同じフォードのエクスプローラーはFFもあるが、クーガはAWDのみの設定
フォード クーガがフルモデルチェンジを受け、2代目となるフォード クーガが登場した。フォード クーガは、ニッチなクルマなので覚えている人は少ないかも知れないが、初代モデルは日本では2010年10月にデビューしている。
わずか3年足らずでフルモデルチェンジということになるが、これは初代モデルの日本での発売が遅かったためだ。今回は比較的早い時期に日本に導入されたので、結果としてモデルサイクルが短くなる形になった。
最近のフォードは、ワン・フォードという掛け声の下にクルマの開発を進めていて、世界統一基準でクルマ作りを考えるようになっている。ヨーロッパでもアメリカでも、あるいはアジア・パシフィックでもという形で、世界中で通用するクルマを目指している。
先に発売されたフォーカスがそうだったし、今回のクーガもフォーカスの基本プラットホームを使って作られたSUVなので、当然ながら同じ考えで作られている。
新型フォード クーガは、ミドルクラスのSUVという基本は変わらない。その上で、デザイン、パワートレーン、AWDシステム、装備などが全面的に新しくなった。最近はSUVでもFF車が増えているが、しっかりAWDを採用している点も注目される。
オリジナリティの高いエクステリア&インテリアデザインは、クーガの魅力のひとつ
クーガの外観デザインは、フォードのデザインテーマであるキネティック・デザインが採用されている。余裕ある全幅を生かして、立体感のあるプレスラインやボリューム感を持たせた面構成などによって、躍動感のあるデザインに仕上げている。
フロントバンパーやテールランプなど、ディティールの部分にもキネティック・デザインが徹底されているのが分かる。
インテリアもほかのクルマと似ていない個性的なインパネデザインだけでなく、素材の選択や質感の表現なども含めて、デキの良さを感じさせるデザインになっている。
クーガの試乗車は、カーナビを装着していないクルマだったが、SONY製のオーディオ部分を取り外して代りに2DINのカーナビ&オーディオを装着するか、オーディオを生かしてインパネ上部に折り畳み式のカーナビを装着するかの選択になる。いずれもディーラーオプションで用意されている。
今回の新型クーガは、ボディがやや大きくなって、特に全長が95mm延長された。その延長分は後席の居住空間やラゲッジスペースの拡大に使われており、ゆったりした余裕のある後席空間が作られている。
車重が重くても軽快感のあるフットワークは、欧州フォードならではの味付け
クーガに搭載されたエンジンは、1.6Lのエコブースト(直噴ターボ仕様)エンジンに変わった。フォードはさまざまな排気量のエンジンをエコブーストに切り替えていて、フォーカスは生産するタイでエコブーストエンジンが作れなかったため、標準エンジンを搭載していたが、クーガはスペインで生産されることもあってエコブーストエンジンが搭載された。
動力性能は134kW/240N・mの実力で、従来のモデルに搭載されていた2.5Lターボに比べると数値的には劣るものの、動力性能性能と環境性能を高次元でバランスさせたのがエコブーストの特徴で、燃費は20%以上の向上が図られている。
クーガはフォーカスの基本プラットホームを使って作られたモデルながら、SUVである上にAWD車であることから、車両重量はフォーカスに比べて300kgほど重くなって1700kg前後に達している。乗る前にはこの重さだと、さすがにどうかと思ったが、クーガは意外に良く走るクルマだった。
最大トルクを1600回転から5000回転まで維持するフラットなトルク特性もあって、低速域から必要十分な走りを示してくれた。アクセルを踏み込んだときも、このトルク特性が生きて滑らかな加速を示してくれる。
ただ、いただけなかったのはサムシフトと呼ぶ6速ATのマニュアル操作だ。シフトレバーに設けられたサムスイッチを押して変速操作する仕組みは、フォーカスと同様に扱いにくいものだった。これは早期にパドルに切り替えて欲しいと思った。
動力性能以上に好感が持てたのは足回りだ。クーガには、走行条件に応じて前後の駆動力配分を変化させる最新のAWDシステムに加え、トルクベクタリング機能が備えられている。
左右輪の駆動力配分を切り替える本格的なタイプではなく、コーナリング時に荷重が抜けて空転しがちな内側のタイヤにブレーキをかけるというESPの機能を使ったタイプだが、これによってコーナーでの回頭に優れた走りが実現される。また、電動パワーステアリングのフィールも上々のものだった。
車両重量の重さやAWDが落ち着いた感じの走りにつながっていて、トルクベクタリングが軽快さを生んでいる。そんな感じの走りであり、重心高が高めのSUVの割には操縦安定性のレベルも高かった。
スズキがスイフトの開発にあたって、フォード・フィエスタをベンチマークにしたと言われるなど、最近のフォーカスの足回りは、他のメーカーからも高く評価されている。その良さを体感できるのがクーガでもある。フォーカスの足回りも相当に良かったが、それ以上ともいえるような印象を受けたのがクーガの足回りだった。
ニッチなフォードだが、個性を重視するのなら、ぜひともチャレンジして欲しいSUV
試乗した上級グレードのタイタニアムには、バンパー下に足を出し入れするだけでバックドアが開閉するシステムや、衝突回避・軽減ブレーキのアクティブ・シティ・ストップ、斜め広報視界を確保するBLIS、ロール・スタビリティ・コントロール付きのアドバンストラックなど、さまざまな快適装備や安全装備が備えられている。
充実装備とはいえ385万円の価格は、やや高めの印象になるのは避けられない。でも、輸入車のSUVでAWD車であることを考えると、何とか納得できる範囲内といえそうだ。
フォードは、日本ではニッチなブランドであるとともに、アメリカ製のエクスプローラーを中心にした売れ行きでヨーロッパ製のモデルの比率は高くない。それだけに価格設定も厳しいものがあるのだが、クルマ自体は相当にデキが良いと思う。
販売網が充実していたなら、けっこうな売れ行きを示すのではないかと思えるようなクルマなので、ほかの人があまり乗っていないちょっと変わったSUVが欲しいと思う人にお勧めできるクルマである。
新型フォード クーガ価格、スペック、燃費など
新型フォード クーガ価格
タイタニアム:385万円
トレンド:340万円
代表グレード | フォード クーガ タイタニアム |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,540x1,840x1,705mm |
ホイールベース[mm] | 2,690mm |
トレッド前/後[mm] | 1,565/1,565mm |
車両重量[kg] | 1,720kg |
総排気量[cc] | 1,595cc |
エンジン最高出力[kW (ps)/rpm] | 134[182]/5,700rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 240[24.5]/1,600-5,000rpm |
ミッション | セレクトシフト付電子制御6速オートマチック |
タイヤサイズ | 235/50R18 |
燃費 | JC08モード 9.5km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 3,850,000円 |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
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