マツダ、好調の要因。その1、ハイブリッドと同等の燃費を達成した低燃費技術SKYACTIV
ホンダ のフィット・ハイブリッド と同等の10・15モード燃費30km/lをガソリンエンジンだけで達成した新型マツダ デミオ 13-SKYACTIV。マツダ車 で月間の販売台数が1万台を超えたのは、2004年3月のデミオ以来で、実に7年4カ月振り。つまり、それほど新型マツダ デミオは好調ということだ。
今回の好調要因は、大きく分けて2つある。ひとつ目は、やはり30km/lという低燃費だ。この低燃費は、マツダのSKYACTIV と呼ばれる技術により達成できた。ガソリンエンジンは、ガソリンを含んだ空気との混合気を圧縮し爆発させる。この時、混合気を圧縮する比率がある。一般的にこの圧縮比を上げれば上げるほど、燃費が良くなる傾向になる。しかし、圧縮比が高まれば高まるほどに、ノッキングと呼ばれる自己着火による異常燃焼が問題になりスムースに走ることができないエンジンになる。それを、独自の技術で克服したのがSKYACTIV技術なのだ。参考だが、トヨタのヴィッツが11.5の圧縮比なのに対し、新型マツダ デミオは14.0であることからも、SKYACTIVの高圧縮比技術がどれほどのものかよく分かると思う。
マツダ、好調の要因。その2、絶妙の価格設定。真のライバルはトヨタのヴィッツ?
そして、新型デミオの好調の理由、二つ目は価格だ。発売1ヶ月後の受注状況は、マツダの予想を超え13-SKYACTIVが全体の70%を占める。フィット ハイブリッドの発売直後も約70%がハイブリッドを選んでいることからも、顧客の燃費志向は衰えていない。絶妙だったのは、フィット ハイブリッドとの価格差。デミオ13-SKYACTIVの価格は140万円。対してフィット ハイブリッドの価格は159万円と価格差は19万円。コンパクトカー は、当然価格志向になる傾向が強いので、20万円弱という価格差は大きい。そういう意味では、フィット ハイブリッドとは違う顧客層になる。
また、トヨタ のヴィッツ と比べると、また絶妙な価格になっている。ヴィッツのFアイドリングストップ付きが135万円。デミオとの価格差は5万円。デミオはアルミホイール付きなので、装備関係はほぼ互角以上。燃費はヴィッツが26.5km/lとデミオに対して10%ほど劣る。実燃費は無視した比較なら、5万円の価格差は無いに等しい。こんなことからも、実際に購入する場合のライバルはフィット ハイブリッドというよりも、ヴィッツなのかもしれない。
ただ、オートライトや後席中央の3点式シートベルトなどが装備できるSKYACTIVパッケージ1が5万円のオプション。キーレスエントリーやイモビライザーなどが装備でききるSKYACTIVパッケージ2が、さらに5万円のオプションとなっている。それなりの装備が必要というのなら、プラス10万円が足され150万円コースになる。
デミオのグレード選びは、13-SKYACTIVしかない!
さて、デミオの13-SKYACTIVに試乗すると、ちょっと拍子抜けするが良くできた普通のガソリン車だ。SKYACTIVだからと言って、とくに変わったことはない。逆に低速トルクもあり、乗りやすく感じた。これで燃費が良いのだから、燃費もフィーリングも劣るグレード13C-V(129万円)を買う理由が見当たらない。価格が安いほうがいいというのなら、中途半端な価格帯の13C-Vより、4ATを積んだ13C(114.9万円)を選ぶといいだろう。気になる燃費だが、試乗コースが箱根だったため参考程度で概ね20弱〜22km/l。信号もほとんど無いので、アイドリングストップ機能も役に立っていなかった。
ちょっと微妙だぁ、と感じたのがi-DM。快適な運転操作と燃費向上をサポートするシステム。マツダでトップクラスのテストドライバーの運転テクニックをベースとして、診断する機能で、いかに運転がヘタかというのが実感できる。そもそもの話をしてしまえば、運転が上手くなりたいという想いがある人には参考になるが、運転技術なんてどうでもいいと考えているほとんどの人には猫に小判。最初のうちは、面白がるがそのうち使われなくなる装備だろう。燃費向上に特化したシステムで良いのではないだろうかと評価したい。
残念ながら、最近は運転を楽しむなんて志向の持ち主は、ごくわずかだ。こういった装備を標準装備化するよりも、後席中央の3点式シートベルトやヘッドレストなどのすべての人が享受できる基本的安全装備をオプションにするのではなく標準装備化を進めて欲しい。
エンジンだけでない、着実な進化こそがマツダの真骨頂
エンジン同様に、サスペンションやボディも大きく進化した。エコタイヤを装着しているのにもかかわらず、マイナーチェンジ前のモデルよりサスペンションから伝わってくるゴツゴツ感が少ない。安っぽさを感じさせないシットリとした乗り味が特徴だと評価したい。
これは、主にサスペンションやボディの剛性アップによるもの。ワインディングなどでも、ボディとサスペンションの変更が生きていた。とくに、リヤサスがしっかりと地面をつかむ。スピードを上げていっても、ホイールベースが短いコンパクトカーにありがちなフラフラする印象は希薄。安心感が高い。
燃費だけにフォーカスすることなく、走りの質までアップさせてきたのは、走りにこだわるマツダらしさだ。今回のデミオはマイナーチェンジなので、SKYACTIV技術はエンジンのみ。今後発売されるSUV のCX-5 やアクセラには、ミッションやディーゼルエンジン など更なる低燃費技術が投入される。ホンダが独自のハイブリッドシステム IMAをドンドンとコンパクトカーに導入し、低価格化を進める。マツダの低燃費新技術SKYACTIVも、どれだけ低価格化できるかがカギを握るだろう。
代表グレード | マツダ デミオ13-SKYACTIV |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 3900×1695×1475mm |
車両重量[kg] | 1010kg |
総排気量[cc] | 1298cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 84ps(62kw)/5400rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 11.4kg-m(112N・m)/4000rpm |
ミッション | CVT |
10・15モード燃費[km/l] | 30.0km/l |
定員[人] | 5人 |
税込価格[万円] | 140.0万円 |
発売日 | 2011/6/9 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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