【日産 電気自動車 リーフ 新車試乗評価】ついに街へ飛び出した話題の最新型EVは"使える"ヤツなのか [CORISM]

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【日産】2011/03/06

初の公道試乗を行う日産の新型電気自動車「リーフ」

ITや通信技術を駆使して実用性をサポートする新しい発想の電気自動車

日産 電気自動車「リーフ」 エクステリア 画像

ボディサイドの「Zero Emission」ステッカーはオプション。フロントノーズが少し低く、大きな開口部のフロントグリルがない(その代わりの充電口が中央にある)。その外観は全体に個性的ではあるが、普通のガソリンエンジンのハッチバック車と極端に異なるワケではない。

 2010年12月に発表された日産の電気自動車リーフの納車が始まり、試乗車も用意されるようになった。リーフに力を入れている日産では、1回当たり3時間の試乗枠を設けていた。でも新しいクルマであるリーフには乗って試したいことがいろいろあるので、ちょっと工夫をして3時間×2回の試乗を試してみた。
 リーフは一般の市販される電気自動車としては事実上初めてのクルマであり、ゼロエミッション(排気ガスなし)の時代の到来を告げるクルマだ。発電時にはC02を発生するから、厳密にいえばゼロエミッションではないが、クルマが走ることによって直接発生する排気ガスがゼロであるのは間違いない。このことを考えながら走らせると、それだけで誇らしい気持ちになって気分が良い。
 これまでにも電気自動車のブームは何度かあった。トヨタのRAV4 EVや日産のハイパーミニなど、いくつかの電気自動車が試験的に投入されてきたことがある。ただ、これまでの電気自動車のブームはいずれも電池の性能と価格が壁になって跳ね返されてきた。
 その壁を破り、電気自動車を現実のものにしようとしているのが日産のリーフで、単にクルマと電池の性能だけで電気自動車の時代を実現しようとするのではなく、IT技術や通信技術を駆使した周辺システムで支えることによってリーフの実用性を高めている。これは従来の電気自動車ブームのときにはなかったことで、時代の進歩が電気自動車の実用性を高め、現実性を高めたと評価したい。
日産 電気自動車「リーフ」 リアビュー 画像

筆者の松下 宏氏は「出っ尻のようでカッコ悪い」と一刀両断するが、日産のSUV「ムラーノ」などと共通性も感じられなかなか近未来的なリアビューだ、とも評すことも出来る。いずれにせよ好みが分かれるところではあるが、すなわちリーフの独自性とも言える。

日産 電気自動車「リーフ」 急速充電口 フロント 画像

フロントにある充電ポートは2口を用意。画像でコネクタが繋げられているのは急速充電ポート。80%充電まで約30分で行える。いっぽう右の普通充電ポートは200Vもしくは100Vの電源から専用ケーブルを用いて充電する。200Vの場合約8時間で満充電が完了する。

日産 電気自動車「リーフ」 インバーター&モーター ボンネット 画像

ボンネットを開けると目に飛び込むのが・・・エンジン!? ではなくインバーターのユニットだ。電流を直流から交流に変換しモーターの出力をコントロールする。その下には自社開発による三相交流モーターが搭載される。

何とも不思議なルックスに?マーク

日産 電気自動車「リーフ」 リアエンド 画像
 リーフのデザインは、すでにいろいろなことが語られているが、少なくともひと目見ただけで飛びつきたくなるほどカッコ良いクルマではない。また電気自動車になったことで従来のガソリン車とは全く違う独特の外観デザインになった感じでもない。
 強いていえば、エンジンを冷やすラジエターがなくてすむので、グリルレスのデザインとして、そのフロント部分に充電口を持つようにしたのが新鮮な部分である。
 クルマの後部が出っ張って、出っ尻のような形になっているのは、後方からの衝突安全に対応したものだが、このあたりがカッコ悪さにつながっている。

 外観とは違ったインテリア回りのデザインは新鮮な感じにあふれている。メーターパネルのデザインはこれまでにない新感覚のものだし、コンソールに設けられたシフトレバーのデザインも新しくて操作性に優れている。インストセンターに配置されたカーナビの周辺などにピアノブラックが採用されてインテリア回りの質感を高めていると評価していい。

 ボディは全長はコンパクトカー並みで全幅を広げた3ナンバー車のサイズ。最近では日本でもこうしたパッケージングのクルマが当たり前で、特に世界市場をターゲットに開発されたクルマの全幅は5ナンバーの枠内というわけにはいかない。適度なコンパクトカーであり、全幅の広さによって室内にもゆったりした空間が確保されている。
 前後のシート下を中心にリチウムイオン電池が搭載されている。専用に開発されたプラットホームに効率的に搭載することで、居住区間やラゲッジスペースが確保された。ラゲッジスペースは特に広いというほどではないが、ゴルフバッグが2個入る広さだという。

