大幅遅刻して日本に到着した新型ゴルフ8
ヨーロッパと日本だけでなく、世界中に多くのファンを持っているのがフォルクスワーゲン(VW)の主力ファミリーカーであるゴルフだ。
主役を務める5ドアのハッチバックは、2019年秋に8代目を発表した。だが、日本仕様は、新型コロナウイルスの影響を受けたことに加え、売りの1つであるデジタル装備の信頼性を高めることに時間を費やし、発表と発売を21年6月15日まで遅らせている。
ドイツ本国でのデビューから1年半も遅れて、8代目ゴルフは日本に上陸した。不満を述べるファンも少なくないだろう。だが、大幅に遅刻して日本にやってきたフォルクスワーゲンのエースは、期待に違わぬ仕上がりを見せてくれた。
日本でも使いやすいボディサイズとなった新型ゴルフ8
新型ゴルフ8のエクステリアは、誰が見てもゴルフと分かる明快なデザインだ。シャープでキレのよいラインとハリのある面構成で、伝統とも言える太いCピラーも受け継いでいる。
高い精度の組み付けと相まって空気抵抗係数は、先代のCd=0.30からCd=0.275へと大きく向上した。
7代目ゴルフで肥大化したので、8代目ゴルフも心配したが、ボディサイズはほとんど変わっていない。というより、日本でも運転しやすいサイズに生まれ変わっている。
全長は30㎜伸びたが、カローラスポーツやマツダ3より短い4295㎜だ。ホイールベースは2620㎜と、先代より15㎜短くなった。また、全幅も1790㎜と、10㎜狭められている。全高は5㎜低くなり、1475㎜となった。
だから、見た目の伸びやかと躍動感は増した。ちょっとEVのID.3と似た雰囲気のフロントマスクに組み合わせるヘッドライトとリアコンビランプはLEDで、1.5LモデルはターンシグナルもLEDだ。
慣れが必要な操作系。音声操作システムが欲しい
新型ゴルフ8のインテリアは、水平基調のダッシュボードにデジタルコクピットを採用。先代と比べるとコストダウンを図っているが、同じCセグメントの日本車と比べると質感は一歩上の印象を受ける。
視認性に優れたヘッドアップディスプレイも、オプションで用意された。デジタル化は分かりやすい。ドライバーの前に10.25インチの液晶パネルが、その左側には10インチのタッチ式ディプレイを組み込んだインフォテインメントシステムを並べた。
このディスプレイの下には、エアコンなどの操作パネルが並んでいる。温度設定は指1本で、シートヒーターは指2本で操作する。
だが、最初は戸惑った。ライトや地図の操作もタッチパネルをスライドさせるが、これは慣れが必要だ。うまく操作できないとイラつくから、メルセデス・ベンツ、BMWなどのように、ドライバーが話しかけて起動する音声認識システムを早く導入してほしいところだ。ゴルフもドイツ仕様には設定しているのだから、採用は難しくないと思う。
キャビンは先代と同様に、必要にして十分な広さを確保している。モデルチェンジのたびにAピラーの傾斜は強くなっているが、窮屈さは感じない。
ホールド性に優れたRラインのシート。優れた居住性
フロントシートは大ぶりで、しっかりとした造りだ。ホールド性に優れ、ファブリックの表皮も手触りがいい。もちろん、専用のスポーツシートをおごるRラインの方がサポート性、ホールド性ともに良好だが、ワインディングロードの速い走りにも耐えられる。ロングドライブでも快適だ。
リアシートもたっぷりとしたサイズで、センターアームレストも重宝する。きちんとした姿勢で座ることになるが、頭上と膝もとには窮屈ではない空間が残されていた。
ラゲッジルームは先代と同じ380Lを確保し、4名乗車でも荷物を積み残さない。
48ボルトのマイルドハイブリッドシステムを搭載した新型ゴルフ8
新型ゴルフ8のパワートレインは、2機種を用意している。
最大のニュースは、電動化だ。フォルクスワーゲンとして初となる48ボルトのマイルドハイブリッドシステムを採用している。ブレーキング時のエネルギー回生能力が高いことに加え、燃費を高めるためにエンジンを停止した状態でコースティング(慣性走行)も行う。
コストパフォーマンスの高いeTSIのアクティブとアクティブベーシックが積むのは、999ccの直列3気筒DOHCターボだ。
上級に位置するeTSIのRラインとスタイルは、1497ccの直列4気筒DOHCターボを搭載する。トランスミッションは、どちらもデュアルクラッチを備えた7速DSG((2ペダル・マニュアル)を採用した。
とにかく、コースティングして燃費を向上を狙うパワーユニット
最初にステアリングを握ったのは、1.0Lの3気筒DOHCターボを積むeTSIアクティブだ。最高出力は110ps(81kW)/5500rpm、最大トルクは2.0Lエンジン並みの20.4kg-m(200N・m)/1500〜3500rpmと、なかなかのパフォーマンスを秘めている。
今までの1.0Lエンジンはターボが過給するまでパンチ不足で、もっさりとした加速フィールだった。だが、新型ゴルフは電気モーターの後押しによって発進直後から軽やかな加速を披露する。
急勾配の坂道や3名以上の乗車など、限られたシーンを除けば1.0Lであることを感じさせることはないだろう。
発進加速よりも実力の高さが際立っていたのは、追い越し加速だ。平坦路という限定になるが、力強いパンチ力と気持ちいい伸びを見せた。クルージング時の静粛性の高さに加え、3気筒エンジン特有の振動も上手に抑え込んでいる。
驚かされたのは、エコ走行を意識してアクセルを緩めると、素早くコースティングに移ることだ。赤信号を確認してアクセルを閉じると、早めにエンジンを停止させるし、高速道路でも下り坂でアクセルを閉じると積極的にコースティングに入る。
先代は、アイドリングストップから再始動したときのギクシャク感に閉口したが、この弱点も克服した。エコ走行は得意だ。
郊外の道ではWLTCモード燃費の18.6km/Lを難なく超えた。先入観なしに乗れば静粛性の高さにも驚かされるはずだ。
本命は1.5Lターボ?
