アクアとヤリス2台で、シェア拡大を狙う
トヨタは、ハイブリッド専用車のアクアを約10年振りにフルモデルチェンジし発売を開始した。新型アクアは、今回のフルモデルチェンジで2代目となっている。
初代トヨタ アクアは、2011年末に登場した。当時、ヤリスの前身であるヴィッツがあった。しかし、トヨタは、同じBセグメントのコンパクトカーセグメントに2台のモデルを投入するという異例の戦略に出た。
カニバリ(共食い)上等! と、言わんばかりに 、アクアはハイブリッド専用車として、ヴィッツはガソリン車として役割を分けたのだ。こうした手法で、このクラス全体でのシェアを伸ばす考えだ。
しかし、トヨタの思惑は、若干、外れることになる。アクアは、超大ヒットし登録車新車販売台数ナンバー1の常連となった。その一方では、ヴィッツの販売台数は伸び悩む。
その後、ホンダ フィットハイブリッド、日産ノートe-POWERが投入され、アクアも徐々に販売台数を落としていった。ヴィッツもモデル後期に、ハイブリッド車を投入するものの、再度、人気モデルとなることはなかった。
そして、ヴィッツの後継としてヤリスが2020年にデビュー。モデル後期になっていたアクアは、姿を消すかと思われていた。ヤリスには、最新のハイブリッドシステムとGA-Bプラットフォームなどが採用され、飛躍的に性能が向上したからだ。ところが、2代目新型アクアは、その間、着々と開発されていた。
すでに、トヨタは登録車販売シェアが50%超となっている。これは、独占的状態といえるもの。その状態でありながら、2代目新型アクアを投入することで、手を緩めることなく日本マーケットでの覇権を、さらに確固たるものにしようとしている。この緩みのない戦略が、トヨタの強さでもある。販売台数の多いこのクラスで圧倒的なシェアを獲得すれば、登録車販売シェア60%も見えてくるだろう。
ダウンサイザーの受け皿としての役割も
そして、ついに2代目新型アクアがデビューする。前回のアクアとヴィッツの関係と同じく、それぞれ異なる役割をもつ。
ヤリスは、スポーティでキビキビ感ある走りが魅力。そのため、やや硬めのサスペンションセッティングになっている。
こうしたセッティングは、好む顧客がいる一方で、スポーティさはあまり必要なく、乗り心地重視で車内の質感や居心地を重視する顧客も多い。アクアは、主にこうした顧客向きのモデルとしての役割を持っている。
こうした、役割をもつモデルは、ダウンサイザーの受け皿としての役割も担う。トヨタユーザーは、比較的高齢な傾向があり、高齢によりクラウンやプレミオ、アリオンなどからコンパクトカーに乗り換える顧客向けともいえる。
上質で存在感あるデザイン
2代目新型トヨタ アクアのボディサイズは、全長4,050×全幅1,695×全高1,485mm、ホイールベースは2,600mmとなった。 初代アクアと比べると、全長と全幅は同じで、全高が30mm高くなった。ホイールベースは50mm長くなっている。
また、現行ヤリスと比べると、全長で+110mm、全幅は同じ、全高は-15mm、ホイールベースは+50mmとなった。
2代目新型アクアのデザインは、「Harmo-tech」(知性・感性を刺激する、人に寄り添う先進)がコンセプト。上質・シンプル・クラスレスなデザインとした。
このデザイン、なかなか秀逸で面の張りが強く、コンパクトカーながらどっしとした安定感と存在感がある。前後に伸びやかなモノフォルムシルエットのキャビンをもち、左右に張り出したリアフェンダーが特徴的。アクアらしい、スマートでエモーショナルかつ動感のあるエクステリアとしたという。最近のトヨタ車としては、珍しく初代モデルのイメージを残したデザインだ。
ボディカラーは豊富。質感の新規開発「クリアベージュ」をはじめ、上質感のある全9色を設定した。
中高年にありがたい!? 視認性の良い10.5インチモニターを用意
2代目新型アクアのインテリアは、機能をひとくくりに集約し、シンプル・クリーンかつ上質な空間を表現したという。ただ、実際のインパネデザインは、結構デコラティブで色々な線や面が複雑に絡みあっている。こうしたデザインが、シンプルと言えるのかは微妙だが、全体的に上質でクリーンな印象は感じる。
その上で、クラスを超えた装備も魅力。ZとGグレードを選択すると、オプションで合成皮革とファブリックを組み合わせた上質なシートに運転席電動パワーシートなどがセットで装備可能。ヤリスにはパワーシートの設定がないので、より快適で便利な空間になる。
また、ボックスティッシュなどを収納できる助手席アッパーボックスや、センターコンソールには充電ケーブルをスッキリ格納できるスライド式トレイを採用。使い勝手よい仕様となった。
装備面では、操作性・視認性に優れた10.5インチ大型ディスプレイオーディオをトヨタコンパクトカーとして初採用。視認性のよい大型ディスプレイは、中高年にはありがたい装備といえる。