日産 電気自動車「リーフ」 リアシート インテリア 画像

後席はまずまずの広さだが、床下や座面下にバッテリーが搭載されている関係で、足元や頭上の空間はティーダなどの同等のサイズのハッチバック車に比べ少し劣る。

日産 電気自動車「リーフ」 フロントシート 室内 画像

たっぷりしたサイズのフロントシートは掛け心地も良好。空間も余裕たっぷりだ。ただしシートリフターはシート全体が上下する手動のダイヤル式というのは、300万円以上するクルマにしては残念なところ。

日産 電気自動車「リーフ」 インパネ周り 画像

上下分割されたメーターと手元操作するシフトが近未来的なリーフのインパネ周り。プッシュスタートボタンを押せば、パソコンのように独特のスタートアップサウンドが静かに奏でられるのがいい感じ。


日産 電気自動車「リーフ」 ラゲッジルーム 荷室 画像

右のカバンは普通充電用の専用充電ケーブルを納めた充電ケーブルバッグ(オプション)。荷物を外部の視線から守るトノカバーはGグレードのみ標準装備で、Xグレードにはオプションだ。

日産 電気自動車「リーフ」 ラゲッジルーム 後席前倒し 荷室拡大 画像

後席を倒し荷室空間を拡大した状態。バッテリーや充電器ユニット等を床下やシート背面などに納めるため、ラゲッジからフラットな床面、というワケにはいかない。

日産 電気自動車「リーフ」 シフトノブ 画像

電制シフトはエコモード付き。パソコンのマウスのように手のひらで操作出来る。写真では見切れているがその手前には電動パーキングブレーキが装備されている。

スマートフォンから充電状況の確認やエアコンの事前動作を指示する

電制シフトはエコモード付き。パソコンのマウスのように手のひらで操作出来る。写真では見切れているがその手前には電動パーキングブレーキが装備されている。

クルマから離れていても、スマートフォンなどから充電状況の確認や予約、エアコンの事前動作設定などが遠隔操作出来る

 リーフに乗る前に、携帯電話を使って充電状況を確認したり、あるいはエアコンを作動させることができる。今回も別の場所でその作業をした上で試乗車に向かった。特に充電コードをつないだ状態でエアコンを作動させておけば、走り出すのと同時にエアコンのスイッチを入れるのと違って、電気を専ら走るために使える。
 ちなみに携帯は標準的なタイプよりもスマートフォンのほうが圧倒的に便利。リーフに乗る人は携帯もスマートフォンに買い換えたほうが良さそうだ。

 駐車場に行ってまずは充電コードを外す。これを外さないとクルマが動き出せるようにならない。つないだままで走り出してしてコードを引きちぎってしまうことはないようになっている。
 運転席に座り、ブレーキペダルを踏んだ状態でステアリングの左下あたりに設けられたスターターボタンを押すと、メロディが鳴ってリーフのシステムが起動したことが分かる。これはパソコンのスイッチを入れるとメロディが迎えてくれるのと同じで、今ではごく当たり前の感覚である。同時にインパネ内にクルマの絵が表示されるので、システムの起動は目で見ても確認できる。
 ハイブリッド車ではインパネ内の表示だけで音で知らせる仕組みにしていないのが普通だから、リーフのほうがより親切な設定だ。

日産 電気自動車「リーフ」 メーター 画像

メーターは上下二分割に表示される。写真は下のメーター。上部の○が並ぶ表示はパワーメーターで、モーターの駆動と回生を示す。中央部には充電や電費情報、各種警告灯、さらにはタイマー充電、タイマーエアコンの設定などをマルチ表示する。

日産 電気自動車「リーフ」 航続距離 表示 ナビ画面 画像

専用の車載通信ユニットを搭載したEV専用のカーウィングスナビゲーションシステムを全車に標準装備するリーフ。平均電費や航続可能距離の表示など、まだまだ航続距離の短いEVをサポートする機能が多彩に盛り込まれている。

日産 電気自動車「リーフ」 隣接充電施設表示 ナビ 画像

自車から最も近い充電スポットを示す機能は任意で表示するほか、バッテリー残量が残り僅かになると自動的に検索し表示、最終的には緊急対応の電話オペレーターにつなぐよう促す。もちろん通信機能により、常に最新の情報へアップデートされるのは言うまでもない。


