2型)の駆動方式は、先代までと同じように前輪を駆動するFWDで、4輪駆動(AWD)は用意されていない。
パドルシフトの回生ブレーキは、何かと便利で使いやすい
サスペンションは、大きく進化した。アリアと同じようにストラットとマルチリンクの組み合わせとなった。ラックアシスト式電動パワーステアリングも剛性を大幅に高めた。
シフトセレクターは、セレナなどでお馴染みのプッシュボタン式。ちょっと慣れを必要とする。回生効果を強めるBモードも押す作業が必要だ。
モーターは瞬時にパワーとトルクが立ち上がるから、スタンダードモードでも軽やかな加速を見せつけた。鋭すぎるレスポンスではなく、気持ちいいフィーリングの加速である。もちろん、先代リーフより加速にパンチがあり、上質ムードも一歩上を行く。
新型リーフ(ZE2型)は、遮音性能を高めていることもあり、モーターの滑らかさも際立っていた。ワンペダルドライブのeペダルステップは、完全停止までは持っていけないセッティングだが、違和感なく扱うことができた。
加減速の制御をドライバー好みにカスタマイズできるパーソナルモードが加わったし、ステアリングのパドルシフトで回生ブレーキの強さも変えることができる。使い方を熟知すれば、多くのシーンで大いに重宝するだろう。
スポーツモードは、応答レスポンスがシャープになり、パワーとトルクの盛り上がりにも力強さが加わった。痛快な加速を披露し、減速フィールにもメリハリが付く。電動パワーステアリングの操舵の洗練度が高まったことと相まって操る楽しさは格別だ。
また、両極端なエコモードでも、街中を中心とした走りではストレスを感じることはないだろう。快適性を含め、先代よりワンランク上のBEVのパワーフィールと感じられる。
リヤサス、トーションビーム式からマルチリンク式へ。乗り心地、操縦安定性がさらに向上!
大きく進化したのは、ハンドリングと乗り心地だ。ボディやシャシーの剛性アップ、ラックアシスト式電動パワーステアリングやリアマルチリンクサスペンションの採用により、爽快な走りを手に入れた。走り出して数百メートルの距離だけで、乗り心地がよくなったことが分かる。
兄貴分のアリアと比べても、快適な乗り心地だ。荒れた路面でも足の動きがよく、凹凸を上手にいなす。連続するコーナーでも体や首の動きは滑らかだった。
新型リーフ(ZE2型)のボディとシャシーは、シャキッとしている。剛性が高められているだけでなく、バランス感覚が絶妙だ。タイトコーナーやS字のコーナリングでも初期のロールが穏やかに推移し、そこから先の挙動の乱れも上手に抑え込んでいる。だから狙った通りにクルマが向きを変えやすいし、アンダーステアも予想の範囲内だ。破綻しそうになったときでもアクセルと舵の調整でコントロールしやすかった。
電動パワーステアリングは、洗練された操舵フィールだ。操舵に一体感があり、車重の重さを意識させない。多くの走行域で快適性が高いのも新型リーフ(ZE2型)の美点に挙げられる。
走りとエコを両立させたダンロップ製のEV向け19インチタイヤ(eスポーツMAXX235/45R19)は、したたかな接地感を身につけ、操って楽しいのも魅力のひとつだ。18インチタイヤ(215/55R18)も、あたりがソフトで粘り腰も見せるなど、守備範囲は広い。空力性能を磨いたこともあり、高速走行での静粛性も大きく向上している。
cd値0.26、こだわり抜いた空力性能
大きく変わったと感じさせるエクステリアは、アリアから採用した「タイムレス・ジャパニーズ・フューチャリズム」の流れを汲むデザインだ。4ドアクーペ的なダイナミックなプロポーションで、左右に広がるLEDヘッドランプを中心とした端正なフロントマスクも新鮮な味わいを感じさせる。
リアは縦3本、横2本のLEDリアコンビネーションランプが目を引く。世界初の3Dホログラムグラフィックは遠くからでも目立つ。
新型リーフ(ZE2型)の全長は、先代より120㎜短い4360㎜だ。ホイールベースは10㎜短い2690㎜だが、これは大径タイヤを履くためで、先代と実質的に変わっていない。全幅は20㎜広げられ、1810㎜となった。全高は1550㎜と、立体駐車場を使える高さに抑え込んでいる。
外観デザインは、クロスオーバーSUVクーペ風だが、最低地上高は意外にも135㎜だ。ちなみにエアロダイナミクスにも強くこだわり、フラットなアンダーフロアや3D形状のフロントタイヤのディフレクター、スポイラー状のリアエンドなどの採用により空気抵抗係数cd=0.26を達成した。
また、オーバーハングを切り詰め、扱いやすさを向上させている。だが、キャビンは広く、快適な空間を実現した。ドライバーの着座位置はわずかに高くなった印象を与えるが、頭上には余裕があるし、日産初の調光パノラミックガラスルーフの採用によって開放的だ。
使い勝手面では、乗り降りしやすいし、ウォークスルーできるのも便利だ。前方の視界もいい。Aピラーまわりの視界を改善したこともあり、先代より運転しやすいと感じる。
新型リーフ(ZE2型)の室内スペースは、リアシート足もとの空間が広げられ、背もたれも少し後ろに移動したから快適に座ることが可能だ。フラットフロアと相まって居心地のいい空間である。試乗当日は暑い日だったが、新型ガラスルーフは優れた遮熱性能を発揮し、快適だった。ラゲッジルームも先代より荷物を積みやすい。
航続距離に不安なし! 78kWhバッテリー搭載で、一充電走行距離は702㎞!!
