4年半ぶりにのモデルチェンジとなり新型となったクライスラー300。先代の300Cは、大きなボディにイカツイ顔の組み合わせで、多くのファンを作りだした。新型となったクライスラー300は、先代モデルのプラットフォームをキャリーオーバー。3050mmというホイールベースはそのままだが、ボディは少し大きくなり全長5,070×全幅1,905×全高1,495mmという、さらに巨大なボディサイズとなった。

先代モデルもそうだったが、クライスラーの日本マーケットに対する価格戦略は十分に評価したい。エントリーモデルとなる300リミテッドの価格は398万円。全長5,070mmという巨大なボディという車種の中では、最も安いクルマといえる。安いからと言って、価格相応では意味が無い。価格以上のバリューがあってこそ、初めて評価される。そういう意味でもクライスラー300は、十分に価値ある１台に仕上がっている。

スタイルは先代のイカツイ系から、イッキに変更された。アメリカ伝統の高級セダン的なドレッシーなスタイルとなった。先代モデルは、やり過ぎと感じていたアメ車ファンにとっては好印象となる。また、上品なフォーマルさもあるので、カンパニーカーとしての役割も十分に果たすだろう。

インテリアは、上質なラグジュアリー感を上手に表現。適度な落ち着いた雰囲気の中に、サテンクロームを控えめに使っているところなど、これが398万円から買えるクルマなのかとさえ思わせ満足度は高い。

鮮やかなホワイトとブルーを使ったメーター類も見やすく上品だ。奇をてらうこと無くシンプルにまとめ上げながらも、シッカリと個性を発揮するデザイン力はさすがだ。

■本音の新車評価はCORISM

　搭載されるエンジンは、V6の3.6Lペンタスターエンジン。210kwのパワーと340Nmのトルクを発揮し、後輪を駆動する。このエンジンは、従来型の3.5Lエンジンよりも15％アップしながら、燃費は10％向上させている。

とはいえ、燃費はJC08モードで9.2km/L。エンジンパフォーマンスと燃費性能は、さすがに最新の欧州車などと比べると分が悪く、エンジンや燃費では選べないクルマだ。せめて、アイドリングストップ機能くらいは付けて欲しいところだ。レギュラーガソリン仕様というのは、少ない評価ポイントのひとつだ。

実際に走りだすと、ZF製8速ATが滑らかに加速。とくに、パワフルな感はない。シフトノブは、小さく控えめでオシャレなEシフト。いわゆるバイワイヤ式だ。8速になり、ギヤ比も高くなったため高速でのエンジン回転は低く静粛性も高い。

意外だったのが、乗り味。ハンドルをスイッと早めに切る。全長5m超のボディが、驚くほど普通に向きを変える。アメ車はダルという先入観が、驚き度をアップさせるのだが、なかなかの反応。ボディの剛性感を含め、大きなボディながら、シッカリとした安心かのあるフィーリングだ。メルセデス・ベンツEクラスのプラットフォームをベースにしたとはいえ、先々代のモデルだけに期待はしていなかっただけに評価はまずまず。古いプラットフォームだからといって、侮ってはダメで、クライスラーも足回りを進化・熟成させていた。

300Cラグジュアリーに装着されている245/45ZR20というタイヤを見た時は、やっぱりホイールは大きいほどカッコ良いと改めて感じさせてくらい大型のボディにはマッチしていた。ただ、ホイールが大きいと、多くのクルマが大きな入力が入るとドタバタする傾向がある。クライスラー300も、やっぱり同じだった。ダラっと流している位なら、それほど強く感じることがないが、ある程度のスピードになると、やはり大きな凸凹では多少ドタバタ感がある。個人的には、許容範囲。なぜかというと、やはり20インチホイールの迫力は譲れないものがある。あの大インパクトなフォルムは、アメ車好きでなくてもグッとくるものはあるだろう。そうを考えると、これくらい我慢しなくてはという気持ちになる。

さて、このクライスラー300は、どんな人に合うのか？ まず、燃費などガソリン代を気にする人はNG。398万円という価格で、欧州製の輸入車を比べると、メルセデス・ベンツやBMW3シリーズなどになる。燃費性能など、クルマの完成度に関しては、欧州車が上だ。しかし、クライスラー300には、独自の世界観がある。他に迎合すること嫌い、クライスラー300の世界観に共感できる人なら、きっと満足のいく選択になるだろう。

＜クライスラー・300価格＞
・300 リミテッド　3,980,000円
・300C ラグジュアリー　5,380,000円