日産 電気自動車「リーフ」 メーター上部 画像

2分割されたメーター。写真は上部の表示で速度・外気温・時刻を表示。さらに左の半円状のエコインジケーターは今のエコ状態を、樹木の形のエコツリーはエコ度累積結果を表示する。その情報は通信でデータセンターに蓄積されWebなどで確認することも可能だ。

日産 リーフ EV専用プラットフォーム イメージ 画像

EV専用のプラットフォームを用いたリーフ。乗員の床下にはシートや足元スペースにあわせ変形配置された薄型リチウムイオンバッテリーを配置。重量バランスや重心位置の最適化を図る。その周囲には強固なフレームでバッテリー等を前後左右の衝突から守る構造となっている。

日産 リーフ ヘッドランプ 形状 イメージ 画像

リーフのヘッドランプは空気の流れを制御する独特の形状となっていて、ドアミラーの風切音を低減させる効果を生む。床面も平滑な形状で空気抵抗を軽減し風切音を抑える。静かな電気自動車ゆえの配慮だ。またこれらはさらに低電費にも有効だ。

音もなくグイッと進む力強い走り

日産 リーフ 走り 走行シーン 画像
 そろそろと走り出すと、室内は無音状態だ。実はこの状態でも車外ではクルマの接近を知らせるモーターの回転音のような音が鳴っているのだが、低速時ではその音も小さいので窓を閉めた車内では分からない。時速30kmまでは音が鳴るので速度を上げていくと分かるが、それでもかなり控えめな音だ。
 大きな通りに出て信号待ちをすると、室内では音も振動も感じない。これはプリウスなどのハイブリッド車もアイドリングストップ状態になるから同じ感覚で、電気自動車ならではのことではないが、ガソリン車から乗り換えた人は大きな違いを感じるだろう。
 信号待ちの先頭からアクセルを踏み込むと、その瞬間に“速っ”という感じを受ける。スタート時には音もなくグイという感じで発進し、そのまま加速が伸びていくからだ。立ち上がりの時点から最大トルクを発生する電気自動車ならではの走りだと評価できる。

 走りのバランスは全体に良い。これは重い電池がクルマの低い位置に搭載されているためで、重心の低さが走りの安定感につながっている。ステアリングの操舵フィールはちょっと軽すぎる印象もあったが、高速道路を走っているときにはそれなりに座りの良いステアリングフィールだった。
 ステアリングの軽さに比べてブレーキペダルはかなり重い。力を入れて踏む必要があってちょっと変わったペダル感覚という印象だった。リーフでも回生ブレーキを採用しているが、ブレーキのつながりには違和感がなく、ペダルの重さ以外は自然な感じだった。

日産 リーフ 走り 試乗 画像

悪天候下、最悪の条件で試乗したところ・・・

日産 リーフ 横浜横須賀道路の横須賀パーキングエリアで急速充電中の日産 リーフ

横浜横須賀道路の横須賀パーキングエリアで急速充電中の日産 リーフ

 試乗日は厚い雲が立ち込めた雨の降る寒い日で、電気自動車にとっては最悪の条件。エアコン、ヒーター、ワイパー、ヘッドライトなどを作動させなければならず、走ること以外に電気を使う条件がいっぱいに揃っていたからだ。これは試乗をするにはむしろ良い条件だったといえる。
 スタート時に160kmほどの航続可能距離が表示されていたメーターは、高速道路を走っていくと良いペースで航続可能距離が短くなっていく。直近の走行状態を反映して表示される仕組みで、エアコンをオン/オフするだけでも1割ほど表示される数字が変わる。
 横浜のみなとみらいをスタートし、観音崎を目指したが、横須賀PAのあたりで航続可能距離が半分くらいになった。このPAには急速充電器が設けられているので、それを使おうと思ったら、一般の先客がいてすぐには充電できない状態。迷っているうちに別の試乗車が並んでしまったので、ここでの充電は諦めて帰りの上り線で充電することに。
 上り線でも先客がいたが、今回は走り方によっては横浜まで帰れない可能性があるので順番待ちをして充電器をつないだ。すると表示されるのは約1時間の充電時間表示。え〜っと思ったが、いっぱいに充電するにはその時間がかかるものの、その手前までの充電なら15分から30分程度で入る。今回も20分ほど充電したら航続可能距離は大きく回復した。
 この日は雨が降っていたが、屋外での充電でも特に問題はなし。充電中は地デジチューナー付きのカーナビでテレビを見ながら待っていた。

