トヨタ単独開発で生まれた久しぶりのスポーツカーがGRヤリス
2020年1月、東京オートサロンで世界初公開されたトヨタ GRヤリスが発売された。世界ラリー選手権で戦うためにWRカーとして、トミー・マキネン・レーシングの協力を得て開発が進められたモデルだ。
このクルマは、トヨタにとって久々のスポーツカーである。現在のトヨタのラインナップの中には、86やスープラというスポーツカーがあるが、いずれもほかのメーカーとの協力で生み出されたもの。
言い方を変えると、ほかのメーカーが主体で開発したスポーツカーのトヨタブランド車である。トヨタが自社で開発したスポーツカーを発売するのは、実に久しぶりのことなのだ。
ヤリスとは別物!?
トヨタ GRヤリスは、ヤリスをベースに開発されたクルマだが、実際には全くの別物と言っていい。
ボディサイズは、全長3995mm×全幅1805mm×全高1455mmで、ホイールベースは2560mmだ。WRCの車両規定に合わせ、全長4mを抑えるとともに、大きなリヤウイングを装着して高さが規定内に収まるような全高とされている。
外観デザインも標準車のヤリスとは違う。GRヤリスのエクステリアは見るからに精悍なものだ。ヤリスを単純に3ドア化したものではないことはひと目で分かるだろう。WRCで戦うための要素をしっかりと盛り込んだデザインといっていい。
正面から見ると、大きく口を開けたラジエターグリルが迫力を感じさせ、縦横比がワイドトレッドであることを示している。CFRP製のルーフやアルミのドアやボンネットなど、各部に高価な素材が使われている。
空力特性に配慮して流れるようなラインを描き、アルミ製ボンネットとドアなどを採用していて、専用に設計されたマルチマテリアルのボディである。
インテリアも専用の仕様が満載されている。小径の本革巻きステアリングホイールやメーターが専用のものとなるほか、横方向のホールド性を高めたスポーツシートも専用のものだ。
RZのシート表皮はウルトラスウェード+合成レザーが使われ、ヘッドレストにはGRのロゴが入られている。また、シフトレバー前には前後輪の駆動力配分を調整するドライブモードスイッチが配置され、グレードによってJBL製オーディオなどの快適装備や安全装備のトヨタセーフティセンスなども標準で装備されている。
普段使いでも楽しめるRS
GRヤリスには、2種類のパワートレーンが搭載されている。ベースグレードとなるRSに搭載されるのは、TNGAの設計思想に基づいて開発された直列3気筒1.5LのダイナミックフォースエンジンのM15A-FKS型だ。自然吸気仕様で88kW(120標準)/600rpm、145N・m/4800~5200rpmの動力性能を発生する。
組み合わされるトランスミッションは、ダイレクトシフトCVTで、発進用ギヤを追加することで低速から高速域まで力強くダイレクトな走りを実現する。マニュアル感覚の操作が楽しめる10速シーケンシャルシフトマチックのパドルシフトを装備する。
RSの駆動方式はFFで、WLTCモードで18.2km/Lの低燃費を実現する一方、スポーツ走行はもちろんのこと、日常の生活シーンでも安全な速度域でパワーを使い切れる楽しさや、意のままに車両をコントロールする「気持ち良さ」を味わえるクルマに仕上げられている。
GRヤリスの魅力を凝縮した直3 1.6 Lターボは272ps!
