レクサス は、GS がマイナーチェンジと同時にスポーツセダン の新型レクサスGS F を設定し発売を開始した。

　レクサスのハイパフォーマンスモデルとなるFシリーズは、「日常からサーキットまで、誰もがシームレスに走りを楽しめる」をテーマに開発された。今まで小型のセダンであったIS F が存在したが、生産中止になってから約1年以上が経過。Fモデルの系譜は、クーペのRC Fに移ったように見えたが、久しぶりにセダンのFモデルが復活したともいえる。

　レクサスがこうしたセダンにハイパフォーマンスモデルを投入するには訳がある。メルセデス・ベンツ のAMG や、BMW のM などハイパフォーマンスモデルが日本ではよく売れている。当然、レクサスもFモデルを投入し、より利益率の高いクルマを売りたい。そのためには、セダンであることが重要。レクサスブランドは、非常に高価なため、法人名義の登録となるクルマが多い。法人名義は、会社の経費でクルマを買っているということになる。ただし、多くのオーナー中小企業の場合、法人名義とはいえオーナーの私用車としても使われている。ただし、法人名義で買う場合、税務上、スポーツカーなどは税務署などから認められないケースが多くなるのだ。セダンであれば、ほぼOKとなるので、どうしてもセダンであるハイパフォーマンスモデルが必要。FシリーズがISではなく、GSになったのもこうした法人名義で買う顧客のニーズを考えてのことだ。

　新型レクサスGS Fのボディサイズは、全長4,915×全幅1,855×全高1,440㎜。ベース車のGSよりもボディサイズが全長で35mm、全幅が15mm大きくなり、全高は15㎜ほど低くなっている。よりワイド＆ローなフォルムが際立ち、ハイパフォーマンスセダンらしいスタイリッシュな雰囲気になった。

　外観デザインは、ヘッドライトやグリルの形状などは似ているものの細部に渡り走行性能を引き上げるための空力を意識したものとなっている。フロントバンパーサイドをフィン形状とすることで、走行安定性の確保とともにワイドかつ低重心なスタンスを強調。リヤビューは、“F”を象徴する台形配置の4連エキゾーストディフューザーを配置。サイドビューは、低く構えたフェンダー上面、大きく張り出したフェンダーフレアによって、V8ユニットを搭載したハイパフォーマンスモデルであることを主張する。また、グリルはメッシュ形状に変更され、下方に行くにつれ Fの文字になっていく“Fメッシュ”を採用し、標準車との違いを明確にしている。

　外観から見えるエアダクト＆サイドアウトレット類は、演出ではなくすべて機能を追求したもの。効率よくエンジン関係やブレーキ系の冷却ができるようなものとなっており、ハイパフォーマンスモデルらしい機能美をアピールする。装備されるホイールはBBS製の19インチホイール。いかにもレーシングな骨太5本スポークとはせずに、粗目のメッシュデザインを採用し、街中ではエレガントな雰囲気に見せているところが、高級スポーツセダンらしいところでもある。

　インテリアデザインも細部に渡りFモデルらしさをプラス。とくに、ドライバーのインターフェイス部分となるメーターはエコ、ノーマル、スポーツS、スポーツS+と4パターンに変化。走行パターンに合わせた最適な情報を表示する。こうしたドライブモードセレクトは、シフトノブ手前の丸いセレクターで簡単に変更することができる。

　シートは、随分スポーティでラグジュアリー感のあるものとなった。本革シートをベースとして、ブラックだけでなく鮮やかなオレンジやレッド、ホワイトなどが選択できる。また、フロントシートには表皮一体発泡成型によるハイバックスポーツシートを採用。このシートがなかなか良くできていて、サーキットなどで高いGがかかってもしっかり体を支えてくれる。こうしたスポーツ系のシートだと、一般公道上ではタイト感が強すぎ、リラックスできないのだが、GS Fのシートは、それを両立。このあたりは、コンセプトを日常からサーキットまでとしているだけのことはある。

　搭載されるエンジンは、2UR-GSE型V8 5.0L自然吸気エンジン。477ps/7,100rpm、530N・m /4,800～5,600rpmというスペックを誇る。このエンジンは、組み立て後に一基ずつエンジン回転バランスを調整し、自然吸気エンジンならではのリニア感やレスポンスの良さを、さらに高次元へと引き上げている。4,000回転付近からパワー感が急激に盛り上がり、吸気音の音質も変わるあたりは自然吸気エンジンならでは。レスポンスの良さも魅力だ。もはや、こうしたハイパフォーマンスモデルもダウンサイジングターボとなっており、大排気量の自然吸気エンジンは環境性能的に生きていけない流れになっている。そのため2UR-GSE型V8 5.0L自然吸気エンジンもこれで最後かもしれない。この5.0Lエンジンは、巡航域などの低負荷領域ではアトキンソンサイクル化され、できる限りの低燃費化が施されている。燃費は8.2㎞/Lだ。ミッションは8速ATだ。

