■前衛的なデザインとオフローダー性能を見事に融合! しかし、一部では大味なアメリカンな部分も・・・
ジープ の基幹車種であるチェロキー がフルモデルチェンジを受けた。内外装のデザインを一新し、パワートレーンや4WDシステムを新しくするなど、相当に意欲的なクルマに仕上げられた。
新型ジープ チェロキーの外観デザインは、これがチェロキーかと思うくらいに斬新だ。日本でのチェロキーは、かつての真四角なデザインのモデルがヒットしたことを思い起こすと、正に劇的なイメージチェンジと言っていい。ただ、今は本格派のオフロード4WD であってもデザイン的な斬新さが必要な時代。単にオフロードを走るだけでなく、都会での街乗りにも似合うSUV とする必要があり、近代的なデザインであることも必要だ。
そんな新型チェロキーのパッと見た印象は斬新で、傾斜を強めたAピラーが象徴するよに流麗なイメージのデザインに仕上げられている。それでいて、7本の縦スリットが並ぶフロントグリルや四角いホイールハウスなど、随所にジープのアイデンティティーがしっかり確保された部分も残されている。新しさとチェロキーらしさの両方が見事に融合していると言っていい。
新型チェロキーがこのように大変身したことには、レンジローバー がイヴォーク を大ヒットさせたことが影響しているかも知れない。
新型チェロキーの外観に比べると、インテリアは変更感が少ない。普通のSUVというイメージである。またパネルの合わせ目などは隙間が大きめで、このあたりはアメリカ車らしい大味な印象が残っている。
■FFモデルはやや非力感ありだが、9速ATのスムースさは絶品!
今回の新型ジープ チェロキーでは、駆動方式が変わっている。4WDであることに変わりがない。これまでは、エンジンを縦置きに搭載するFRベースの4WD車だったものが、新型チェロキーではエンジンを横置きに搭載するFFベースの4WD車になった。より安価でカジュアルなFFモデルであるロンジチュードも設定されている。
最初に試乗したのはFF車のロンジチュードだ。これはタイガーシャークと呼ばれる直列4気筒2.4Lエンジンを搭載したモデルで、このエンジンはフィアットのマルチエアの技術を導入して130kW/220N・mの動力性能を発生する。
大柄なSUVボディのチェロキーは、FFであっても重量がかなり重いので、2.4Lエンジンは動力性能に余裕十分という感じではない。でもオンロード中心で使うなら、特に不満を感じることなく走せることが可能だ。しかし、エンジンの吹き上がりは特に軽快とはいえず、騒音レベルも高めの印象だった。
低速域でのトルク感はまずまず。新開発の9速ATと組み合わされることで、それなりにスムーズで力強い走りが可能になる。300万円台の価格を考えたら、この選択もありかなとも思うが、チェロキーを買うのに2WDを選んでもあまり意味がないようにも思う。予算が許すなら、やはり4WDを選ぶべきだろう。
新型チェロキー リミテッドに搭載されるV型6気筒3.2Lのペンタスターエンジンは、動力性能に余裕が感じられる。リミテッドの駆動方式は4WDであるため、車両重量が大幅に重くなって1880kgに達するが、200kW/315N・mの実力を備えているので、重量級の4WDであることを感じさせない走りが可能だった。こちらも9速ATとの組み合わせによって、滑らかな走りが得られる。クルージングは快適そのものだ。
ロンジチュードも同様だが、9速ATは最近のほかのメーカーの多段ATと同様、何速で走っているのかが分からない。表示されるのは、何速までのギアを使っているかというゾーンだけで、実際には走行状況に応じて勝手にATがギアを選択しているからだ。
マニュアル操作をして意図的に走らせることでギアを確認することはできるが、そんな余分なことをしても意味がない。むしろATに任せて走れば良い。
■オフロードでの基本性能の高さは「チェロキー」の名に恥じないトップレベルの実力! ディーゼル車の投入にも期待したい!
今回の新型チェロキーの試乗では、富士山麓にあるスタックランドというオフロードコースでの試乗が設定されていた。ここでは、4WDの性能に特化したモデルであるトレイルホークを走らせたが、走破性の実力はさすがにチェロキーだった。
新型チェロキーに履かれているタイヤは、オフロード用ではなくM+Sの標準仕様のタイヤだ。しかし、コースは、相当な急斜面を登り下りしたり、前日の大雨でいっぱいにぬかるんだ路面をこなすなど、極めて高い悪路走破性の実力を示してくれた。正に新型チェロキーは、道なき道を走破するだけの実力を持つ。本格的にオフロードに持ち出せば、それに応えてくれるクルマである。
新型チェロキーは、電子制御式4WDを採用することもあって、セレクテレインという機能によって路面に合わせた走りが選べるほか、セレクスピードコントロールと呼ぶヒルデセント&ヒルアセントコントロールなども備えられている。下り坂だけでなく登り坂でも、駆動力の伝わるタイヤを選んで路面をつかみながらじりっじりっと進んで行くのだ。
オフロードコースで条件が厳しいところでは、こうした電子制御技術が効果を発揮し、グッグッグッという独特な制御音を聞かせながら、着実に走破していく。なんとも力強さを感じて好印象だ。この機能を使うと、グリップできるポイントを探って確実にタイヤを進めていくので、タイヤで路面をかきすぎて走れなくなるようなことがない。ある意味、オフロードで、特殊なテクニック必要ない。
新型チェロキーで、同じコースを何度か繰り返して走るうち、最後にはこうした電子制御をカットした標準状態でも走らせてみたが、慎重かつていねいなアクセルコントロールを心がければ、電子制御技術なしでも走破することができた。4WDとしての基本性能の高さは相当なものがある。
モデルチェンジによって、チェロキーの価格は全体に高めになった。FFモデルのロンジチュードで380万円弱、トレイルホークは430万円弱、豪華装備を持つリミテッドは460万円超の価格で、これに20万〜30万円程度のオプションを装着する必要があるから、400万〜500万円級の予算が必要である。一般のユーザーが選ぶのは、ロンジチュードかリミテッドということになりそうなので、価格の安いロンジチュードが高い比率で売れることになるのだろう。
また、新型ジープチェロキーは、欧州でも販売されているグローバル車種。そのため、欧州では2.0Lのクリーンディーゼル車も用意されている。つまり、クリーンディーゼル車 が日本に導入される可能性もある。大型で重いSUVなので、ディーゼルの大トルクとの相性も良い。新型チェロキーのディーゼル車にも期待したい。
■ジープ チェロキー価格、燃費、スペックなど
■ジープ チェロキー価格
・チェロキー Longitude ¥3,790,800
・チェロキーTrailhawk ¥4,298,400
・チェロキーLimited ¥4,611,600
代表グレード | ジープ チェロキー リミテッド |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,630×1,860×1,700mm |
ホイールベース[mm] | 2,700mm |
トレッド前/後[mm] | 1,580 / 1,585mm |
車両重量[kg] | 1,880kg |
総排気量[cc] | 3,238cc |
エンジン最高出力[kW(ps)/rpm] | 200 (272ps)/6,500 rpm |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 315 (32.1kg.m)/4,300rpm |
ミッション | 9速AT |
JC08モード燃費(㎞/L) | 8.9㎞/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 4,611,600円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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