■CX-5をベースとしながら、ロングホイールベース化し3列シートをもったSUVが新型CX-8
マツダは、国内でフラッグシップSUVとなる新型マツダCX-8を公開し予約受注を開始。実際の販売は、12月14日となる。
新型マツダCX-8最大の特徴は、6人もしくは7人乗りというSUVであることだ。そのため、ボディサイズは全長4,900×全幅1,840×全高1,730mm、ホイールベースは2,930mmとなっている。全長で+355㎜、全高で+40㎜、ホイールベースは+230㎜も大きくなっている。
こうしたボディサイズの拡大により、新型CX-8は6/7人乗りを達成している。国内の国産SUVには、新型CX-8の他にも7人乗りに対応したモデルがあるが、ボディサイズもCX-8より少し小さく基本的に短距離用といったシートとスペースとなる。
マツダは、しっかり6/7人乗れるSUVとしてCX-8を開発。1列目は誰もが理想的なドライビングポジショ
ンを取れること。2列目は、大柄な乗員でもゆとりをもってくつろげること。そして、3列目は「身長170cm」の乗員が無理なく座れることを想定して設計された。
注目される3列目シートのスペースは、2列目シート下にはつま先を差し込めるスペースを設けることで広さを演出。身長170cmの乗員が自然な姿勢で座れる快適なシートを実現した。
こうした3列目シートのスペースに余裕があるモデルは、国内ではトヨタのランドクルーザー プラドがある。ただ、プラドは本格的なオフローダーとしての価値で売れているクルマなのに対して、マツダCX-8は泥臭さをまったく感じさせないラグジュアリーSUV系。あまりにキャラが違うため、ライバル車という関係にはなりにくいだろう。
マツダは、ミニバンマーケットから撤退した。ミニバンマーケットは、ほぼ国内専用車で占められる。つまり、日本で売れなければ、開発費などの投資が水の泡と消える。グローバルモデルのように、一つの国で売れなくても他の国で売れればなんとかなるというリスク回避ができない。ビアンテのように売れないと、経営に対するインパクトは大きい。ならば、グローバルで人気が高いSUVに特化するのも戦略の一つだ。
こうしたこともあり、マツダのラインアップからミニバンが消える。少ないながらにも、マツダのミニバン顧客がいるのも事実だ。しかし、こうしたマツダのミニバンファンが乗るクルマが無くなる。こうなると、他社に流出する。顧客の流出は、販売台数に大きな影響を与える。そのため、マツダはミニバン顧客をわずかでもCX-8で奪取したいと考えている。ただ、ミニバンユーザーが欲しいのは、広大な室内であり6/7人乗りのSUVではない。
マツダCX-8は、ミニバン顧客を得るためというより、6/7人乗りのラグジュアリーSUVという新たなマーケットを切り開くための大きなチャレンジといえる。国内では、唯一無二の存在となる。こうした新たな提案に響く顧客層も一定数いるのは確実。最近では、セダンの代わりにSUVに乗る、という顧客も多い。こうしたセダン顧客の取り込みにも注目したい。
■伸びやかなシルエットをもったラグジュアリー際立つSUV
新型マツダCX-8のインテリアは、CX-5以上にラグジュアリー感にあふれている。2列目シートは、一般的なベンチシートの他、よりラグジュアリーな雰囲気を味わうことができるキャプテンシートも用意された。
シート表皮は、本革とファブリックによる4種類の内装を設定。使い込むほどに味わいが深まるような本物の素材として、本杢パネルやナッパレザーが採用されている。
シート生地は、ファブリックがブラック1色とやや物足りない状況。もう少し、選択肢が欲しいところ。最上級グレードとなる「XD L Package」には、高級なナッパレザーが使われている。レザーシートのカラーは、ディープレッドとピュアホワイトの2色。選ばれることが少ないホワイト系なのだが、またチャレンジしているところが、なんともマツダらしいところだ。あまり売れないとはいえ、CX-8の高級感を際立たせるカラーといえるだろう。
荷室スペースは、3列目シートを使った状態でゴルフバック2個を積載できる239Lを確保。3列目シートを倒すと572Lの荷室容量をもつ(床下容量65Lを含む)。同じ4,900㎜クラスの全長をもつBMW X5が650L。この差は、X5の全幅が1,940とかなりワイドになっていることも影響している。CX-5の荷室は505Lとそれほど広いとは言えないが、CX-8は全長が伸びた分、CX-5よりは荷室容量は大きくなっており積載性は向上している。