本格的なスポーツモデルとなるRZ/RZ“High performance”に搭載されるのは、新開発の小型軽量ハイパワーを発生する直列3気筒1.6LのインタークーラーターボエンジンのG16E-GTS型だ。
動力性能は200kW(272ps)/6500rpm、370N・m/3000~4600rpmを発生する。RZ“High performance”には冷却効率の高い冷却スプレー機能付き空冷インタークーラーを標準装備。組み合わされるトランスミッションは、6速マニュアルのiMTだ。
RZ/RZ“High performance”の駆動方式は4WDで、多板クラッチによる前後駆動力可変システムを採用した新開発スポーツ4WDシステムの“GR-FOUR ”を採用した。
さらにRZ“High performance”には、前後のディファレンシャルにトルセンLSDを標準装備している。
足回りはRZ“High performance”にBBS製鍛造アルミホイールとミシュランのパイロットスポーツ4Sタイヤを標準装備。RZにはエンケイ製の鋳造アルミホイールとダンロップSPスポーツMAXXの組み合わせとなる。
基本プラットフォームはフロントがヤリスと同じGA-B、リヤ回りはワイドトレッド化するためもあって格上のGA-Cを組み合わせて採用している。
中身はWRCのレギュレーションに適合させるため、専用に設計されたものだ。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式で、リヤはダブルウイッシュボーン式を採用した。
GRヤリスのグレードは、ほかにラリーなどの競技に参戦するためのベース車両となるRCが設定されている。搭載エンジンはRZ系と同じ1.6Lのインタークーラー付きターボ仕様で、走りに必要な装備以外の快適装備などを極力省略したシンプルな仕様とされている。
トヨタ GRヤリスのグレード選び
RS 265万円
RC 330万円
RZ 396万円
RZ“High performance” 456万円
トヨタ GRヤリスの価格は、なかなかリーズナブルだ。CFPR製のルーフやアルミのボンネットやドアなど、高額な素材が使われている。しかも、多くのパーツがGRヤリス専用といえるもの。これだけ、専用開発された部品などが装備され、この価格はリーズナブルというよりバーゲンプライスと言ってもいいだろう。高効率による高収益を重視するトヨタ車の中で、このGRヤリスは異質な存在。トヨタの通常モデルから見れば、非常識とも言える特別なモデルだ。
トヨタ GRヤリスのグレード選びは、予算が重要だ。やはり、多少無理してでもトップグレードとなるRZ“High performance”がお勧め。GRヤリスの魅力を凝縮したモデルだ。リセールバリューもかなり高値を維持することが予想できる。
購入後カスタマイズしたり、モータースポーツに出たりというのであれば、シンプルな仕様のRCがよい。
エントリーグレードのRSは、RCとRZと比べると少々選びにくい。日々の生活で適度のスポーティさを求めるのであれば十分。ただ、RCとRZに比べると、やはり刺激が足りないと感じるだろう。
トヨタ GRヤリス価格
・RS Direct Shift-CVT FF 2,650,000円
・RC 6速マニュアルトランスミッション(iMT) スポーツ4WDシステム“GR-FOUR” 3,300,000円
・RZ 6速マニュアルトランスミッション(iMT) スポーツ4WDシステム“GR-FOUR” 3,960,000円
・RZ“High performance” 6速マニュアルトランスミッション(iMT) スポーツ4WDシステム“GR-FOUR” 4,560,000円
トヨタ GRヤリスのボディサイズ、出力、燃費などスペック
代表グレード:RZ High-performance
・全長×全幅×全高(mm) 3,995×1,805×1,455
・ホイールベース(mm) 2,560
・トレッド<フロント / リヤ>(mm) 1,535/1,565
・最低地上高(社内測定値)(mm) 130
・乗車定員(人) 4
・車両重量(kg) 1,280
・WLTCモード燃料 km/L 13.6
・エンジン 型式 G16E-GTS
・総排気量(cc) 1,618
・エンジン種類 直列3気筒インタークーラーターボ
・使用燃料 無鉛プレミアムガソリン
・最高出力<ネット>(kW[PS])/r.p.m. 200(272)/ 6,500
・最大トルク<ネット>(N・m[kgf・m])/r.p.m. 370(37.7)/3,000〜4,600
・燃料タンク容量(L) 50
・トランスミッション iMT(6速マニュアル)
・サスペンション<フロント / リヤ> ストラット式コイルスプリング / ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング
・駆動方式 4輪駆動方式
・タイヤサイズ 225/40ZR18
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