気になる一充電走行距離(航続距離)は、78kWhのバッテリーを積む「B7」が702km(WLTCモード)だ。エネルギー密度の高いAESC製の新型バッテリーを採用し、受電性能を150kWの急速充電まで無理なく対応可能としたから短時間で航続距離を延ばすことができる。150kWの急速充電器による充電時間は、先代のリーフが約50分かかったのに対し、新型リーフ(ZE2型)では約35分だ。
しかも、水冷式バッテリー温度調節システムと緻密な制御によって温度管理を徹底した。これが先代までと大きく違うところだ。
Google搭載インフォテインメントシステムを採用したことも大きなニュースである。スマホで使い慣れた地図情報を使用できるし、ナビのルート設定とリンクしてバッテリーのコンディションを適切に管理できるように進化させた。充電スタンドに行くまでの間にバッテリーを最適温度に冷却し、急速充電性能を最大限に引き出せるようにしている。寒冷地仕様にはホットプラスパッケージなどが用意され、寒冷地での充電性能やキャビンでの快適性も大きく向上させた。
また、ACコンセントを新設し、家電をフルに使うことができるようになったのもユーザーには嬉しい進化だ。普通充電ポートにコネクターを挿すだけで給電できるのである。住宅電力供給のV2H機能に加え、再生可能エネルギーに利用するV2Gにも対応可能とした。
もちろん、日産自慢のプロパイロットも標準装備だ。ただし、最新のプロパイロット2.0とプロパイロットリモートパーキングはオプション設定となっている。
基本性能と快適性能、そして安全性能を高めた3 代目新型リーフ(ZE2型)リーフは、海外勢と同じ土俵に上り、真っ正面から勝負できるBEVへと成長した。
驚きなのは、新型リーフ(ZE2型)の価格。B7 Gグレードで新車価格は5,999,400円。先代リーフ e+の新車価格が5,834,400円とほぼ同等。搭載されるリチウムイオンバッテリーは、水冷式になり容量もアップ。サスペンションもマルチリンク式になるなど、機能や装備も大幅に向上しながら、価格はほぼ据え置き。これは、驚きだ。
26年2月に追加される「B5」は、CEV補助金の金額によって違ってくるが、ユーザーの実質的な負担額を400万円を下回る価格の実現を目指しているようだ。新型リーフ(ZE2型)は「B7」だけでなく「B5」の動向からも目が離せない。
<レポート:片岡英明>
新型日産リーフ新車価格
・B7 X 5,188,700円
・B7 G 5,999,400円
新型日産リーフ B7航続距離、電費など主要諸元
代表車種 リーフB7 G
全長×全幅×全高 4,360×1,810×1,550mm
ホイールベース 2,690mm
最低地上高 135mm
車両重量 1,920㎏
乗車定員 5名
モーター型式 YM52
モーター最高出力 160kW(218ps)
モーター最大トルク 355N・m(36.2kgf・m)
一充電走行距離(WLTCモード) 685km
バッテリー総電力量 78.0kWh
電費(一充電走行距離÷バッテリー総電力量) 約8.8㎞/kWh
駆動方式 前輪駆動(FF)
サスペンション型式 前:ストラット 後:マルチリンク
タイヤサイズ 前後 235/45R19
最小回転半径 5.3m
バッテリー種類 リチウムイオン
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