トップレベルの予防安全性能を誇るトヨタセーフティセンスだが・・・
予防安全装備では、最新のトヨタセーフティセンスが全車標準装備化された。どのグレードを買っても安心して乗れる。
重要な自動ブレーキでは、昼夜の歩行者、昼間の自転車を検知。さらに、右左折時の歩行者と右折時の対向車にも対応する。頻繁に起きている交差点事故パターンにも対応しているので、より安全なクルマといえる。このレベルの機能は、国産車トップレベルだ。
運転支援機能として、全車速追従式クルーズコントロールであるレーダークルーズコントロールの装備される。高速道路などの渋滞時に便利な機能で、簡単な操作でストップ&ゴーを繰り返すことができる。
この機能に加え、レートレーシングアシストと呼ばれる車線維持機能も加わり、高速道路でのクルージング時のリスク軽減や渋滞時の疲労軽減に役立ち、結果的に安全なドライブが可能となる。
その他の機能として、アクセルとブレーキの踏み間違え防止機能(パーキングサポートブレーキ)は、一部グレードでオプション。この機能には、従来の前後進行方向に加え、新たに側方の静止物を検知。前進時や後退時の巻き込み接触などで、警報とブレーキ制御で接触回避を支援。トヨタコンパクト車初の技術を採用した。
ただ、後側方車両接近警報であるブラインドスポットモニターもオプション。トヨタセーフティセンスだけでは、完璧とはいえない状態。トヨタセーフティセンスの機能は、かなり優秀なのだから、これくらいの装備も標準装備化して、より安全性能の高いクルマにして欲しいものだ。
また、運転が苦手な人に便利な機能がトヨタチームメイト アドバンストパークだ。この機能は、駐車時にハンドル操作、ブレーキ、アクセル、シフトチェンジなど、全操作を車両が支援してくれる。
クルマが災害時に役立つアクセサリーコンセントを全車標準装備化
こうした微妙な予防安全装備に対して、高く評価したいのがアクセサリーコンセント(AC100V・1500W)と非常時給電モードを標準装備したことだ。
このアクセサリーコンセントは、台風や地震などの災害時に停電した場合など、非常時には車両駐車時に「非常時給電モード」にすると、100Vで1500Wまでならスマートフォンの充電だけでなく、家電製品を使用することが可能。ハイブリッドシステムを使い、クルマが発電機となり停電時の不便さをある程度解消してくれる。
実際、2011年の東日本大震災時に、この機能が非常に役立ったという。ただ、トヨタはこのアクセサリーコンセントを標準装備し、価格がアップすることを嫌い、最近ではほぼオプション状態だった。しかし、販売台数が多い2代目新型アクアで標準装備されたことは、災害が多い日本にとって大きなメリットになる。
乗り心地にこだわったサスペンション
2代目新型アクアのメカニズム面では、やはり最新のGA-Bプラットフォーム(車台)が採用されたことが大きなポイント。これにより、ボディ剛性は大幅に向上。ねじり剛性は28%もアップした。
こうした強固になったボディの恩恵で、よりスムースに動くようになる。その上で、乗り心地にこだわったチューニングが施さられた。
最上級グレードのZには、微小な路面の凹凸やボディの動きに対して、適切な減衰力を発生し車体をフラットに保ち上質な乗り心地を実現したスウィングバルブショックアブソーバーも採用されている。
新開発バッテリー「バイポーラ型ニッケル水素電池」とは?
そして、2代目新型アクアは、基本的にヤリスと同じ直3 1.5Lのハイブリッドシステムを採用する。しかし、ハイブリッド用電池を変更した。ヤリスのリチウムイオン電池に対して、2代目新型アクアは、高出力な「バイポーラ型ニッケル水素電池」を駆動用車載電池として世界初採用した。
この電池は、先代アクアのニッケル水素電池に比べバッテリー出力が約2倍に向上。これにより、アクセル操作の応答性が向上し、低速からリニアでスムースな加速が可能となった。さらに、電気だけでの走行可能速度域を拡大。街中の多くのシーンで、エンジンを使わず電気だけで走行できるようになった。
この新開発の「バイポーラ型ニッケル水素電池」のバイポーラとは、双極を意味する。これは、集電体の片面に正極、もう一方の面に負極を塗った「バイポーラ電極」を複数枚積層させパックにした電池。
従来型のニッケル水素電池と比べると、集電体呼ばれる部品などの点数が少なくなりでコンパクト化が可能。従来型電池と同等のサイズの場合、より大容量の電池を搭載することが可能となった。
また、通電面積が広くシンプルな構造なので、電池内の抵抗が低減。大電流が一気に流れるようになりり、出力が向上する。
2代目新型アクアに搭載のバイポーラ型ニッケル水素電池は、従来型アクアに搭載のニッケル水素電池に比べ約2倍の高出力を実現している。
燃費はヤリスの勝利?
