売れなかった先代ハイブリッドを大幅に価格を引き下げメイングレードにした新型トヨタ クラウン ハイブリッド(210系)
ひと世代前のクラウンでは、ハイブリッド車がロイヤル系とアスリートの上に位置するモデルとされていた。クラウン中でフラッグシップに位置するモデルがハイブリッドだった。
そのために、豪華な仕様や装備が用意されて価格が高くなり、またV型6気筒のハイブリッドシステムは動力性能に優れるものの燃費がさほど良くないことなどから、販売面ではあまり芳しくない状態にあった。
そこで、新型トヨタ クラウン ハイブリッドでは、直列4気筒2.5Lエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせ、極めて高い燃費性能を実現すると同時に、価格帯を大幅に引き下げた。またロイヤルやアスリートと別にハイブリッドを設定するのではなく、ロイヤルとアスリートの中にハイブリッドが位置するグレード展開になった。
クラウンなのに、コンパクトカー並の超低燃費
直列4気筒2.5Lエンジン+ハイブリッドというと、すぐに頭に思い浮かぶのはカムリだ。2AR型というエンジン型式やボア×ストロークも同じだから、横置きを縦置きに変更しただけと思うかも知れない。
でも、実際にはカムリ用とクラウン用では中身に大きな違いがある。全く違うエンジンと考えたほうが良いくらいだ。型式も厳密に言うと、カムリ用が2AR-FXE型であるのに対し、クラウン用は2AR-FSEとなる。
このエンジンは、新型クラウンハイブリッド専用に開発されたもので、D4-Sの直噴仕様であるほか、アトキンソンサイクルやクールドEGRなど、今のトヨタが持つさまざまな最新環境技術を盛り込んだ。そのエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせることで、極めて効率の高いパワートレーンに仕上げている。
車両重量が1600kgを超えるクラウンで、1000kgそこそこのコンパクトカーと変わらないような23.2km/Lの低燃費を実現しているのだからビックリものである。当然ながら、この燃費は平成27年度燃費基準+20%を達成していて、エコカー減税は免税扱いになる。
大幅に進化した乗り心地
その走りは、どうか。発進は例によって電気モーターだけで、静かでスムーズに走り出していく。アクセルを踏み込めば必要に応じてエンジンがかかり、力強い加速を実現する。エンジンのオン/オフなどは、エネルギーモニターを見ていない分からないくらいにスムーズだ。
動力性能の数値は、2.5Lエンジンが131kW/211N・mで、電気モーターは105kW/300N・mである。システムとして出力できるのは162kWだから、従来のハイブリッドに比べたら大幅にダウンしているが、それと引き換えに際立って優れた低燃費を実現している。
数値的に下がったといっても、従来のクラウンハイブリッドがパワフルすぎたためで、今回のハイブリッドはV6エンジンを搭載した2.5Lのガソリン車を上回る性能持つ。走りが鈍いといったような感覚ではない。むしろ余裕十分の走りといって良い。
試乗したのは、新型クラウン アスリートGだったので、新しいサスペンションアームとAVSのサスペンションシステムによって、乗り心地もまずまず快適なものになっていた。ロイヤル系とは異なる引き締まった感じの足回りながら、乗り心地をスポイルしていないのが良い。これはガソリン車とも共通することだが、今回のモデルで大きく進化した部分である。
子会社のダイハツ ムーヴよりも腰の引けた安全装備
クラウンはこれまで、プラットホームは2世代ごとに更新していが、今回は3世代目まで使うことにした。熟成を進めるためというのが理由のようだが、それとともに電子プラットホームもキャリーオーバーされたようだ。そのことが電子制御式ではなく足踏み式のパーキングブレーキや、プッシュボタンの右側配置など、従来のモデルと同じ仕様につながっている。
また、新型クラウンに採用された追突軽減ブレーキは、ミリ波方式による比較的簡易型ともいえるもの。カメラを使っていないので人間認識ができないタイプだ。しかも、それを主要グレードにオプション設定(ベースグレードには設定がない)というのだから、ちょっと腰が引けている。
そもそも、プリクラッシュセーフティシステムはトヨタが2003年にハリアーで最初に採用したものだ。安全をリードする自動車メーカーとして、もっと積極的な採用が望まれる。
今回のプリクラッシュセーフティシステムは、誤発進防止などの新機能を盛り込んでいるだけに、全車標準にして欲しいところだった。欧州車では150万円を切るup!に、また軽自動車では100万円そこそこのムーヴに、衝突回避支援ブレーキが標準装備される時代である。
クラウンハイブリッドのアスリートGの価格は543万円で、2.5アスリートGに比べると53万円高の設定だ。アスリートS同士の比較だと、413万円に対して469万円だから56万円高の設定である。この差を燃費で取り戻すのは難しいが、減税の違いに加えて走りの違いなどを含めて考えたら、納得できる範囲に収まっている。ロイヤル系もほぼ同様の設定なので、新型クラウンがハイブリッドを中心に売れているのも当然である。
<アスリート価格>
■2.5L
・アスリート 3,570,000円
・アスリートS 4,130,000円
・アスリートG 4,900,000円
・アスリート i-Four 3,800,000円
・アスリートS i-Four 4,360,000円
・アスリートG i-Four 5,130,000円
■3.5L
・アスリートS 4,970,000円
・アスリートG 5,750,000円
■ハイブリッド
・アスリート 4,100,000円
・アスリートS 4,690,000円
・アスリートG 5,430,000円
<ロイヤル価格>
■2.5L
・ロイヤル 3,530,000円
・ロイヤルサルーン 4,090,000
・ロイヤルサルーンG 4,820,000
・ロイヤル i-Four 3,800,000
・ロイヤルサルーン i-Four 4,360,000円
・ロイヤルサルーンG i-Four 5,050,000円
■ハイブリッド
・ロイヤル 4,100,000円
・ロイヤルサルーン 4,690,000円
・ロイヤルサルーンG 5,360,000円
定員[人]5人
代表グレード | トヨタ クラウン アスリート ハイブリッドS |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,895×1,800×1,450mm |
車両重量[kg] | 1,640kg |
総排気量[cc] | 2,493cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 178(131)/6,000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 22.5(221)/4,200〜4,800rpm |
モーター最高出力[ps(kw)] | 143ps(105kw) |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] | 30.6kg-m(300N・m) |
システム全体[ps(kw)] | 220ps(162KW) |
ミッション | 電気式無段変速機 |
JC08燃料消費率[km/l] | 23.2km/l |
バッテリー 種類/容量(Ah) | ニッケル水素/6.5 |
価格 | 4,100,000円 |
写真/レポート | 編集部/松下 宏 |
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