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満を持して8年ぶりにフルモデルチェンジ
一世を風靡したキング・オブ・ミニバンである日産エルグランドがようやくフルモデルチェンジする。8年ぶりとなる。待たせ過ぎだ。エルグランドファンにとっては、焦らされ過ぎた分だけ、期待は否が応でも期待は高まって当然と評価したい。
そんな新型日産エルグランドのファーストインプレッションは、なんだか小さくなった印象。しかし、実際の寸法は全長がついに4900mmを超え4910mmとなり、全幅もひと回り大きくなり1850mmとなっている。なぜ、小さく見えたのか? それは、全高が1815mmとなり、なんと前モデルより95mmも低くなっているのだ。ちょっと低く構えたシルエットと、高密度感のあるデザインのために小さく見えたのかもしれない。だが実際は、ライバルとなるアルファードより、車高を除きひと回り大きい。
こんな巨大なボディと迫力たっぷりのデザインは、もう完全にタフで力強い肉食男子のクルマ。しかし、こんな肉食感を持ちながら、新型エルグランドは意外と女性にも優しい。215/65R16インチタイヤを履くグレードの最小回転半径は、なんと5.4m。ひとクラス下のセレナでさえ5.5mなのだから意外と小回りが利く。バックモニターやアラウンドビューモニターを駆使すれば、スーパーの狭い駐車場などでも扱いやすだろう。これなら、ママも安心というわけだ。
ミッションは全車CVTで燃費にも配慮
今回我々のために用意されたのは、新型日産エルグランドのプロトタイプだ。試乗したのは、日産エルグランド・ハイウェイスター・プレミアムの3.5リッター。場所は、日産栃木工場のテストコースだ。早速、試乗。シートに座った瞬間、新型エルグランドが発するメッセージがボクの全身を包みこむ。ミニバンといえば、ハンドルが上部を向き、ブレーキやアクセルは上から踏む、というドライビングポジションが多い。いわゆる、バスやトラックに限りなく似ている。ところが、新型エルグランドは、思いっきりミニバンなのにドライビングポジションは、ハンドルがドライバーの胸に向き、アクセル&ブレーキペダルは奥にあり、上から踏むというよりは前へ押すというスタイル。スポーティセダンに近い。「おやっ?」と思いながら、まずは高速周回路へ。
3分後、あまりに高い直進安定性に驚く。最近のミニバンで高速道路を走ると、大なり小なりフラフラする。大きく重いボディに高いスピード、そして路面の凹凸や風がそうさせる。気が付きにくいが、我々はステアリング操作をこまめにして修正しているものなのだ。ところが、新型エルグランドは、ビシッと真っすぐ走る。ステアリングの修正回数も少なくて済むので、長距離ドライブでは、確実に疲れにくいと評価したい。
ミニバンらしからぬハンドリングを味わえる
ならば、そりゃ、全開でしょう。3.5リッターのパワーは豪快。アクセルをラフにあけると、トラクションコントロールが常にビカビカと光るほど。ハードなコーナーリングで、タイヤがキョエェーと悲鳴を上げていても、リヤサスの操縦安定性もピカイチ。しっかりと路面をつかむ。そんなコーナーリング中に、意地悪なウネウネとした凹凸が。激しくクルマが上下に揺さぶられる。普通のミニバンは、この状態ではサスペンションが底突きして、体にはガンガン強烈な衝撃が伝わってくる。しかし、新型エルグランドは、タップリとしたサスペンション・ストロークとクラス唯一のマルチリンクサスペンションによって、強烈なショックを見事に吸収しながら走り抜けた。
この瞬間に、もはや頭の中はミニバンに乗っているという意識がなくなった。まるでスポーツカーに乗っているかのごとく、テストコースを楽しんでしまった。十分に楽しんだ後、クールダウンを兼ねながら、タウンスピードでゆっくりと周回。それまで、ギンギンなスポーツモードに突入していたCVTの制御は、即座に通常モードに。燃費を意識した設定に突入すると、エンジンの回転数を積極的に2000回転以下に保とうとする。これは、燃費に効く。エコカー減税にも対応するそうだと評価しよう。
FF化で優れた居住性を手に入れた!
このままでは、ドライバーだけが楽しいクルマ。次は2列目シートに座り、乗り心地をチェック。ギンギンに走ったあとなので、ちょっとお疲れ気味。そんな言い訳をしながら、2列目キャプテンシートのオットマンを出して、超リラックスモードへ。結構なスピードで走られても、クルマのロール(傾き)が思ったほど少ないのと、ロールスピードがゆっくりなこともあり、頭をグルグルと振られることがない。クルマの全高を低くし、低重心化することにより、高い走りのパフォーマンスと乗り心地の両立ができたのだ。ちなみに、燃料タンクも工夫することにより、前後の重量バランスが52:48という、まるでスポーツカーと同等な重量バランスになっている。これも、新型エルグランドのこだわりだと評価したい。
さて、お次は3列目。全長が長くなったこともあり、こちらも問題がないくらい広い。3列目シートは、リヤサスの突き上げショックがダイレクトに感じるのだが、マルチリンクサスのおかげで突き上げ感は軽微。どのシートに座っても、極端に差が無くストレスを感じないのは新型エルグランドの美点だろう。ちなみに、リヤのラゲッジルームには、ゴルフバッグが縦に4本積める広さを確保しているなど、積載性も十分だ。
新型エルグランドはFR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)へ大きく変わった。前モデルはFRであることをセールスポイントとして、走りの味が違うとアピールしていた。しかし、8年の歳月はFRであることのメリットよりFFのメリットが上回る結果となる。プラットフォームは、ティアナと同じものをさらに補強し高級ミニバンに耐えうるものとした。満を持して登場する新型日産エルグランド。負けるのが大嫌いという開発責任者である日産のCVE(チーフ・ヴィークル・エンジニア)の金子さんは「どこを比べられても負けない」という自信作。この8月、新型日産エルグランドが、ついに走りだす。
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