クルマが自動で逃げる? 向きをかえて衝突回避! トヨタ最新安全技術を公開 [CORISM]

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【その他】2011/07/31

 

トヨタ、死傷者ゼロを目指した安全技術を加速

トヨタ走路逸脱対応支援PCS

 ボルボやスバルの衝突回避システムより、テストでは随分手前で停止した

 歩行者を感知して、自動ブレーキをかけて停止する、ぶつからないクルマというCMでお馴染みのスバルのアイサイトが大ヒットしている。今さらながら、徐々に安全への意識が高まっている。そんな状況下にあり、トヨタも最新の安全技術を披露した。

今回、色々な安全技術があったが、とくに注目したいのが走路逸脱対応支援PCS。PCSとは、衝突回避支援プリクラッシュ・セーフティ・システム。このシステムが優れているのは、スバルのアイサイトと同様に歩行者を感知して、もしもの時には自動ブレーキをかけて衝突を回避する。トヨタは、この機能をさらに進化させ、ブレーキに加えステアリングまで統合制御する。

テストコース上に設定されたカードレールをイメージした壁に向かって進むと、まず警報が作動。その後、ブレーキがかかり、それでも回避できないと判断すると自動的にハンドルを切って衝突を避ける。実際の道路状況では、ちょとわき見をして、または居眠りしていて気がつけばガードレールが目の前に迫ってきた、そんなシチュエーションに効果的だ。

コストと安全思想の高さが普及へのカギ

トヨタ衝突実験

 このシステムは、ミリ波レーダーとステレオカメラ、近赤外線投光器を搭載しているので昼夜問わず性能を発揮するのが特徴。スバルのアイサイトは、天候により機能が制限されるが、ステレオカメラというシンプルなシステムで価格上昇を約10万円程度で抑えることでヒットした。

トヨタの場合、ミリ波レーダーや近赤外線投光器などを装備するため、昼夜問わず性能を発揮するが、その分、高コストになるのは避けられない。スバルも初期のアイサイトが30万円を超えるようなオプションだった頃は、まったく売れなかった実情がある。どれだけ低コスト化できるかが、普及するための大きな要因ともいえる。

また、トヨタの安全思想の高さも、こういった素晴らしいシステム普及へのカギを握る。トヨタは前社長時代に「サイドエアバッグ全車標準装備化」をアピールした。しかし、現在の豊田社長になってから、標準装備化はまったく進んでいない。もちろん、VSC(横滑り防止装置)も法制化されたヨーロッパやアメリカなどで標準装備化されているものの、日本仕様には一部の高級車のみに限られているという現状がある。もちろん、トヨタだけではないが、日本に輸入されるヨーロッパ車のほとんどが横滑り防止装置は標準装備化されていることを考えても、安全思想の志は高いとは思えない現状だ。

取材時に担当役員が「安全装備の標準化については、営業サイドとも協議を続けている」と言っていたのだが、そもそも安全装備は思想の問題であって、マーケティングの理論が入ってくることに問題がある。思想や理念は、マーケティングの上位概念でなくてはならないと思うのだ。ユーザーはより安くて安全なクルマが欲しいだけであって、安くても安全でないクルマが欲しい訳ではないのだ。

もちろん、会社存続とために収益は重要な問題だ。しかし、思想をアピールせず、理解を得ることなく、タレントを多用したCMにお金を使う事のほうが逃げの姿勢に思えるのだ。もちろん、CMの幻想だけで買ってしまう我々にも問題はある。だが、トヨタには世界ナンバー1の自動車メーカーとしての業界をリードする責任がある。

ちなみに、トヨタにも衝突実験に使うダミー人形がある。この人形、通常は1体1,500万円程度らしい。しかし、トヨタはさらなる歩行者保護のために自社で開発した1体2億円もする世界で1台のダミー人形までもが存在し、貴重なデーターを得て技術開発に生かしている。開発の現場は、高い安全思想があるものの販売の現場では・・・。世界トップクラスの技術開発も、製品に生かされないのであれば意味がないし、開発陣も浮かばれない。

世界一の自動車メーカーは、世界一安全なクルマを作るメーカーだから売れる。そんなトヨタに期待したい。

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(レポート:大岡 智彦

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