2.0Lエコブーストエンジンを搭載したジャガーXJラグジュアリー
ジャガーのフラッグシップサルーンであるXJの2013年モデルに、2.0Lエンジンの搭載車が追加された。直列4気筒2.0Lの直噴ターボ仕様で、フォードのエコブーストエンジンをベースにしている。ジャガー・レンジローバーは、フォードとの資本関係はなくなったが、技術的な提携関係はまだ残っていて、フォードから供給を受けている。
フォードは、いろいろな排気量でエコブーストエンジンを開発していて、小さいものは1.0Lまであるくらいだから、2.0Lは動力性能などの面でも余裕のあるエンジンだ。現に、2.0Lのエコブーストは車両重量が2tを超えるSUVのエクスプローラーにも搭載されていて、重量ボディに対しても十分な動力性能を示している。またXJと同等の重量をもつレンジローバー・イヴォークにも搭載されている。
車両重量が1780kgの2.0Lエンジンを搭載するXJラグジュアリーが走りに不満を感じさせるものではないことは、乗る前から容易に想像がついていた。実際に走らせた印象もそうしたものだった。
今回の改良は年次改良なので、内外装のデザインなどは基本的に変更を受けていない。ボディカラーの一部が変更された程度だ。
パワーやジャガーらしさに不満なし! しかし、アイド&排ガスレベルは物足りない
運転席に乗り込むと、スターターボタンが赤く点滅している。ドットッと鼓動を感じさせるような点滅だ。そのボタンを押してエンジンを始動させると、ダイヤル式のシフトセレクターが競り上がってくる。ダイヤルをDレンジに回して発進だ。この儀式はジャガー独特のもので、XJオーナーの満足感を高める仕様である。
右側のドアからフロントガラスの直下部分を通って、左のドアにまで回り込む木目パネルが、ジャガーならではのラグジュアリーさやインテリアの質感を表現している。これもジャガーに乗ることを実感させるものだ。
2.0Lエンジンが発生する動力性能は、177kW/340N・mだ。この数値はイヴォークのものと変わらない。FFベースの4WD車であるイヴォークは横置きで、FR車のXJは縦置きという違いはあるが、基本的に同じエンジンが搭載されている。
発進が力強くてスムーズなのは、340N・mという最大トルクを1750回転という低い回転数で発生するからだ。アクセルを踏み込んで回転数を上げて行っても、このトルクはさして落ち込みを感じさせることがなく、5000回転の上までずっと力強さが維持されていく。
ジャガーXJには、V型6気筒3.0LやV型8気筒5.0Lのスーパーチャージャー仕様エンジンが搭載されているから、それらと比較したら物足りない動力性能ということになるのかも知れないが、XJラグジュアリーだけに乗っていたら、特に不満を感じることなく走らせられる。
4気筒エンジンであることよる不利が生じやすい振動や騒音についても、高級サルーンであるジャガーXJに見合ったレベルにあり、マルチシリンダーエンジンとほとんど変わらない感覚である。同じ条件で同じように走らせても感じ取れるかどうかというレベルだ。
ZF製の8速ATは、最近ではさまざまな車種に搭載されるようになっているが、車種ごとにきめ細かな適合が行われているとのこと。XJ の2.0L車でも滑らかな変速フィールを見せる。多段ATは、ともすれば変速の回数が多くなって違和感につながることがあるが、この8速ATはギア比が細かく刻まれている上に変速ショックそのものが良く抑えられているので、走りの静かさと滑らかさにつながっている。
ATのセレクターをDレンジからSレンジに変更すれば、より低い回転数を維持してスポーティな一段と力強い走りを実現する。高速クルージングから追い越し加速に入るときなどは、Sレンジを利用したら良い。
XJラグジュアリーに搭載される2.0Lエンジンについて、不満点を指摘するなら、スタート/ストップ(アイドリングストップ)機構がついていないことだ。今回の改良に合わせて、V型6気筒3.0LやV型8気筒5.0Lエンジンにはアイドリングストップ機構が設定されたのに、ダウンサイジングしたこのエンジンに設定がないのはいかにも物足りない。
排気ガス性能も三つ星にとどまっていて星がひとつ足りないし、燃費基準も達成していないので、低排出ガス化とアイドリングストップ機構によるさらなる燃費の向上を望みたい。
ジャガーを好む富裕層は、2.0Lエンジンをどう評価するのか? 今後の動向に注目だ!
このように、走りに関しては全体に良くできたクルマという印象だったXJラグジュアリーの車両本体価格は900万円ちょうど。XJのラインナップの中で唯一1000万円を切っている。エンジンだけでなく、装備や仕様の違いなどもあるので単純ではないが、XJラグジュアリーを設定したことはXJのユーザー層を広げるのは間違いないと思う。
その一方で、従来からのXJのユーザーが2.0L車を歓迎するかというと、ちょっと微妙なところがある。メルセデス・ベンツやBMW、これにアウディを含めても良いと思うが、いわゆる高級車の主流にあるクルマとは明確に異なるテイストを持つのがジャガーXJだった。ニッチな高級車であることに魅力を感じてとXJを選んでいたユーザーにとって、2.0L車がどれだけ魅力的なものに映るかは微妙だと思う。
世の中は、高級車の世界でもエンジンのダウンサイジングの方向に向かっていて、XJラグジュアリーはその流れの中にあるクルマであるのは間違いない。どのように受け入れられるかは、今後注目にされるところだ。
ジャガーXJラグジュアリー価格 スペックなど
代表グレード | ジャガーXJラグジュアリー |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 5,315×1,900×1,455mm |
ホイールベース[mm] | 3,030mm |
トレッド前/後[mm] | 1,6250/1,605mm |
車両重量[kg] | 1,780kg |
総排気量[cc] | 1,998cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 177(240)/5,500 |
エンジン最大トルク[N・m/rpm] | 340/4,400 |
ミッション | 8速AT |
タイヤサイズ | F:245/45ZR19 R:275/40ZR19 |
JC08モード燃費 | 9.3km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 9,000,000円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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