エンジン、環境性能などすべてが新基準モデルコードF30の実力【BMW3シリーズ試乗評価】の目次
存在感のあるスポーティスタイルへの変貌
BMW3シリーズがフルモデルチェンジし、モデルコードもE90からF30になった。1975年の初代(E21→E30→E36→E46→E90)から数えて6代目になる。
2012年2月11日に数カ国を除いて全世界同時発売になるという。BMWの屋台骨になっている最量販車種だけに、世界のマーケットに対して力が入っている。
力が入っているのは、クルマそのものに対しても同じだ。外観の印象は幅広く大きく見えるようになり、メルセデス・ベンツCクラスやアウディA4と並べて見劣りしなくなった。逆にいえば、コンパクトなBMWらしさはなくなったともいえる。
幅が広く見えるのは確かだが、本国のカタログ上の全幅は1817mmから1811mmへと若干ではあるが狭くなっている。実は一番幅が広いポイントはドアハンドルで、微妙な取り付け位置によってカタログ寸法が変わっている。余談だが右ハンドルの日本仕様はE90と同じくF30でも薄いドアハンドルによって全幅は1800mmに収まるようだ。これは機械式駐車場の横幅の制限が1800mmの機械が多いからだ。
ドアハンドルではなく実際のボディ幅はというと、これは広くなっている。トレッド(左右のタイヤの幅の中心同士の距離)は前が+37mm、後が+47mmと拡大していることでもそれは容易に想像が付く。今回試乗した328ⅰのトレッドは前1531mm、後1572mmである。
実際の幅以上に見た目の横幅の広がりを感じるが、それには二つの理由がある。一つはボディを上から見たときの前の絞込みが少なくなったこと。全幅いっぱいまでライトやバンパーが広がっている。もうひとつはライトとキドニーグリルの位置が低くなったことが挙げられる。フロントのロー&ワイドなルックスから、実際以上にワイドなボディに見えていると評価したい。
全長は+93mm、ホイールベースは+50mmで後席のフットスペースが+15mm、室内高さは+8mmとより快適性を高めている。全長x全幅x全高は4624x1811x1429でホイールベースは2810mmである。
新しくなった1シリーズと同様に標準バーションに対して装備や一部のデザインを変更したモデルを用意している。スポーツライン、ラグジュアリーライン、モダンラインの3つがある。スポーツラインにはオプションで車高が10mm下がるMスポーツサスペンションを付けることができる。
またこのラインとは別にMスポーツパッケージも用意してある。前後バンパーやサイドスカートにエアロパーツの要素をたっぷり含んだモデルである。
気持ち良い抜群のハンドリングは、BMWの真骨頂!
サスペンションは2011年にフルモデルチェンジした1シリーズとこの3シリーズ用に開発したものだ。ダンパーとバネのボディへの入力を分離したタイプで、リヤのサブフレームの取り付けブッシュなどにも工夫を凝らし、乗り心地を快適にし騒音も小さくしたものだ。
カタルニアサーキットで走行しても、サスペンションがソフトで乗り辛いということはなく、しっかりしていて最後までドライバーの指示に忠実に動いてくれるから、とても安心なハンドリングである。
コーナリング中にアクセルペダルを踏み込んでいくと徐々にアンダーステアが強くなり外に膨らんでいくが、アクセルペダルをジワッと戻せばアンダーステアは消えてライン取りをインに向ける。ハイスピードコーナーに飛び込むときにごく緩いブレーキを掛けながらゆっくりハンドルを切るとスーッとリヤが流れ出そうとするが、カウンターステアを当てることなくアクセルペダルを踏み込んでいくと弱いオーバーステアは解消され、また弱いアンダーステアに戻っていく。弱いオーバーステアになったときアクセルペダルを急に深く踏み込めば、弱いオーバーステアを長い時間維持するように、前後のグリップがバランスを取り、ハンドルは直進状態のままでカーブの出口に向かっていくから気持ちが良いと評価したい。
このとき乗ったのは328ⅰスポーツラインでタイヤはオプションの19インチを履いていた。前が225/40R19 89Y、後が255/35R19 92Yという異サイズで、リヤが太いから安定感が高かったがハンドルの利きも良かった。
モダンラインにも乗ったがこちらは225/45R18 91Yを前後に履いていたが、こちらもタイヤのグリップ限界付近のコントロール性が穏やかで良くサーキットでも操りやすかった。
1シリーズに乗っていたからおおよその想像は付いていたが、3シリーズのサスペンションもしっかりしていてしなやかな先進の足である。
パワフルでエコな2L直噴ターボエンジンを搭載
328ⅰのエンジンは、N20B20と呼ばれるガソリン2リッター直列4気筒ターボである。直噴、ターボ、バルブトロニックの三種の神器が揃っている。200バールの圧力でガソリンをソレノイドバルブインジェクターで筒内に直接噴射する。
1番と4番、2番と3番の排気をまとめて、タービンを回すツインスクロールターボである。これに、ポンピングロスを小さくするバルブトロニックが付いている。さらに、ダブルVANOSも装備されているから4種の神器か。
最高出力180kW(245ps)/5000-6500rpm、最大トルク350Nm/1250-4800rpmを発揮し、0-100km/h加速が5.9秒、最高速は250km/hになっている。環境性能は8速ATで6.3L/100km、Co2の排出は147g/kmと優秀だ。100km/hのときのエンジン回転数は1700rpmと低く、ATでも自動アイドリングストップ機能が付いている。
サーキットを走るときには、Dレンジのままでもいいが、ハンドルの裏側に付いているパドルシフトを使うと良い。自動シフトアップする前に右手でパドルシフトを引くとパワーの落ち込みを感じることなく加速が持続するからだ。
6500rpmからがゼブラゾーン、7000rpmからがレッドゾーンである。AT任せの自動シフトアップなら6500rpmちょっとまで引っ張ってからシフトアップするが、タコメーターを見て6300rpmになったらシフトアップするといい。シフトのタイムラグもあっていいタイミングでパワーがつながるからだ。つまりパワーが落ち込む前にシフトアップしてパワーをつなげることができるのだ。
新しい3シリーズはシャシー、ボディ、エンジン、トランスミッション、タイヤなどすべてが替わり、大幅に進化したものになった。まずは328ⅰがデビューするが、これからのエンジンバリエーションの拡大が楽しみだ。
最高速250km/h0-100km/h加速6.1秒
代表グレード | BMW328iセダン |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4624×1811×1429mm |
ホイールベース[mm] | 2810mm |
トレッド前/後[mm] | 1531/1572mm |
車両重量[kg] | 1430kg(DIN) |
総排気量[cc] | 1997cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 245ps(180kw)/5000-6500rpm |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 350N・m/1250-4800rpm |
ミッション | 8速AT |
タイヤサイズ | 225/50 R17 |
EUサイクル総合 | 6.3L/100km |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 未定 |
発売日 | 2012/2/11 |
レポート | 菰田 潔 |
写真 | BMW |
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