ただ、重要な燃費は、リチウムイオン電池を使うヤリスが35.4~36.0㎞/L(FF、WLTCモード)に対して、2代目新型アクアは、33.6~35.8㎞/L(FF、WLTCモード)となった。微妙な差だが、ヤリスが勝っている。
しかし、この差は電池だけの差ではなく、車重も大きく影響していると思われる。ヤリスの車重は1,050~1090㎏。2代目新型アクアは、1,080~1,130㎏と30~40㎏も重い。この車重差も燃費に影響を与えているだろう。
何にせよ、2代目新型アクアの燃費は、ヤリスほどではないものの、他社のライバルであるホンダ フィットや日産ノートe-POWERと比べると圧倒的によいことは間違いない。
そして、2代目新型アクアに用意されたのが「快感ペダル」。これは、をトヨタ車初採用になる機能。日産ノートe-POWERのe-POWER Driveと、ほぼ同じ機能で、いわゆるワンペダルドライブに近い機能。
走行モードから「POWER+モード」を選択。アクセルペダルを緩めると回生ブレーキによって減速度を増大。滑らかに減速し、アクセルペダルを上手に操作すれば、アクセルとブレーキペダルの踏みかえ頻度を減少。ドライバーの疲労軽減に役立つ。
2代目新型トヨタ アクアのグレード選び
まず、2代目新型アクアには、初代アクアには設定が無かった4WD車であるE-Fourが用意された。そのため、降雪地域の人も積極的にアクアを選べるようになっている。また、このアクアのE-Fourモデルは、リヤサスペンションがヤリスと同様に上級なダブルウィッシュボーン式になる。そのため、FF(前輪駆動)モデルより、やや乗り心地が向上する。
2代目新型アクアは、最上級のZからG、X、Bと4グレード構成になっている。Bは、価格訴求用や社用車的グレード。かなりシンプルな装備で、安全装備のオプションも選択できないため、選択肢から外したい。
シンプルな装備のXグレードという選択もありなのだが、踏み間違え防止機能であるパーキングブレーキサポートなどがオプション。この装備やスーパーUV・IRカットガラスを選択すると、Gと変わらなくなる。こうなると、選択肢はZかGかという選択になる。
ZとGの装備差は、15インチアルミホイール、Bi-Beam LEDヘッドライト、LEDライン発光テールランプ、LEDフロントフォグランプ、10.5インチディスプレイオーディオなど。これらの装備がZには標準装備される。価格差は17万円だ。豪華装備がメインなので、予算次第と言うことになる。
ただ、予防安全装備パッケージであるトヨタセーフティセンスだけでは、少々物足りないので、ブラインドスポットモニター+パーキングブレーキサポートブレーキ、パノラミックビューモニターなどのオプションは選択必須。運転席パワーシートなどが装備される合成皮革パッケージも魅力的なオプションだ。
2代目新型トヨタ アクアは、しばらく値引きゼロベースが続く。新型車であることに加え、半導体不足の影響で納期がかなり長くなるグレードや装備などがあるからだ。
半導体不足の影響が落ち着き、納期が1~2ヶ月になれれば値引きのチャンス。ライバル車となる日産ノートe-POWERやホンダ フィットe:HEVなどの見積りを取り競合させれば、値引き額アップの期待大だ。また、経営が異なるトヨタのディーラー同士でアクア同士を競合させるのも効果がある。
2代目新型トヨタ アクア価格
・B 2WD(FF) 1,980,000円/E-Four 2,178,000円
・X 2WD(FF) 2,090,000円/E-Four 2,288,000円
・G 2WD(FF) 2,230,000円/E-Four 2,428,000円
・Z 2WD(FF) 2,400,000円/E-Four 2,598,000円
2代目新型トヨタ アクア燃費、ボディサイズなどスペック
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,050×1,695×1,485mm
ホイールベース[mm] 2,600
車両重量[kg] 1,130kg
総排気量[cc] 1,490cc
エンジン型式 M15A-FXE型 直列3気筒
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] 91(67)/5,500rpm
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 12.2(120)/3,800〜4,800rpm
モーター最高出力[ps(kw)] 80(59)
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] 14.4(141)
バッテリー 種類/容量(Ah) ニッケル水素/5.0
ミッション 電気式無段変速機
最小回転半径[m] 5.2m
サスペンション前:後 マクファーソンストラット:トーションビーム
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