■前回の改良から、また1年も待たずに改良され進化したマツダCX-5
マツダCX-5 がデビューしたのは、2012年2月。その後、マツダCX-5は非常に好調に売れ、業績回復の要因となったほど。また、最近で続々と新型SUVが登場しているように、SUV 人気の火付け役ともいえるモデルでもある。
まぁ、一般的に売れているクルマは、マイナーチェンジまで改良などを行わないのがセオリーでもある。改良を施せば、車両の改良コストだけでなく、カタログの改編や営業マン資料の改訂などなど、車両以外のコストもドンドンと積み上がる。事実、売れに売れたトヨタアクア などは、マイナーチェンジまで一切なにもしない状況だった。
ところがCX-5は、2012年12月にデビューから1年も待たず一部改良を施した。キックダウンスイッチの追加や2.0Lガソリンエンジンの更なる燃費アップが行われ、エコカー減税75%に対応し、顧客の減税メリットをアップさせている。すでに、CX-5を購入済みの顧客にとっては、これくらい最初からやってから出してよ! と、思うのは当然だ。しかし、技術は日々進歩していて、発売直後のものより進化させたより良いものを顧客に届けるというのも、メーカーの姿勢として正しいだろう。
そして、今度は前回の一部改良から1年も経たずに、また一部改良が施された。今回の改良は、なかなか多岐にわたり、実質のマイナーチェンジと言ってもいいくらいだ。まず、2.5Lガソリンエンジン車が投入され、2.0LはFFのみとなりエントリーグレードとなった。
さらに、低速走行時の衝突被害軽減自動ブレーキ「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」を全車標準装備。新仕様のリアダンパーの採用によって、上質な乗り心地を実現。内装ではATシフトレバー周りのデザインを一新し高級感をアップしている。
そんなマイナーチェンジ並みの変更を受けた、マツダCX-5の2.5Lガソリンエンジン車に試乗した。デビュー直後に試乗した印象では、2.0LのFFならこれで十分といったパフォーマンス。ただ、4WDはちょっとかったるいイメージだった。FF車は1440kgで、4WDは1510kgと70㎏も重いのだから2.0Lでは、軽快感が無いのは当然だ。当初から、CX-5には2.5Lの方が合っているようにも思えたが、ライバルのフォレスター やエクストレイル を考えると、価格的にもどうしても2.0Lという排気量が必要だったのかもしれないし、先にアテンザ に2.5Lを搭載しないといけないなどの制約もあったのだろう。
この2.5LのスペックはFFで188ps&250Nm、4WD が184ps&245Nmとなっていて余裕のある走りを可能としている。2.0Lとの違いは明確で、とくにFF車は同じように加速するときでもアクセルの踏み込み量が少なくて済む。高回転まで伸びていくタイプのエンジンではないが、実用域での使いやすさはピカイチだ。
最近では、ダウンサイジングターボエンジンが主流。CX-5の250Nm程度のトルクだと、1.4Lくらいのターボエンジンと同等だ。違うのは、リニアなフィーリング。ターボエンジンは、どうしてもアクセルの踏み込みに対してターボラグを感じる傾向が強い。低回転で最大トルクを出すターボエンジンでさえも、アクセルの踏み込みに対してリニア感はCX-5の自然吸気エンジンに対して鈍い印象だ。アクセル操作に対するリニアな加速フィーリングは、なかなかのもので気持ちがよい。
これは、CX-5の美点で高く評価できる部分だ。このフィーリングの良さは、アクセルをドカンと踏む人には分かりにくいので、CX-5を試乗する際は、ジワァーとアクセルを踏むようにして乗るといいだろう。右足の操作と同じように、加速していくクルマとの一体感を味わうことができる。
もちろん、このフィーリングはエンジンだけではなく、ロックアップ領域の大きいダイレクト感のある6ATの貢献も大きい。
燃費に関しては、2.5LのFFは15.2㎞/Lという良好な数値を誇るが残念ながら、CX-5で唯一エコカー減税は50%に止まる。4WD車は14.6㎞/Lだが75%減税だ。
問題は、CX-5の購入を考えるとき2.0Lと2.5Lどちらを選ぶかだ。価格的には20Sに25S並みの装備を装着し、25Sは4WDなのでこの分をプラスすると、ほぼ同等の価格になる。4WDはいらないけれど、2.5Lがいいという人は、豪華装備の25S Lパッケージを選ぶしかなく、このグレード設定はあまりに不親切だ。20Sとの価格バランスが取れないのなら、意味のない見せかけの廉価グレード20Cを無くし20Sの価格を下げればいい。
さらに、この25S Lパッケージの価格は、より走りと燃費経済性に富むクリーンディーゼル XDのエントリーグレードが狙える価格となり、どこかで割り切らなくてはならない選択に迫られる。420Nmという大トルクと、FFで18.6㎞/Lという低燃費を誇り、リッター当り20円位安い軽油を使うXDは、25S Lパッケージの豪華装備と安全装備を外してでも手に入れたくなるほど魅力的でもある。
ここが悩ましい。個人的には、燃費と燃料による経済性と大トルクがもたらす走行性能を考えるとクリーンディーゼルをお勧めしたい。ただ、ディーゼル独特の車外音の大きさや、車内でもわずかに聞こえるディーゼル音や振動が嫌だという人もいるだろう。このあたりは、ジックリと比較試乗して、自分の好みに合うものを選ぶといいだろう。
■「ドン」という入力が、トンという優しい入力になって乗り心地が向上
