
タイ日産の工場は、60年を超える歴史をもつ

これに対して日産の工場は、ルーツが1952年まで遡るというから、60年を超える長い歴史を持つ工場である。そのことが有利に働く面もあれば、不利になる面もある。
最初は現地資本との合弁で、サイアムモーターズとして日産車のノックダウンをする工場としてスタートしたという。資本面で日産が主導権を握るようになったのは2003年のことで、現在は株式の75%を保有する。2009年に会社名をNISSAN MOTOR(THAILAND)に至っている。
タイで生産しているのは、乗用車がアルメーラ、マーチ、ティーダ、ティアナなどで、トラックがフロンティアやナバラである。トラックに関しては、三菱自動車の工場にも生産委託をしているが、現在新工場を建設中であり、それが完成すればすべてを日産の工場で作るようになるという。
従業員など現地化が進められ、日本人比率が低くタイに根付いた工場

ASEAN以外の地域から並行輸入で完成車を輸入すると、高い関税が課せられるために販売価格が日本の2倍以上になるというが、それでも買うというクルマ好きな金持ちユーザーがタイにはいるようだ。
話をタイ日産の工場に戻そう。タイ工場では7000人の従業員で、上記の車種を年間に20万台を生産している。パワートレーンについては、隣接地にある別会社で生産しているとのこと。古くからの工場で、生産設備も人力に依存する部分が多いため、生産台数の割には人間が多いといえるのかも知れない。
ちなみに、日産から出向している日本人はほんの数名に過ぎないとのこと。大半の部分が現地化されている。タイにあるほかのメーカーの工場では、もっと多くの日本人が働いていたから、日産の工場は日本人比率が非常に低いといえる。
自動化率は低く、主に人がクルマを生産する

組み立て工程でも、日本では一部にロボット化されている部分があるが、タイでは基本的に人間が作業している。
もちろん、インパネやタイヤ、フロントガラスなどの重量部品については、作業を補助するための器具が採用されていて、肉体的な負担が少なくなるように工夫されている。
肉体的な負担が少なくしているといっても、女性には厳しい作業となるため、生産ラインでは女性をほとんど見かけなかった。最終の検査ラインなどに一部女性が配置されているが、ごくわずかだという。
自動化せずに人間が作業しているのは、何といってもタイでの人件費が安いためで、ロボットなどへの自動化投資をするより、人間に任せたほうが安上がりであるからだ。将来的に賃金が上昇していけば、徐々に自動化される部分が出てくるだろうが、現地の雇用を確保するという観点もあるため、単純に自動化が進むことにもならないようだ。
最終の検査ラインは、マーチの日本向け輸出の開始に合わせて改修され、“念入りライン”と呼んで、より厳しい検査をしてから日本に向けて出荷している。そうすることで、日本のユーザーに要求レベルに対応できる態勢を整えている。
日本の工場で生産したクルマと同様の品質レベルを保つため、常に改善を図るタイ工場

追浜工場でのPDIの結果は、タイ工場にフィードバックされ、外装関係では品質面での指摘を受けることもあるという。フィードバックされた点については、改善を図って、不具合の発生率を極力抑えるように努力しているとのこと。
マーチの輸入が始まった当初は、ボディパネルの合わせ目が広すぎるのではないか、という指摘を受けることもあったが、タイ工場では特にそうした意識を持ってはおらず、日本で生産されていた従来のマーチはもちろん、現在国内で生産されている日産車と変わらないレベルにあるという認識しているとのことだった。
タイ工場での生産は、自動化率の低さという日本の工場とは違う部分があるものの、クルマ作りのそのものは日本と同じで、日産プロダクションウェイに基づいている。順序遵守であるとか、顧客との同期化など、クルマ作りの思想そのものはタイでも日本でも変わらないという。
<レポート:松下 宏>
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