三菱eKワゴン/eKカスタム新車試乗評価の目次
三菱&日産の合作となる初の軽自動車がeKワゴン
三菱が日産との合弁会社であるNMKVを通じて、新型三菱ekワゴンを開発した。三菱と日産の知恵を出し合うことで、より良いクルマ作りを目指したモデルである。商品企画は合同で行い、開発の実務は三菱が担当し、生産も三菱の水島工場で行われる。
新型三菱ekワゴンはデザインに特徴があり、快適性と運転のしやすさを確保して、軽自動車のハイトワゴンとして最も優れた29.2km/Lの燃費を達成したというのがポイントである。
今回のモデルは、軽自動車市場の中のボリュームゾーンを狙うということで、従来の全高を抑えたタイプから、ワゴンRやムーヴなどと同じハイト系のモデルに変わった。
なお、来年早々にはNMKVからタントやスペーシア、N BOXなどと同じ超ハイト系の軽自動車を投入することが明らかにされている。そんな先の話までするのは、ほかの車種に流れるユーザーを少しでも食い止めたいということのようだ。
これまでの三菱ekワゴンは、タワーパーキングにも入ることをひとつの特徴としてきたが、今回のモデルではそれができなくなった。タワーパーキングに入ることは、さほど大きなセールスポイントではなく、むしろ需要の中心であるハイト系を狙ったほうが良いとの考えだ。
外観デザインは、標準系のekワゴンと、エアロパーツなどでスポーティな外観を与えられたekカスタムの設定がある。三菱では従来、スポーツ系のモデルについてはekスポーツとしてきたのだが、各社がカスタムの名前を使っているため、それに合わせたようだ。
ekワゴンとekカスタムのデザインはそれなりに差別化されていて、フロント回りのデザインなどは大きく異なっている。いずれもボディサイドに明確なキャラクターラインが設けられていて、軽自動車としては存在感のあるデザインとされている。
インテリアはブラックのパネルを採用したオーディオなどが印象的で、これも軽自動車の中では高い質感を表現したものとなっている。
燃費重視? ワゴンRと比較すると、やや遅いeKワゴン。
まずは、ekワゴンに試乗した。自然吸気エンジン搭載車だ。36kW/56N・mの実力で、ワゴンRの38kW/63N・mやムーヴの38kW/60N・mに比べると心持ち控えめな性能とされている。微妙な違いだが、走りに決定的な影響を与えるほどの違いではない。
ただ、同じトランスミッションを搭載するワゴンRがけっこう素早い出足を感じさせるのに比べると、ekワゴンはやや遅い感じがあった。これは車両重量が少し重くなることや、最終減速比などが影響しているのだろう。
特に発進加速時に、なるべくECOランプを点灯させて走らせようとすると、交通の流れから置いて行かれる感じになる。流れに合わせていこうとするとECOランプが消えて燃費の悪い状態を示したりする。このあたりが難しいところだ。
走り出してしまえば、ECOランプを維持しながら滑らかに流れに乗って行けるのだが、発進時にはもうひとつ走りが鈍いという印象を受けた。セッティングが燃費重視過ぎるような印象を受けた。
今回の試乗では、燃費の計測をしていないが、ついついアクセルを踏みすぎになるような走り方をしていると、実用燃費は悪くなる方向に向かう。このあたりが微妙なところだ。
静粛性などは軽自動車として平均レベルというか、普通にうるさい。最近の軽自動車は軽量化を追求するあまり防音材をケチったりしてうるさくなる傾向があるが、ekワゴンもそうしたクルマといえる。
乗り心地はかなり柔らかめで、快適といえばその通りだが、コーナーなどでは普通にロールして傾いていく。もう少ししっかりした落ち着きが欲しいと思う。
柔らかめの足回りとなっているeKカスタム
ekカスタムは、ターボエンジンモデルに試乗した。ターボ車になると走りの雰囲気が一変する。47kW/98N・mの動力性能はほかの競合車とほぼ同じレベル。ターボに関してはパワーは上限が決まっていることもある。
ターボ車は自然吸気エンジンに比べるとトルクに余裕があり、気持ちの良い加速を見せる。アクセルワークに応じて素直に加速が伸びていく感じがあるのが良い。
ターボ車は、タイヤが1サイズ大きい15インチを履いていて、これも走りを良くする要素になっている。ただ、15インチタイヤを履くと、最小回転半径が4.4mから4.7mになるのはネガティブな要素。軽自動車なら4.4mに程度にとどめたい。
足回りは、やや乗り心地が硬くなって、しっかりした感じの走りを示すようになるが、それでもまだ柔らかめの印象が残る。これくらいの硬さを標準にして、ターボ車にはもっとロールを抑えた足回りにしたほうが良い。
安全装備と価格に物足りなさを感じる
ekワゴンには、ルームミラー内に表示されるリヤビューモニターを備えたり、あるいはブラックのタッチパネル式のオーディオを備えるなど、充実した装備があるが、安全装備に関しては明らかに物足りない。
登録車ではすでに法規になって装着が義務付けられている横滑り防止装置のASCがターボ車にだけオプション設定で、しかも8月からでないと対応できないことになっている。
横滑り防止装置は軽自動車でもN BOXにはすでに標準装備されているし、ムーヴではこれを上回る追突回避支援ブレーキまで装着される時代だというのに、ekワゴン明らかに遅れている状態だ。
合弁会社のMNKVが設立されてから2年ほどしか経過しておらず、その間に開発を進めたために間に合わなかったなどの事情があるようだが、いずれは軽自動車にも装着も義務付けられる安全装備であり、早期の標準装着が望まれる。
また、ekワゴン価格設定は特に割安感を感じさせるものではない。日産の取引先を合わせてより安い部品の調達を図ったはずだが、それ分がユーザーに還元されていないのは残念だ。
三菱eKワゴン/eKカスタム価格、燃費、スペック等
三菱eKワゴン/eKカスタム価格
●eKワゴン
E 2WD 1,050,000円
M 2WD 1,125,000円
4WD 1,220,000円
G 2WD 1,240,000円
4WD 1,335,000円
●eKカスタム
M 2WD 1,269,000円
G 2WD 1,368,000円
4WD 1,463,000円
T 2WD 1,430,000円
4WD 1,546,000円
代表グレード | 三菱eKワゴンG |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3,395×1,475×1,620mm |
ホイールベース[mm] | 2,430mm |
トレッド前/後[mm] | 1,300/1,290mm |
車両重量[kg] | 830kg |
総排気量[cc] | 659cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 49〔36〕/6,500rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 56〔5.7〕/5,500rpm |
ミッション | CVT |
タイヤサイズ | 155/65R14 |
燃費 | JC08モード 29.2km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 1,240,000 |
燃料 | レギュラーガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 三菱自動車/編集部 |
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