■全幅1,840mmになると、日本では使いにくい上に、欲しくても買えない人を生む
新型アテンザでは、CX-5と同じようにディーゼル車が高い比率で売れている。初期受注では76%がディーゼル車だったというから、日本でもディーゼル車に対する意識が変わってきたようだ。
新型マツダ アテンザのディーゼル車には、いずれもステーションワゴンに試乗し、上級グレードのXD LパッケージとベースグレードのXDの両方を試してみた。Lパッケージは19インチタイヤを履き、XDは17インチタイヤという違いがあるため、これを確認したかったからだ。
外観デザインは、全長4800mm×全幅1840mmという余裕あるサイズを生かし、伸び伸びしたものとされている。マツダが“魂動デザイン”と呼ぶ力強さを感じさせる存在感のあるデザインで、最近のマツダ顔の象徴ともいえる大きな五角形グリルも印象的だ。
ただ、ボディの全幅は1800mm以内に抑えて欲しかった。BMW3シリーズやクラウンなどが、全幅を1800mmに抑えているのは、それが日本のインフラに適合するサイズだからだ。
日本で販売される台数がわずかなものでしかないアテンザでは、日本向けの設計ができず、外国の市場を意識して、全幅を拡大せざるを得ないのだろうが、日本にはそうすることで、立体駐車場などに入らないなどの理由で購入を断念しなくてはならないユーザーがいる。
インテリアは、全体に高い質感が確保されるとともに、スポーティさを感じさせるドライバーオリエンテッドのデザインが採用され、黒の本革シートを装着したLパッケージでは、左右に伸びるボルドーメタルの加飾パネルがワイド感を強調する。シートはサイズ、ホールド性とも上々のデキである。
■大トルク420Nmを発揮するディーゼルエンジン。余裕のあるクルージングが楽しめる
新型マツダ アテンザのディーゼル車に乗り込んでシートベルトを締めてエンジンを始動すると、アイドリングの回転数は800回転ほどだが、ガソリン車とは明確に異なるエンジン音が聞こえてくる。最新のクリーンディーゼルは、燃料を高圧で噴射するためどうしてもエンジン音が大きくなりがちだ。
アイドリング状態から発進し、低速でゆっくり走っているときまではディーゼル車であることが分かる。速度を上げて走るようになれば、ロードノイズなども大きくなるのでエンジン音はあまり気にならなくなる。
低速域から余裕のトルクを感じさせるから、市街地などでは、ほとんどアクセルを踏み込まなくても良いという感じだ。420N・mのトルクはV型8気筒エンジン並みのもので、ゆったりした余裕の走りが得られる。これだけのトルクで、JC08モード燃費は20.0km/Lという低燃費を実現している。4Lクラスのガソリン車なら、10.0km/Lを切るのが当たり前なのだから、新型アテンザがディーゼル中心で売れるのも納得がいく。
高速クルージングでは、時速80kmでの回転数は1500回転を切ったあたり。時速100kmでも1800回転弱くらいで回っている。入念な防音対策のおかげか、高速域でのエンジン音はガソリン車よりも小さいくらいの印象だ。
高速道路での合流や、追い越し加速などでアクセルを踏み込むと、ガソリン車並みにスムーズとまで言ってはほめすぎだが、それに近いくらいにスムーズに吹き上がる。最大トルクは、わずか2000回転で発生するので、ちょっとアクセルを踏めばすぐに最大トルクといった感じだ。あまりアクセルを踏む必要がないので、長時間ドライブでの疲労も少ない。
新型アテンザの燃費に貢献するアイドリングストップ機構であるi-stopは、割と良く止まるようになった。これは、減速時にエネルギーを電気に変えて貯め込むi-ELOOPを採用したことなどが大きな要因だ。大きな容量の電気を一気に出し入れできるキャパシタを採用。それが、モニターに表示されるので分かりやすい。
新型マツダ アテンザは、ダイレクトな変速感を味わわせてくれる、電子制御6速ATも好感の持てるものだ。それは、ロックアップ領域を広げたことによる効果だ。今どき、上級車のATは7速から8速が常識で、さらには間もなく9速ATも登場するという時代だから、記号的には6速では物足りないくらいになりつつある。でも、アテンザのATはアクセルワークに対するレスポンスがしっかりしていて、十分に良いATであるのが分かる。
足回りは、タイヤサイズの違いによって印象に明確な違いがあった。やはり19インチタイヤは、大きすぎて乗り心地も硬すぎる感じ。今回の試乗コースは、マンホールが出っ張っているなど、路面状態があまり良くない区間があり、そうした場所ではかなり強い突き上げを感じた。
それに比べると、XDに装着される17インチタイヤは乗り心地がマイルドな感じになり、乗り心地の良さで選ぶならこちらが良いという印象だった。スタッドレスタイヤを買うときや、将来のタイヤ交換時に19インチタイヤが高くつくことを考えたら、XD Lパッケージでもレスオプションとなる17タイヤを選んだら良いように思う。
新型マツダ アテンザでは、最新の自動ブレーキであるスマート・シティ・ブレーキ・サポートなど、最新の安全装備をセットにしたセーフティ・パッケージがXD Lパッケージには標準で、XDには15万円ほどのオプションで用意されている。CX-5のものより進んだ仕様の安全装備だ。
オプション装着する場合には、ディスチャージ・パッケージとセットでないと買えないので20万円以上の予算が必要になるが、アテンザを買うならぜひとも装着しておきたい。すぐに付いていないクルマは遅れている、という時代がやってくるからだ。
ただ、ボルボV40が充実したセーフティ・パッケージを20万円で提供していることや、スバルのアイサイトが10万円であることを考えると、価格的にはちょっと高めの印象がある。このあたりは、もうひと頑張りして欲しいところだ。
この安全装備の違いや本革シートなどの装備の違いによって、XDが290万円であるのに対してXD Lパッケージは340万円と50万円高の設定になる。またガソリン車に対する価格差は40万円ほどで、セダンとは同額の設定である。こうした価格設定には、やや微妙なところがあるが、ディーゼル車で発売直後の今の時点で買うならXD Lパッケージのほうが良いだろう。
■新型マツダ アテンザ 価格、燃費、スペックなど
<新型マツダ アテンザ販売予定価格>
■セダン
・20S SKYACTIV-G 2.0 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 2,500,000円
・25SL Package SKYACTIV-G 2.5 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 3,000,000円
・XD(クロスディー) SKYACTIV-D 2.2 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 2,900,000円 SKYACTIV-MT(6MT) 3,026,000円
・XD L Package SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 3,400,000円
■ワゴン
・20S SKYACTIV-G 2.0 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 2,500,000円
・25S L Package SKYACTIV-G 2.5 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 3,000,000円
・XD(クロスディー) SKYACTIV-D 2.2 SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 2,900,000円SKYACTIV-MT(6MT) 3,026,000円
・XD L Package SKYACTIV-DRIVE(6EC-AT) 3,400,000円
代表グレード | マツダ アテンザ ワゴンXD Lパッケージ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,800×1,840×1,480mm |
ホイールベース[mm] | 2,750mm |
トレッド前/後[mm] | 1,595/1,585mm |
車両重量[kg] | 1,530 |
総排気量[cc] | 2.188cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 129〈175〉/4,500 |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 420〈42.8〉/2,000 |
ミッション | 6AT |
タイヤサイズ | 225/45R19 |
JC08モード燃費 | 20.0km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 3,400,000円 |
発売日 | 2012年11月20日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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