AWDにこだわり続けるスバルのEV「ソルテラ」
スバル ソルテラは、スバルが初めてグローバルで発売するEV(電気自動車)だ。
ソルテラは、トヨタとの共同開発によるEV。基本骨格などを含め、多くの部分がトヨタのEVであるbZ4Xと同じだ。
このソルテラの日本導入時期は未定。コロナ禍により思うように生産できない現状なのだが、今のところ2022年年央を発売を目指すとしている。
今回は、このスバル ソルテラのプロトタイプ車に試乗した。
試乗会上は、一面雪景色。EVなのだから、何も雪道での試乗でなくてもよいのに・・・。と、思うのだが、それは、スバルのこだわり。しかも、ソルテラにはFF(前輪駆動)もあるのだが、試乗車はAWD(4WD)のみだ。「ソルテラの神髄はAWDにある!」という、スバルのメッセージであると理解した。
効率はリーフより良さそう? その訳は?
ソルテラは、EV専用プラットフォームに71.4kWhという大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。国産EVでは、日産リーフe+のバッテリー容量が62kWhなので、少しバッテリー容量が多い。航続距離は、AWDモデルで460㎞程度となる。リーフe+が458㎞(WLTCモード)の航続距離なので、同等レベルの航続距離になる。FF(前輪駆動)は530㎞程度の航続距離になるので、バッテリー容量がリーフe+より多い分、航続距離も長くなっている。
FFモデルの電費を比べると、ソルテラ(FF)が7.4㎞/kWh、リーフe+も7.4㎞/kWhなので同程度の電費。
ただし、ソルテラ(FF)のボディサイズは全長4,690x全幅1,860x全高1,650mm、車重1,930㎏前後なのに対して、リーフe+のボディサイズは全長4,480x全幅1,790x全高1,560mm、車重1,680㎏。ソルテラはリーフe+より大きく重い。大きくて重いのに電費は同じであることを加味すると、ソルテラのEVシステムの効率はなかなか優れていると言えるだろう。
圧倒的な速さは無いが、ハンドリングマシンなソルテラ
AWDのソルテラには、前後に80kWのモーターを配置し計160kWの出力を誇る。FF車は150kWのモーターが装着された。
ソルテラAWDの前後トルク配分は、50:50を基本に50:0~0:50の範囲で制御されている。実際に雪道を走行すると、かなり後輪寄りのトルクで走る。アクセルを踏むと、後輪から押される感覚だ。フロント側モーターも駆動しているのだが、なんだかFR(後輪駆動)車っぽい。ただ、全輪のタイヤでしっかりと路面をつかんで離さないので安定感は抜群だ。
ハンドリングも極上だ。過度なスポーティさを感じさせるギミック的なものは無く、かなり自然な感覚だ。ソルテラは、ステアリング操作に対して忠実に、そして正確にノーズの向きを変える。
しかも、意外とロールも少なくフラットな姿勢を保ち、ピタッと安定している。とても、最低地上高が210mmもあるSUVとは思えない身のこなしだ。これは、フロア下に大きく重いリチウムイオンバッテリーを積んでいることで、重心が低くなっていることが大きな要因。EVならではのメリットでもある。
カーブでの安定感は、さすがスバル的でコントロールしやすい。アクセルをグッと踏み込むと、リヤタイヤがズルズルとゆっくり滑り出す。とにかく滑りを抑える安定傾向のAWDも多いが、ソルテラは滑りに少し寛容だ。
ドライバーは、そのまま軽くカウンターステアをあてながらドリフト状態を維持するのも容易。アクセルを戻せば、またグリップが回復し普通に運転できる。ドライバーの技量によって、色々な走りが楽しめる懐の深さがあった。
こうしたハンドリングやAWDの制御は、スバルが主導で行われた。AWDの制御や走りの質は、スバルとって譲れない部分。すべてをトヨタ味にするのではなく、開発パートナーであるスバルの良さを加えたことで得るシナジーがハッキリと感じる部分でもある。AWDの乗り味には、スバルのプライドが凝縮されていた。
こうしたスバルのプライドは、開発時のコンセプトからも分かる。スバルは、ソルテラを単なるトヨタbZ4Xのエンブレムを替えただけの「リバッチ」モデルとはしないとしていたのだ。その想いが、ソルテラの走りから伝わってくる。
スバル主導のAWDだが、デザインは?
ただ、ソルテラには、パドルシフトが装備されるなど、細かい部分でbZ4Xとの差別化が行われているものの、肝心なデザインは、トヨタの呪縛から逃れられていないように見えた。
基本的に同じクルマなので、全体のスタンスは似てしまうのは仕方ない。ならば、ルーフやドアパネルなど以外の部分はbZ4Xとは異なるものを使うなどのこだわりも欲しかった。違いはヘッドライトやバンパー、ホイール、リヤコンビネーションランプ程度。インテリアは、専用色が設定されていること以外が同じだ。これでは、せっかくのスバル初EVというオリジナリティが薄まってしまう。
例えば、上手く差別化できているのは、マツダのCX-30とMX-30。同じプラットフォームを使う姉妹車だが、外装はもちろん、内装まで異なる。ここまで上手く差別化されていると、多くの人が違うクルマとして認識するだろう。それだけにソルテラには、もうひと頑張りしてほしかった。
<レポート:大岡智彦>
スバル ソルテラ価格
・FWD車 未定
・AWD車 未定
スバル ソルテラAWD電費、ボディサイズなどスペック
・全長 x 全幅 x 全高(mm) 4,690 x 1,860 x 1,650
・ホイルベース(mm) 2,850
・最低地上高(mm) 210
・定員(名) 5
・最小回転半径(m) 5.7
・車両重量(㎏) 2,020~(AWD)
・電動機種別 交流同期電動機
・蓄電池種類 リチウムイオン電池
・総電力量(kWh) 71.4
・AC充電器最大出力(kW) 6.6
・DC充電最大出力.(kW) 最大150
・モーター最大出力(kw) フロントモーター 80/リアモーター 80 計160
・一充電走行距離WTLCモード*国土交通省審査値(km) 460前後(AWD)
・サスペンション(前/後) ストラット/ダブルウィッシュボーン
・装着タイヤサイズ 235/60R18もしくは235/50R20
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