電動スーパーチャージャー+ターボ+ISGと、多くの補器類を装備した20年振りの直6エンジン
誰もが知る高級自動車メーカーであるメルセデス・ベンツは、保守的な自動車メーカーのイメージだ。だが、挑戦を続けるメーカーの顔もある。
長くF1レースに参戦し、2017年は20戦中優勝12回、ポールポジション15回と圧倒的な強さを示した。また、最近はAMGのスポーツカーのイメージを前面に押し出し、アバンギャルドなスタイルを誇示した挑戦的なモデルが多い。従来「最善か無か」と言われた設計思想から、「最強か無か」と思われるようなスポーツモデルの投入を続けている。
今回の試乗車であるメルセデス・ベンツS450は、次の世代に続く挑戦的なモデルである。フラッグシップ・モデルのSクラスに、3.0L直列6気筒ターボエンジンに電動スーパーチャージャーと48Vのインテグレーテッド・スターター・ジェネレーター(以後、ISG)を搭載した。
過給遅れをモーターがカバー。レスポンスの良さが、気持ちの良いドライブフィールを生み出した
低回転では電動スーパーチャージャーで加給し、更にエンジンとトランスミッションの間に配置されたISG(最高出力16KW、最大トルク250Nm)がアシスト。電動スーパーチャージャーとはいえ、過給するまでにわずかだが過給遅れが発生する。そのわずかな時間を瞬時に最大トルクを発揮できるモーターがアシスト。非常にアクセル操作に対してレスポンスの良いクルマに仕上がっていた。
ISGはオルタネーターとスターター機能も兼ね、エアコンのコンプレッサー及びウォーターポンプも電動化。ベルトレス化が施され、エンジンの全長も短くなっている。勿論、回生ブレーキによる発電も行い、リチウムイオンバッテリーに充電する。この仕組みは、他社で言うマイルドハイブリッドシステムに近い。
また、直列6気筒エンジンは、左右をホットスペースとコールドスペースを分け、効率的に触媒を働かせている。その結果として先代V6エンジン比で約20%のCO2排出削減と、15%以上の出力向上を実現した。
極めてスムース! ほとんど振動を感じさせない直6エンジン
つい最近までは、直列6気筒エンジンは時代遅れと言われ(主にエンジンの全長が長い事による、スペース効率の悪く、衝突時の安全確保も難しい)、他メーカーも直列6気筒エンジンから撤退し、その先頭に立っていたメルセデス・ベンツが20年ぶりに直列6気筒エンジンを新開発した意義は大きい。
実車をみると、V8気筒やV12気筒も搭載するSクラスの広いエンジンルームに鎮座する直列6気筒エンジンは、とてもコンパクトである。特に通常はエンジンの前部にあるべき駆動ベルトが無く、6気筒エンジンとは思えない程、前方のスペースが空いている。
エンジンの回転が不安定になる低回転域は、電気モーターがアシストし、アイドリング時のエンジン回転数は520rpmと低く、静粛性、効率化を図っている。
運転をしてみるとアイドリングだけでなく、低回転から高回転までエンジンのフィーリングは、とてもスムーズでフリクションが少ない。最新の直列6気筒エンジンの良さを実感出来る。
また、エンジンの停止、再始動も意識しないと感じない程、自然なフィーリングである。
高い完成度を誇るパワーユニット
一旦過給されてしまえば、低回転の力強さを含め、比較試乗したS560の4リッターV型8気筒エンジンには敵わない。しかし、ストップ&ゴーが多かったり、アクセルを一旦抜いたあとの再加速などの時には、アクセル操作に対して瞬時にモーターがアシストするS450のフィーリングが上回る。しかも、回転が上昇し、アクセルペダル踏めば踏むほど加速は増し、0-100km/hは4.8秒と大きなボディとは思えない俊足の持ち主である。
エンジン、電動スーパーチャージャー、モーターそしてターボチャージャーの長所、短所を上手く制御し、9速ATと相まって、1つのパワーユニットとしての完成度が高い。
フロントが軽く、大型セダンとは思えない軽快なハンドリング
エンジンがスムーズかつパワフルだけでなく、クルマが全体の軽快である。重量は確かめていないがフロントの荷重は軽く、ステアリングのレスポンスが良く、アンダーステアが軽い。
ステアリングを切った瞬間からフロントノーズは狙った方向に向かい、Sクラスの大柄のボディから想像出来ない程、コーナリングが気持ち良く、高速道路の進入路で楽しんでしまった。運転するとクルマが一回り小さく感じるのは良い車の証拠である。
上質な室内空間。自動運転に近付いた運転支援システム
室内は高級車の見本である、ゆとりある空間と丁寧に作り込んだインテリア。シートは長時間乗っても疲れが少なく、身体全体を優しく包み込み、「やっぱりSクラスは違う」と感じた。
12.3インチワイドディスプレイを2枚並べたコックピットは、ナビゲーションだけでなく多彩な情報を映し出す。また、スマートフォンとの連携も可能である。自動運転に近づいた最新の運転支援システムも搭載しフラグシップモデルに相応しい充実した装備。しかし、機能が多過ぎてこれを使いこなすには事前の勉強が必要である。
リヤシートに座るならS560 long。自分で運転するのならS450!
贅沢な室内スペース、高い安全性、静粛性、ラグジュアリー、そして他を圧倒する豪快なパワーと威圧感がSクラスであったが、S450は仕立ての良いジャケットにノーネクタイ、ジーパンとスニーカーを履いたようなカジュアルな車である。
リアシートに座る事が多いなら、贅を尽くしたS560 longであるが、自分で運転する事があるならSクラスとは思えない、運転の楽しさがあるS450をお勧めしたい。
メルセデス・ベンツS450 グレード・価格
・S 450 11,470,000円
・S 450 エクスクルーシブ 13,630,000円
・S 450 ロング 14,730,000円
メルセデス・ベンツ S450ボディサイズ、燃費、スペックなど
全長 5,125mm
全幅(車幅) 1,899mm
全高(車高) 1,493mm
ホイールベース 3,035mm
乗車定員 5人
車両重量(車重) --kg
エンジン DOHC直列6気筒ターボチャージャー
排気量 2,999cc
最大出力 367ps(270kW)/5,500-6,100rpm
最大トルク 500N・m(51.0kgf-m)/1,600-4,000rpm
モーター 最高出力16kW 、最大トルク250Nm
JC08モード燃費 -㎞/L
トランスミッション 電子制御9速AT
タイヤサイズ 245/50R18
レポート 丸山和敏
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