新型マツダCX-8のデザインだが、まるでCX-5との間違い探しのような印象であまり代わり映えしない。微妙に異なるデザインとなっているものの、あまりクルマに詳しくない人から見れば同じにみえる。CX-5の派生車という印象が強く、このあたりの差別化が、実際のマーケットでどう評価されるか注目したいポイントだ。
ただ、CX-8のサイドビューは美しい。長くなったルーフやリヤクォーター部分により、伸びやかでなプロポーションをもった。CX-5との差は明確だ。
■190ps&450Nmとなった進化系2.2Lクリーンディーゼルを搭載
新型マツダCX-8は、6/7人乗りになったことで、最も車重の重いグレードで1,900㎏となった。これは、CX-5の最も重いグレードと比較すると210㎏重くなっている。この重量級ボディを元気よく走らせるためには、やはり自然吸気のガソリンエンジンでは役不足ということで、2.2Lのクリーンディーゼルエンジンのみの設定となった。
この2.2Lディーゼルエンジンは、CX-5のものを流用かと思われたが、マツダらしく進化させた新エンジンが搭載された。型式こそCX-5のSH-VPTS型と同じながら、出力は175psから190psへ15psアップ。トルクは、420Nmから450Nmと30Nmアップしている。
まず、従来のエンジンとの違いは圧縮比を14.0から14.4。そして、もはやおなじみのテクノロジーであるディーゼルノック音を低減するナチュラル・サウンド・スムーザーとナチュラル・サウンド・周波数コントロール、ドライバーの意思に沿った一体感のある走りを実現するDE精密過給制御が採用されている。
さらに、内燃機関きにこだわるマツダは、「急速多段燃焼」という燃焼方法を採用さ。多段(最大6回)の近接噴射によって上死点付近で連続した燃焼を発生させて燃焼期間を短縮。また、緻密な噴射量コントロールで燃焼初期の熱発生の傾きを抑制してノック音を低減。そして、燃料を高圧で微細分霧化させることで予混合を促進させ、燃焼期間短縮とノック音低減のための弊害を抑制した。
こうした燃料噴射を可能としたのが「超高応答マルチホールピエゾインジェクター」だ。10個の噴射孔から燃料噴射を行うマルチホールピエゾインジェクターに圧力センサーを内蔵。応答性を大幅に向上させ、従来よりも素早い噴射を可能としている。メイン噴射を多段化し、アフター噴射をメイン噴射に近接させ、燃焼期間を短縮している。
こうした燃料噴射に対応するために、新ピストンも投入された。新ピストンは、段付エッグシェイプピストンと呼ばれている。中央部が盛り上がった形状のエッグシェイプピストンのくぼみ形状を、噴射された燃料がピストン壁面に付着しないよう最適化。また、ピストン上部の全周に段を設け、リップ部周辺の流動を抑制して壁面に伝わる熱エネルギーのロスを最小化した。
エンジン型式こそ同じながら、かなり深化した2.2Lディーゼルエンジンとなった。燃費は4WD車で17.0㎞/L。CX-5が17.2㎞/Lなので、車重が200㎏以上も重くなっているのに燃費はほぼ同じだ。このあたりの燃費の進化も驚きだ。
また、CX-8は燃料タンクが大きい。4WD車は74Lタンクとなる。より実燃費に近いWLTC高速モード値では17.5㎞/Lとなっている。単純に掛け算すると、1,295㎞もの航続距離を誇るモデルということになる。CX-8は、ラグジュアリーSUV感が強いが、ロングツアラーの側面ももったモデルといえるだろう。
■全グレードで高い安全性能を誇るCX-8
新型マツダCX-8の安全装備は、かなり充実してきた。歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備を全車に標準装備化。後側方からの接近する車両を検知し警報を発するブラインド・スポット・モニタリング(BSM)も標準装備化されている。このシステムは、夜間やトンネル内、視界が狭くなった高齢者、運転な苦手なドライバーなどなど、日常的に使える安全装備だ。また、前後のAT誤発進抑制機能も標準装備化されている。そして、サイド&カーテンエアバッグも標準装備化されており、どのグレードを買っても優れた安全性能を誇るクルマに仕上がっている。
さらに、CX-8には歩行者との衝突を検知した瞬間にボンネット後端を約100mm持ち上げ、エンジンとの間にスペースを確保するアクティブボンネットを全車に標準装備した。
CX-8のような大きく重いクルマは、歩行者と衝突した場合、より大きな事故になる可能性が高まるため、こうした安全装備の向上は高く評価したい。
クルマは、扱い方を間違えれば人を殺める道具である。こうした商品を売る自動車メーカーは、積極的にこうした安全装備を標準装備化して歩行者事故を減らすための責任がある。