やはり高速道路での長距離移動はまだ不向き

日産 電気自動車 リーフ 205/55R16専用エコタイヤと16インチアルミホイール 画像

205/55R16専用エコタイヤと16インチアルミホイールを標準装備する

 今回は3時間の試乗を2回体験し、最初は高速道路中心、2回目は一般道中心の走りを試したが、高速道路中心で走るとやはりリーフはまだ厳しい。航続可能距離がどんどん短くなっていくので、それを気にしながら走らないといけないからだ。
 リーフのカーナビ地図には、残りの電気量で走れる範囲が表示され、その範囲内にある急速充電器の位置なども表示されるので、バックアップする態勢はそれなりに整っている。でも先の例のようにほかのクルマが急速充電器を使っている可能性があるほか、夜間には使えない設置場所もある。
 なので、リーフで長距離を走ろうとするなら、途中の充電ポイントなどをチェックしておき、ある程度計画的に走ることも必要。それも充電待ちが長いときに備えて予備の充電ポイントも考えておくといいだろう。

 逆に市街地の一般道を中心に走っているときには本当にストレスのない良いクルマという印象だった。普通のガソリン車に比べて負けている部分はないし、航続距離も全く気にしなくてすむ。
 日産は、リーフをガソリン車と置き換えが可能なクルマとして開発を進め、実際にかなりの部分までそれを実現してきたが、それでもまだ航続距離の壁は残る。
 なので、毎週のように100km以上の距離を走る人などにはリーフは向かない。やはり市街地の一般道での走行を中心に、自宅からそう遠くない距離を走るユーザーが選ぶクルマだろう。
 自宅に充電器を設置できるかどうか(マンションなどではかなり難しい)も含め、ある程度限定的なユーザーが、ある程度限定的な使い方をするのがリーフである。条件を満たせる人にはお勧めできるが、条件に合わない人が無理して選ぶと不便を感じることが多くなる。リーフの持つ意義と限界をしっかり踏まえたクルマ選びをしたい。
[レポート:松下 宏]

日産 リーフ リアビュー 画像

代表グレード 日産 リーフ X[FF]
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4445x1770x1545mm
車両重量[kg] 1520kg
総電力量[kWh] 24kWh
最高出力[ps(kw)/rpm] 109ps(80kW)/2730-9800rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 28.6kg-m(280N・m)/0-2730rpm
JC08モード交流電力量消費率[Wh/km] 124Wh/km
JC08モード一充電走行距離 200km
定員[人] 5人
消費税込価格[万円] 376.425万円 (政府による最大78万円の補助を受けた場合 298万4250円)
発売日 2010/12/20
レポート 松下 宏
写真 CORISM編集部・日産自動車

【日産 リーフの生産工程を見る】

日産 電気自動車「リーフ」 追浜工場 生産ライン 画像
 世界に先駆け量産される電気自動車の日産 リーフ。生産工程においても画期的な取り組みをしている。なんと、電気自動車とガソリンエンジンのクルマが混流で生産されているのだ。そのため、ガソリンタンク取り付けの工程ゾーンでリーフにはバッテリーパックを搭載したり、フロントにエンジンを搭載する工程ゾーンでは同じようにインバーター・モーターを搭載するなどの、作業上での工夫がなされているのが興味深い。神奈川県横須賀市にある生産拠点、日産・追浜工場で「ジューク」や「キューブ」などとともに続々と生産されるリーフの誕生シーンをご紹介しよう。
(レポート:CORISM編集部)
日産 電気自動車「リーフ」 充電器搭載エリア 追浜工場 生産ライン 画像

リーフの後席後ろに充電器ユニットを搭載する工程。電動のアームを用いて、作業員の負荷を大幅に軽減させている。

日産 電気自動車「リーフ」 バッテリー組み付けライン 追浜工場 画像

リーフの床下にリチウムイオンバッテリーのパックを装着する工程。8つのボルトで車体へ強固に取り付けられる。

日産 電気自動車「リーフ」 モーター・インバーター組み付けライン 追浜工場 画像

インバーターとモーターのユニット部を、まるでエンジンを搭載するようにフロントに組み付けるのがユニークだ。


日産 追浜工場 「ジューク」のガソリンタンク 組み付けライン 画像

リーフの床下にバッテリーを組んでいたエリアでは、同時に流れるガソリン車ジュークの床下にガソリンタンク組みつけを行っていた。

日産 追浜工場 「キューブ」エンジン組み付けライン 作業工程 画像

リーフのフロント部にモーターなどを組みつける後ろでは、キューブにガソリンエンジンを搭載している。

日産 追浜工場 ラインオフ前の最終検査ライン 画像

生産ライン終盤で電気を充電されたリーフは、他のガソリン車と同じ検査工程に入り、同じように走行テストを実施。メーターなどの作動チェックも行われたのちラインオフする。

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(レポート:松下 宏

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