　ボディもサーキット走行でも不満がでないように強化されている。強固なボディとするため、レーザー溶接、スポット打点の増し打ちに加え、高剛性ガラス接着剤、レーザースクリューウェルディングなどレクサス最新のボディ技術を導入。さらにフロントブレース、リヤボディブレースの剛性向上、ボディとの締結構造の追加などを実施した。ボディの強化とサスペンション剛性の向上により、サーキットでもステアリング操作に忠実な動きをみせる。かなりの高Gがかかるコーナーでも、修正舵をあてることなくオンザレール感覚で走り抜けることができた。

　こうしたボディとサスペンションの剛性アップは、街乗りでも大きなメリットを生み出している。サスペンションがシッカリと動く。乗り心地そのものは、ややかためだが、しなやかさが違う。大きな凸凹も何気なく通過。1,100万円のクルマだから当然といえば当然だが、レクサスGSの派生車とは思えないほどのレベルアップ感だ。

　もちろん、超高速でサーキットを走るために空力特性は非常に重要な予想。GS Fは、フラットな整流面をもつエンジンアンダーカバーを採用。リヤフロアアンダーカバーによる床下切り上げ角の最適化など、床下の整流を追求し、優れた空力性能を実現。さらに、各アンダーカバーにエアロスタビライジングフィンを設け、空気の流れを積極的に利用する。その結果、富士スピードウェイの直線で250㎞/hに達しても、直進安定性は優れていた。これだけ安定していれば、日本の高速道路の速度域程度は、ほとんど気になるところはないだろう。高速道路の長距離移動では、直進安定性の高いクルマは疲労度も少ない。

　ブレーキは、フロントがアルミ対向6ピストン。リヤはアルミ対向4ピストンモノブロックキャリパーが採用されている。GS F専用オレンジブレーキキャリパー（フロント・リヤ）をオプション設定している。

　サーキット走行では、非常に頼りになったのが駆動力制御システムTVD。走行状態に応じて後輪左右の駆動力を最適に電子制御し、コーナリング時に理想的な車両挙動を実現する。スタンダード、スラローム、サーキットの3モードが設定されている。走行状況に合わせ選択できる。サーキット走行では、TVDの機能が明確に感じ取れるものでは無かった。かなりさり気なく制御していて、GS Fが非常に乗りやすいクルマになっている印象が強い。良くも悪くもドライバーがミスしても、ミスしていな状況になりやすい。全長が4,900㎜を超える大きなボディをもつGS Fが、タイトターンではクルリクルリと向きを変えてくれるで、気分的にはひとクラス小さいIS Fに乗っているような雰囲気になった。これなら、狭くタイトな峠道でもストレスを感じることはないだろう。

　さて、レクサスGS Fの選び方。1グレードで価格は11,000,000円。そのため、オプションで何を選択するのかということになる。困ったことに、この価格になっても後側方の隣接する車線を検知し、接触の可能性がある場合、警報を発するブラインドスポットモニターがオプション。これは絶対に装備したほうが良い。この価格で装備されていないクルマは珍しい。まさかのクリアランスソナー&バックソナー、パワートランクリッドもオプション。これらは高級セダンとしては当たり前の装備。輸入車のライバルと比べると安めの価格設定となっている。パワー面では自然吸気エンジンということもありやや低め。自然吸気エンジンならではのレスポンスの良さなどに魅力を感じている人が選ぶといいだろう。

■レクサスGS F価格：11,000,000

代表グレード	レクサスGS250
ボディサイズ［mm］（全長×全幅×全高）	4915×1855×1440mm
ホイールベース［mm］	2850mm
トレッド前/後［mm］	1555/1560mm
車両重量［kg］	1830kg
総排気量［cc］	4968cc
エンジン最高出力［kw(ps)/rpm］	351kw(477ps)/7100rpm
エンジン最大トルク［N・m/rpm］	530N・m/4800～5600rpm
ミッション	8速AT
タイヤサイズ	F:255/35ZR19　R:275/35ZR19
燃費	JC08モード　8.2km/L
定員［人］	5人
税込価格［円］	11,000,000円
発売日	2015/11/25
レポート	編集部
写真	編集部