今回の一部改良では、リヤダンパーが変更された。簡単にまとめると、ドンというリヤサスの入力がトンというマイルドな感じになり、乗り心地が向上している。マツダCX-5は、走りにこだわったSUVということもあり、やや硬めの足回りだ。19インチホイール装着モデルは、立派にタイヤのゴツゴツ感を伝えてきた。そのテイストも、新リヤダンパーの効果でマイルドになっている。
新リヤダンパーは、サクションバルブに特殊なスプリング構造をもつサクションスプリングを採用。ダンパーの働きを積極的にコントロールできるようになった。この技術で、減衰力のピークを下げ乗り心地を上げながら、素早く振動を抑えるとい背反する性能を両立している。
一般的に乗り心地を上げると、スポーティさが無くなる傾向になるのだが、CX-5らしいクルマの一体感に大きな変化は感じられない。リヤサスは乗り心地を確保しながら、しっかりと路面を捕まえている印象が強い。スポーティさはそのままに、乗り心地だけが上質になった感じだ。
こういった改良は、人とクルマの関係を徹底的に科学していることから生まれているようだ。マツダは、いつも人馬一体をアピールする。人間がクルマと係わる時、人は何を不快に、また気持ちよく感じるかを分析し数値化する。そのフィードバックをクルマに生かす。今回のサスペンション改良も、不快に感じ疲労を与える振動周波数を解析した結果から誕生したものだ。どこまでもCX-5なら、快適に気持ちよく走って行ける、そんなクルマを目指している。
■繰り返し早期に行われる改良は、すでに購入済みの顧客に対する裏切りなのか?
ただ、デビュー当時直後にマツダCX-5を買ったオーナーの気持ちになると、度重なるCX-5の一部改良は気分が悪くなるかもしれない。せっかく買ったのに、簡単に買える消費財ではないので、2年を待たずにこれだけ進化されたら自分のクルマは、ドンドンと古いクルマになったいくように感じてしまう。悪く言えば、中途半端な商品をマーケットに送り出すな、とも感じるだろう。
早期のクルマの進化は、顧客への裏切りなのか? 当然、マツダも承知の上。それでも、より良いモノのできるだけ早くマーケットに送り出す。それは、作りっ放しにはしないという気概の表れでもある。CX-5がモデル末期になっても、自社の商品がマーケットの中で光り続けること。それは、初期に買った顧客に古臭くなったと感じさせず、プライドを満たすことにもなる。
輸入車でも一部のクルマは、モデル末期になっても繰り返し改良が施され進化しているクルマが稀にある。どちらかというと、そのメーカーの看板車的な車種が多い。結果的に、モデル末期になっても、新型のライバル車に比べても大きく劣る部分がないので、必要以上の安売りせずに売れている。ブランド力というのは、そうやってゆっくりと醸成せれていくと思う。マツダCX-5は、そんなブランドになりたいのだと感じた。
■マツダCX-5価格、概要
■「マツダCX-5」の商品改良の概要
・2.5Lガソリンエンジン搭載機種を追加
高効率2.5L直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.5」を設定
滑らかでパワフルな走りと優れた燃費性能を両立
2WD: 最高出力138kW(188PS)/5,700rpm、最大トルク250Nm(25.5kgf・m)/3,250rpm
4WD: 最高出力135kW(184PS)/5,700rpm、最大トルク245Nm(25.0kgf・m)/4,000rpm
JC08モード燃費: 15.2km/L(2WD)、14.6km/L(4WD)
ガソリンエンジン車は、25S Lパッケージ(2WD)を除く全車がエコカー減税(環境対応車普及促進税制)の75%減税の対象
・走りと内外装の質感を向上
上質かつ洗練された乗り心地を実現する、新構造のリアダンパーを装備
ATシフトレバー、およびシフトベースデザインの変更、シフトブーツの装備による質感の向上
・ボディカラーを変更
2つの新色「ディープクリスタルブルーマイカ」「ブルーリフレックスマイカ」を採用し、全8色に変更
ガソリンエンジン車「20S」「25S」に19インチアルミホイールを新たにオプション設定(「Lパッケージ」に標準装備)
アルミホイールの塗装をより深みのあるシルバー色に変更(「20C」を除く全車)
・安全装備の充実
「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」を全車に標準装備
「ハイビーム・コントロール・システム(HBC)」と「車線逸脱警報システム(LDWS)」をオプション設定(「25S Lパッケージ」「XD Lパッケージ」)
後方からの接近車両を知らせる「リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)」の性能を向上
作動する速度を、約30km/h以上から約15km/h以上に変更し幅広い速度域に対応
■マツダCX-5価格
20C SKYACTIV-G2.0 2WD 2,079,000円
20S SKYACTIV-G2.0 2WD 2,226,000円
25S SKYACTIV-G2.5 4WD 2,530,500円
25SLパッケージ SKYACTIV-G2.5 2WD 2,604,000円
4WD 2,814,000円
XD SKYACTIV-D2.2 2WD 2,604,000円
4WD 2,814,000円
XD Lパッケージ SKYACTIV-D2.2 2WD 2,982,000円
4WD 3,192,000円
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