Rラインに積まれている1.5Lの直列4気筒ターボは最高出力150ps(110kW)/5000〜6000rpm、最大トルク25.5kg-m(250N・m)/1500〜3500rpmを発生する。
こちらは、発進直後から痛快な加速を見せた。1.0Lエンジンより低回転域のトルクは豊かだ。モーターの存在感は、排気量が1.0Lと小さい方が優っているような印象を受けた。だが、発進加速に加え、再加速でも鋭い瞬発力を見せ、気持ちよくスピードを乗せていくのは1.5Lだ。
1.5Lエンジンは、低負荷時に2気筒を休止するアクティブシリンダーマネージメント機構を装備している。クルージング時に2気筒になるが、ほとんど気がつかないくらい滑らかだ。うまく使えば、燃費の悪化を防ぐことができるだろう。
デュアルクラッチの7速DSGは、洗練度を大幅に高めた。変速レスポンスが鋭いし、マニュアルセレクトすればさらに軽やかな走りを引き出すことが可能だ。
上質な乗り心地となった1.0Lターボ車
新型ゴルフ8のプラットフォームは「MQB」を受け継いでいるが、大幅に手を加えている。サスペンションはフロントがストラット、リアは1.0Lモデルがトーションビーム、1.5Lモデルは4リンク式のマルチリンクだ。
タイヤも1.0Lモデルは205/55R16、1.5Lモデルはインチアップして225/45R17を履く。また、1.5Lモデルはフロントのサブフレームもアルミ製とした。
ゴルフ7の最終モデルは熟成の域に達していたから、最新のゴルフ8といえどもゴルフ7を凌駕するのは簡単ではない。
実際にステアリングを握っても、ハンドリングだけを見れば実力は互角か、ちょっと上と言えるだろう。1.0Lモデルは、冴えたフットワークより上質な乗り心地が光っている。
ストローク感のあるサスペンションは、優れた路面追従性を披露し、荒れた路面でもショックの吸収が上手だ。もちろん、ドイツ車らしいシャキッとしたハンドリングは受け継がれている。
また、心もとなかった運転支援システムも大幅に洗練度を高めた。アダプティブクルーズコントロールとレーンキープの精度は高いし、トラベルアシストも便利な装備だ。
ゴルフらしいゴルフな1.5Lターボ車
1.5Lエンジンを積み、17インチタイヤを履くeTSIのRラインは、足もパワーステアリングも専用セッティングとしている。だから、ワインディングロードに持ち込んでも意のままの気持ちいい走りを堪能できた。
タイトコーナーでもロールを上手に抑え込み、狙ったラインに乗せやすい。リアの踏ん張りと懐の深さも1.0Lモデルより上のレベルだ。
荒れた路面を走ったときは、ちょっと硬めと感じることもある。だが、ワインディングロードを中心としたステージでは、操る楽しさは格別だった。
ゴルフらしいゴルフが、このRラインだ。価格はそれなりに張るが、魅力は大きい。もちろん、1.0Lモデルもトータル性能とコストパフォーマンスは高いと感じるが、乗り比べると1.5Lモデルが欲しくなる。
フォルクスワーゲン ゴルフ8価格
・ゴルフeTSI Active Basic 1.0 eTSI 2,916,000円
・ゴルフeTSI Active 1.0 eTSI 3,125,000円
・ゴルフeTSI Style 1.5 eTSI 3,705,000円
・ゴルフeTSI R-Line 1.5 eTSI 3,755,000円
フォルクスワーゲン ゴルフ8燃費、ボディサイズなどスペック
ボディーサイズ 全長4295×全幅1790×全高1475mm
ホイールベース 2620mm
トレッド前/後 1535/1505
車重 1360kg
エンジン型式 DFY型 直4 DOHC 16バルブ ターボ
排気量 1497㏄
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力 150ps(110kW)/5000-6000rpm
エンジン最大トルク 250N・m(25.5kgf・m)/1500-3500rpm
モーター最高出力 13ps(9.4kW)
モーター最大トルク:62N・m(6.3kgf・m)
トランスミッション 7速AT(7速DSG)
燃費 17.3km/L(WLTCモード)
駆動方式 FF(前輪駆動)
サスペンション前/後 マクファーソンストラット/4リンク
タイヤサイズ前後 225/45R17 91W
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