最近のマツダは、こうした安全装備の標準装備化に積極的だ。これは、スバルのアイサイトなどで「安全」がブランド力を決める重要な役割でもあると気が付いたからでもある。未だ、安全装備を顧客の予算次第として、自らの責任を放棄し、オプションで設定するメーカーは、ドンドンとブランド力を落としていくだろう。
また、マツダ自身もロードスターやデミオなどには、歩行者検知式自動ブレーキが装備されていないなどの矛盾点をどうやって解決していくかにも注目したい点だ。
■マツダCX-8グレードの選び方
新型マツダCX-8のグレード選び。CX-8の価格は、エントリーグレードのXD(FF)で3,196,800円からとなっている。CX-5のXD(FF)が2,808,000円なので、約39万円高となった。シートの数が2~3席増え、新エンジンになったことを考えると、なかなかリーズナブルといえる価格だろう。
グレードを決める前に選択したいのが、乗車定員。6人か7人かを選択する必要がある。ただし、最上級グレードのXD L Packageは、6人乗りのみなので注意が必要だ。どうしても7人乗車という人でなければ、ラグジュアリーSUVというクルマのキャラクターを考えると、2列目シートがベンチシートになった6人乗りがお勧めだ。贅沢な空間が楽しめる。
CX-8は、前述の通り、先進予防安全装備は高いレベルにあるので、どのグレードを買っても安心できるレベルにある。ただ、XDの装備に関しては少々省かれた装備がある。レーダークルーズコントロール機能は、オプション設定。今時、300万円超の高級車にクルーズコントロールが付かないというのは少々微妙。とくに、このクルーズコントロール機能は停止、再発進まで行えるタイプ。高速道路などでは、非常に疲労軽減に役立つ。他の機能とセットになったオプションとなっていて、価格は86,400円。積極的に選択したいオプションだ。予算重視なら、この仕様でも十分だ。
また、中間グレードのXD PROACTIVEと比べると、さらにアクティブLEDヘッドライトやシグネチャーLED、レーンキープアシスト、360度ビューモニター、ヒーテッドダミラー、アクティブドライビングディスプレー、ステアリングヒーター、運転席パワーシート、19インチアルミホイールなどの装備がプラスされる。これらの装備差があり、価格差はエントリーグレードのXDに対して34万円。この装備差と価格差なら、XD PROACTIVEを選んだほうが高級車買ったという満足度は高い。
XD L Packageになると、XD PROACTIVEに対して、さらに約42万円高価になる。装備差はLEDフォグランプ、パワーリフトゲート、ルーフレール、助手席パワーシート、ナッパレザーシートだ。注目は、やはりナッパレザーシート。予算に余裕があり、とにかくラグジュアリー感が欲しいというのであれば、XD L Packageになる。
全体的なバランスが良いのは、XD PROACTIVE。このグレードにオプションで、CD/DVD&TVチューナー(32,400円)と360度ビューモニター(43,200円)などを選ぶといいだろう。
■マツダCX-8価格
・XD(6人乗り/7人乗り)(6EC-AT) 2WD(FF) 3,196,800円/AWD 3,429,000円
・XD PROACTIVE (6人乗り/7人乗り) 2WD(FF) 3,537,000円/AWD 3,769,200円
・XD L Package(6人乗り) 2WD(FF) 3,958,200円/AWD 4,190,400円
■マツダCX-8燃費、スペックなど
代表グレード | マツダCX-8 XD PROACTIVE FF 6人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,900×1,840×1,730mm |
ホイールベース[㎜] | 2,930㎜ |
車両重量[kg] | 1,810kg |
総排気量[cc] | 2,188cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 140〈190〉/4,500 |
エンジン最大トルク[N・m(㎏-m)/rpm] | 450〈45.9〉/2,000 |
ミッション | 6速AT |
JC08燃料消費率[km/L] | 17.6km/L |
価格 | 3,537,000円 |
レポート | 編集部 |
写真 | マツダ |
<以下、2017年7月25日掲載 マツダCX-8予想記事>新型マツダCX-8の価格は390万円台からと予想! 不調の国内販売の起爆剤になるか!?
