クーペ? 5ドアHB? それともSUV? トリプルクロスオーバー?
クロスオーバーという言葉が自動車業界に現れてから、もうずいぶん時間がたった。シトロエンDS4も、そんなクロスオーバーというコンセプトの上に成り立つモデル。
普通、クロスオーバーモデルというと、5ドアHBとSUV、4ドアセダンとクーペなどと、2タイプのボディスタイルをかけ合わせることが多い。しかし、シトロエンDS4は、SUVに5ドアHB、そしてクーペの3タイプをミックスしたトリプルクロスオーバーといえる独自のボディをもつと評価したい。
基本的なフォルムは、5ドアHBのシトロエンC4だし、少し高い着座位置はSUV。リヤのドアノブが、後席の窓ガラス後端に隠されたスタイルは、まるでクーペを思わせる。どれだけ色々なボディスタイルを混ぜれば気がすむのか? そう、問いかけたくなるデザインなのだが、意外なほどまとまりがあり塊感を感じさせるスタイルは、シトロエンのデザイン力の高さを物語る。ちなみに、リヤウインドウははめ殺しになっていて開かない。そこまで、徹底してデザインしているのだ。
シトロエンDS4は、C4の派生モデルではあるが、徹底したデザインへのこだわりを追求。その背景には、ヨーロッパでのスタンダードモデルとして価値を高めなくてはいけないC4が、どうしても以前ほどデザインコンシャスになれなかったということもある。マーケットの多様化と、よりシトロエンらしさを求めるユーザーへの回答が、このDS4というわけなのだ。
シットリ感のあるフットワークは、C4譲り
搭載されるエンジンは、2つ。Chic(シック)と呼ばれるグレードには、1.6Lターボエンジンが載せられ156馬力と24.5kg-mのトルクを発揮。このパワーを伝えるミッションは、6速EGS(エレククトロニックギアボックスシステム)。要は、シングルクラッチMTタイプの自動変速機能付きATだ。そして、スポーツChicには、200馬力と28.0kg-mを発揮する1.6Lターボエンジンを搭載し、ミッションは6MTとなる。
試乗すると、6速EGSは、やはり少々慣れを必要とする。慣れてしまえば、なんでもない人と、どうしてもダメな人とで、好みが別れるかもしれない。Chicの1360kgのボディに2.5L車並の24.5kg-mというトルクの組み合わせは、十分に速い。フットワークは、C4より少々足まわりを固められているものの、C4譲りのゆったりとした乗り味だ。スピードを上げれば、ロールもそれなりに出るのだが、なんの不安もなく走り抜けていく。試乗会場となった箱根の市街地は、道も広くなく全幅1810mmというボディでは、スイスイ駆け巡るということは出来なかったものの、5.3mという最小回転半径もあり、取り回しは思ったほど苦労しなかった。
スポーツChicは、さすが200馬力だけあり速い。タイヤとホイールは、Chicの17インチから18インチへと変更されていて、より飛ばせる仕様に変更。個人的には、もう少し高回転まで回るターボエンジンが好みなこともあり、それほど魅力的には感じなかった。とにかく、速さ重視やどうしてもMTという人でなければ、スポーツChicよりベストはやはりChicだと感じた。もしかしたら、SUVに近い高い着座位置が、速さに対して違和感を感じさせたのかもしれない。
実際に買うモードに入ると、価格が微妙。C4のエクスクルーシブが299万円に対して10万円高でDS4が買える計算だ。プラス10万円で、この個性的なスタイルを選ぶことができるのは、確かに選択の幅を大きく広げてくれる。ただ、スポーツChicはいらないから、C4セダクションと同じ1.6LのNAエンジンと4ATの組み合わせのDS4を入れて欲しかった。このグレードが、C4セダクションの256万円プラス10万円の266万円で買えるなら十分に価値があり、税金など入れてもコミコミ300万円以内で購入できる。そもそも、シトロエンの魅力はエンジンパワーではないからだ。
いくら輸入車とはいえ、日本マーケットで300万円を超える価格でこのクラスのクルマを売るのは、とても難しい時代。クラスは違うがVWポロは、国産車との価格差を埋めるために、高めの残価設定の低金利ローンとメンテナンスフリープログラムを組み合わせて、国産ユーザーの取り込みにやっきだ。シトロエンDS4も、コミコミ300万円以内が、多くのファンを得るきっかけになるのではないだろうか。
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