フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント試乗評価 積載性・燃費・価格よし、全方位敵無しの完成度を誇るゴルフヴァリアント!
ワゴンマーケットが回復傾向? ワゴン車のトレンドセッターとして重要な役割を担うゴルフヴァリアントの評価は?
2013年5月に発表されたフォルクスワーゲンゴルフ7 は、革新的なクルマ作りによるデキの良さが高く評価され、日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY) を始め、ワールドCOTY、ヨーロッパCOTYを完全制覇する結果を残した。2013年に限っていえば、ゴルフ7に勝るクルマはなかったといえる。
その2013年末には、ゴルフのワゴン モデルである新型フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント が追加された。ゴルフというとハッチバック 車のイメージが強く、セダン モデルはジェッタ、ヴェント、ボーラ、ジェッタ などと名前を変えてきたものの、結局日本市場で浸透することはできなかった。
ゴルフヴァリアントはゴルフ3の時代にゴルフワゴンの名前でデビューして以来、各モデルにヴァリアントが設定されてきた。セダン に比べれば、人気やイメージの面では優位に良かったものの、良く売れたかといえばさほどではなかったのが実情である。
ゴルフ4をベースにした従来のモデルも、大きなラゲッジスペースによる使い勝手の良さなどが評価されたものの、ぼってりした感じのデザインが受けなかったためか、さほど売れなかったのが実情だ。
また、国内のステーションワゴン市場を見ると、1997年あたりをピークに長期低落傾向を続けていたが、2009年〜2010年あたりで底入れし、プリウスα やフィットシャトル の発売によって、回復傾向が顕著に出ている。そんな状況の中で登場した今回のゴルフヴァリアントは、けっこう売れそうなクルマに仕上がっている。
広いラゲッジスペースは、いかにもフォルクスワーゲンらしい高い機能性をアピール
外観デザインは、ゴルフ7をベースにしたもので、従来のモデルに比べるとすっきりした感じでスタイリッシュなクルマに仕上げられた。これは全長を30mm延長し、全幅を15mm拡大しながらも、全高を45mm下げて1485mmに抑えたことによる。ワイド&ローの見るからにすっきりした外観を持つようになった。
インテリアデザインもゴルフ7ベースにものに変わった。インパネ中央部分を運転席側にやや傾けたドライバー・オリエンテッドのデザインとすることで、単に機能的だった従来のモデルとは異なり、エモーショナルな要素も持つようになった。
また、上級グレードのハイラインにはアルカンターラのシートが標準装備され、コンフォートラインと合わせてレザーシートがオプション設定されている。
室内の居住空間や後部のラゲッジスペースが拡大されているが、これはホイールベースが60mm延長されて2635mmになったことが大きい。標準状態のラゲッジスペースは605Lのスクエアな空間があるが、これはプリウスαよりも大きい。
と、いうことは、レガシィツーリングワゴン やアテンザワゴン よりも大きな容量を持つということを意味する。リヤシートの背もたれを倒すと実に1620Lの空間が生まれる。背もたれはレバーを操作するだけで女性や子供でも簡単に倒せるようになり、倒すとフラットなラゲッジスペースが作れる。
若干重くなったゴルフヴァリアントだが、鈍さを感じさせない確かな手応え、そして低燃費性能も健在だ!
搭載エンジン&トランスミッションは、ゴルフに準じたもので、コンフォートラインには1.2Lの、またハイラインには1.4Lの直噴+インタークーラー付きターボ仕様のエンジンが搭載されている。いずれも7速DSGとの組み合わせだ。
今回試乗したのは、1.4Lエンジンを搭載したハイラインで、103kW/250N・mのパワー&トルクを発生する。ゴルフヴァリアントの重量は、ハッチバックのゴルフに比べると60kg重くなっている。なので、同じ動力性能であれば、その分だけ走りが鈍くなる方向に向かうはずだが、ゴルフヴァリアントを走らせていて走りの鈍さなどは全く感じなかった。
アクセルワークに対するリニアなレスポンスを始め、低速域でのトルク感、スムーズな吹き上がりとパワーの盛り上がりなど、いずれもゴルフを走らせているのと変わらない感じだった。
フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアントの燃費は、コンフォートラインについては共通で、ハイラインは19.9km/Lが19.5km/Lへとわずかに下がっているから、やや悪くなる方向に進んでいるが、これは車両重量が影響したのではなく、ヴァリアントにはACTと呼ぶ気筒休止機構がないので、それによってわずかに燃費が下がってものと見られる。ACTは本国仕様のヴァリアントにも設定がないとのことで、これは重量増を考えてのことかも知れない。なんにせよ、ゴルフヴァリアントの低燃費性能は高いレベルにあることは間違いない。
ヴァリアントもゴルフと同様に、しっかりした感じの操縦安定性を確保しながら、高架道路の継ぎ目などでもショックをうまくいなす足回りを持つ。試乗車はDCCと呼ぶアダプティブ・シャシー・コントロールをオプション装着したクルマだったので、モードの切り替えによってメリハリの効いた乗り心地と操縦安定性を感じさせた。
また、確かな手応えと確実な操舵フィールのあるステアリングも好感の持てるもので、快適なロングドライブが楽しめクルマという実感を持った。
万人にお勧めできる高い安全性。そして、ゴルフヴァリアントの価格もお買い得?
安全装備の充実度は高く、9個のSRSエアバッグを始め、プリクラッシュブレーキ、マルチコリジョンブレーキシステム、アダプティブ・クルーズコントロール、レーンキープアシストなど、最新の安全装備を備えている。
快適装備は、ゴルフ7が発売された時点では間に合わなかったカーナビが、ディスカバリー・プロという名前のインフォテイメントシステムとしてオプション装着が可能になった。17万8500円というリーズナブルな価格で装着が可能だ。
ゴルフヴァリアントの価格は、コンフォートラインが269万5000円で、ハイラインが322万5000円だ。コンフォートラインはゴルフに比べて5000円しか高くなっていないように見えるが、これはヴァリアントのコンフォートラインの装備がゴルフのトレンドライン並みになっている部分があるため。
ハイライン同士の比較では、23万5000円高くなっているので、これがゴルフとヴァリアントの実質的な価格差と考えていいだろう。厳密には、前述のACTの有無などさらに違いがあるが、ざっと20万円高というのはまあまあ一般的な価格差である。
試乗車は、ディスカバリー・プロ、DCC、レザーシート、サンルーフとほとんどフルオプションの状態だったので、車両価格ベースで396万円に達していたが、レザーシートとサンルーフを除けば350万円台で手に入る。
多くの荷物を積む機会のある人はもちろん、そうでない人でも積極的にヴァリアントを選んだら良いと思う。
フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント価格、燃費、スペックなど
■フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント価格
・コンフォートライン 2,695,000円
・ハイライン 3,225,000円
代表グレード | フォルクスワーゲン ゴルフヴァリアント ハイライン |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,575x1,800x1,485mm |
ホイールベース[mm] | 2,635mm |
トレッド前/後[mm] | 1,535/1,510mm |
車両重量[kg] | 1,380kg |
総排気量[cc] | 1,394cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 140〔103〕/4,500-6,000rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 250〔25.5〕/1,500-3,500rpm |
ミッション | 7速DSG |
タイヤサイズ | 225/45R17 |
燃費 | JC08モード 19.5km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 3,225,000円 |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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