マツダは、2017年秋に発売が予定されているSUV、新型マツダCX-8の外観画像を公開した。
新型マツダCX-8は、全長4,900x全幅1,840x全高1,730mm、ホイールベースが2,930mmというやや大柄なボディサイズをもつ。サイズ的には1クラス下となるCX-5のボディサイズが、全長4,545×全幅1,840×全高1,690mm、ホイールベースは2,700㎜。CX-8は、CX-5に対して全長+355㎜、全幅は同じ、全高+40㎜、ホイールベースは+230㎜となっている。
全長とホイールベースが大きくなったこともあり、新型CX-8は6人、もしくは7人乗りの3列シート車になっている。
マツダは、国内のミニバンマーケットから撤退を表明している。現在もビアンテやプレマシーを販売しているものの、かなりのロングセラーモデルとなっている。こうしたモデルは、ほぼ国内専用車だ。マツダの販売力で、国内専用車の開発はかなり経営にインパクトを与える。もしも、販売面で失敗すれば大きな赤字となるからだ。まぁ、ある意味、トヨタとホンダ、日産に対して白旗を上げた格好になっている。
とはいえ、マツダファンの中にはミニバンのような多人数乗車できるクルマを望んでいる層が一定数いるのも事実。こうした顧客をみすみす逃すわけにもいかない。新型CX-8のは、こうしたマツダファンが逃げないようにするための役割も持つ。
また、国内のSUV市場には、多くはないがエクストレイルやアウトランダーのように3列目シートをもつモデルがある。CX-8は、こうしたモデルより大きいので、3列目シートのスペースにやや不満をもつ顧客が取れるという狙いもある。
もちろん、日本専用車ではない。北米や欧州などでもSUVの3列シートは一定のニーズがある。世界展開できるモデルなので、ある意味、日本でも売れるよね、的な状況と予想できる。
今回公表された内容は、2.2Lのクリーンディーゼルエンジンと6速ATの組み合わせくらい。恐らく車重は1,800~2,000㎏くらいになるだろう。こうなると、やはり2.5Lガソリンエンジンでは、少々厳しいと予想できる。2.2Lクリーンディーゼル車なら十分な動力性能が得られるだろう。ただ、他メーカーのモデルが多段化されている中、このクラスで6速ATは少々古い感じもある。このあたりの進化も期待したいところだ。
そして、新型マツダCX-8の価格を予想。2.2Lクリーンディーゼル車のエントリーグレードは、恐らく300万円台後半の390万円台からになると予想した。これは、CX-5の最上級グレードが約350万円程度となっていることから、最上級モデルとなると50万円程度は価格を上げたいはずだ。しかし、国産SUVでエントリーグレードの価格が400万円を超えると、高価すぎるイメージが前面に出てくる。そうしたことは営業面で避けたいはずだ。
新型マツダCX-5は、国内で販売される国産車でレクサスRX並みの大型のSUVとなる。マツダのラインアップでも、最も高額なモデルとなることも確実。国内販売の不調が続くマツダにとって、再び注目を浴びるモデルになるのか注目だ。
マツダCX-8スペック
■「マツダ CX-8」の諸元
外寸(全長 x 全幅 x 全高) 4,900mm x 1,840mm x 1,730mm
ホイールベース 2,930mm
エンジン SKYACTIV-D 2.2(新世代クリーンディーゼルエンジン)
トランスミッション SKYACTIV-DRIVE(6速AT)
乗車定員 6名/7名
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