未来への夢を乗せて電気で走るレーシングカー【日産リーフ ニスモRC試乗評価】 [CORISM]

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【日産】2011/09/30

■リーフのパワートレーンをオリジナルのカーボンモノコックボディに搭載

日産リーフ  ニスモRC
「ガッツーン」と駆動系からのショックと共にクルマが動き出した。無造作にアクセルを踏んでしまい、助手席の編集長が驚いたのを見て後悔した。緊張感を持たないで走り出してしまったが原因であるが、試乗車はニッサン・リーフ・ニスモRC(以下リーフRC)という純レーシングカーである。リーフのイメージは残しながら全長、全幅を拡大、一方全高は333mmも低く、腰高なリーフから低く地面を這うスタイルに変わっている。

 リーフRCはリーフのパワートレーン(モーター、バッテリー、インバーター)をそのまま流用し、ミッドシップに搭載して運動性能を向上させている。ボディは、カーボンモノコック使って軽量化した完全なレーシングカーである。コックピットは低い車高を考えると頭上も左右のスペースも充分で、幅広いサイドシルを乗り越えてシートに座ってしまえば快適な空間である。エアコンなどを装備すれば、このまま市販車としても使えそうであると感じるのはエンジン車の様な振動が無いのも理由の一つだろう。バケットシートにはスライド調整が付いていて、ペダルに合わせて自分の好みに調整すると素早くメカニックが4点式シートベルトで身体を締め付けてくれた。ペダルは、アクセルとブレーキしかない。ダッシュボードのイグニッションスイッチをオンにし、Nの位置にあるスイッチをF(前進)に入れるが静かなままである。カーボンのドアが閉められ、不用意にアクアセルを踏んだら冒頭のようにレーシングカーだと思い知らされた。

日産リーフ  ニスモRC
日産リーフ  ニスモRC
日産リーフ  ニスモRC

■EVレーシングカーの第一歩

日産リーフ ニスモRC
 テストコースを走り出すとモーターなど駆動系の音やタイヤが跳ね上げた小石がホイールハウスに打ち当たる音は聞こえるが、遮音材が無いのに速度を上げても大声を出せば隣の編集長と会話が可能な程静かで振動も少ない。試乗後リーフRCが走っているのを見たがレーシングカーとは信じられないほど静かな車外騒音であった。

 試乗日は残暑が厳しい日で車内の熱さを覚悟したが、走行していれば風が入り予想外に快適。速さだけでなくドライバーの事を考えて設計したニスモのノウハウが詰まったクルマだと感じた。重く遊びのないステアリングを確かめながらコーナーに侵入するが、この程度の速度では全くロールが無く、あたかもレールが敷かれているかのようにコーナーを抜けていく。徐々にスピードを上げたが、公道を模したタイトなコーナーが多いこのテストコースではエスケープゾーンが無く、自分の技量ではクルマの限界を確かめるのは無理であった。しかし、手のひらでクルマの動きを感じながら操る楽しさははっきり伝わってきて、もっと運転したいとの欲求が走れば走るほどに湧いてくる。

 ブレーキは「ABSもマスターバックも付いていません」と、メカニックから注意を受けたが、実際にブレーキペダルを踏んでみると文明の利器に甘えきった私の右足には鉄壁のように固かった。エンジンブレーキは当然なく、協調回生ブレーキも付いていないのでブレーキを上手く操作するのがリーフRCを速く走らせるコツかもしれないと評価していい。

 車両重量はリーフより約600kgも軽い925kgでありパワーウエイトレシオは11.56(kg/kW)とリーフの20.00より大きく改善し、マーチのCup Carの15.23さえしのいでいる。モーターの特性で、アクセルペダルを踏んだ瞬間から最大トルクが出るので“オッ!”という加速を感じるが、その後は徐々にトルクが落ち込むため加速感は減少する。

 ニスモのテストデーターでは、0-100km/h 6.85秒。最高速は150km/hであり、スピードだけを単純に比較するならリーフRCは速くはない。速すぎないので、気持ちの余裕が生まれる。モーターやバッテリーをチューニングすれば、もっと速くなるだろうが、敢えて市販車であるリーフのパワーユニットをそのまま搭載したのは、コストの削減と信頼性の確保を狙ったのだろう。ニッサンGT-Rのように世界一を目指さないで、ガソリン車では出来なかったEVレーシングカーの新しい道を切り開く第一歩としてリーフのパワーユニットをそのまま使ったニスモの選択に賛辞を贈る。

日産リーフ ニスモRC
日産リーフ ニスモRC
日産リーフ ニスモRC

■夢が広がるEVの多様化

日産リーフ ニスモRC
 ガソリン車のレースカーではあり得ないリーフRCの低騒音は、市街地でのレースなど、従来では不可能であった事が可能にすることが出来そうだ。運転してみるとエンジンカーの様な気難しさもないままに、レーシングカーを楽しめる。敢えて苦言を呈せば、レースモードでは20分の航続時間と、急速充電で30分もかかり、バッテリー交換には現在4名のメカニックで約1時間必要な事である。1時間フルに走れて充電は15分、或いは簡単にバッテリー交換が出来れば、プライベート・チームでも楽しめ、EVレースの可能性が更に広がるだろう。

 もっと運転したいと思わせる魅力がリーフRCにはある。レーシングカーだけではなく、シルビアのようなスポーツカーや、マーチの後席にEVのパワーユニットを搭載したスーパーマーチなどが市販されたら楽しいクルマになるだろう。また、リーフの低騒音を生かして、静かにオープンエアが楽しめるオープンカーなど、EVの展開は無限大に広がりそうである。EVには夢があり面白いクルマであると再確認できたリーフRCの試乗であった。

代表グレード 日産リーフ ニスもRC
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4465×1942×1212mm
車両重量[kg] 925kg
モーター最高出力(kw) 80KW
モーター最大トルク(Nm) 280Nm
レポート 丸山和敏
写真 日産/編集部

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