外観デザインとグレード体系が見直されたマツダ2の改良
マツダは、コンパクトカーのマツダ2を大幅改良し、3月下旬に発売を予定。予約は、2023年1月27日からを開始する。
現行マツダ2の前身は、マツダ デミオで2014年に登場。コンパクトカーらしい使い勝手の良さを維持しながら、クラスを超えた質感やデザイン、走行性能や燃費性能にこだわった。とくに、1.5Lディーゼルターボエンジンは、現在でもユニークな存在だ。こうした優れたパフォーマンスが高く評価され、2014-2015日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。
その後、2019年9月に発売された改良モデルから、現在のマツダ2へと車名を変更。欧州などで発売されているモデルと車名を統一した。
今回の改良で、マツダは大幅改良としているが、エンジンや足回り、予防安全装備など、動的部分の進化は無く、主にグレードによる外観デザインの変更とグレード体系の見直しとなっている。
新型マツダ2のグレード体系は、3タイプに分類されている。新グレードは下記の3タイプだ。SPORTグレードは、3代目デミオ以来、久しぶりの復活となった。
・BD(ビーディー)
・SPORT(スポルト)
・Sunlit Citrus(サンリットシトラス)
苦しいマツダ2の現状
マツダ2の改良は、Bセグメントのコンパクトカーにおけるマツダの厳しい現状を感じる。CO2排出量に対する規制などが厳しい欧州で、マツダはすでにトヨタ ヤリスハイブリッドのOEM供給を受け、マツダ2ハイブリッドとして発売。日本でもヤリスハイブリッドがマツダ2としてOEM供給を受けるのでは? と、思われていたものの、日本では、それほどCO2の排出量に対して厳しい規制がないこともあり、マツダ2は現状維持状態が続いてきた。
しかし、マツダ2は2014年デビューとモデル後期に入っており、設計も古くハード面で古さを隠せない状況。しかも、ハイブリッド車が無いため、国内販売も厳しい状況が続いている。
マツダ2の2022年販売台数は、24,429台。これに対して、ハイブリッド車しか設定のない日産ノートは、約11万台を販売している。苦戦が続いているホンダ フィットでも、ガソリン車を入れて約6万台を販売。マツダ2との差は、あまりにも大きい。
マツダ2は、まさに岐路に立たされている状態。Bセグメントから撤退しOEMを受けるのか? それとも、EV(電気自動車)化? などなど、課題は大きい。今回の改良は、マツダ2を少しでも延命させて、次の時代へつなぐための時間を作りともいえる役割をもつようにも見えてくる。
ローコストで新たな価値感を提供した上手い改良!
そんな厳しい状況に置かれたマツダ2だが、今回の改良は多額のコストをかけずに新たな価値を生み出している。
とくに、注目したいのがBDと呼ばれるグレード。BDとはBLANK DECKの略。スケボー用語で、装飾する前のまっさらなボード本体。安物ではなく「素のモノ」という想いで付けられた。つまり、この「素のモノ」をベースに色々と装飾して楽しんでね、ということになる。
新型マツダ2 BDのフロントフェイスは、従来のモデルとひと目で違いが分かるという、分かりやすさがポイントだ。ある意味、大きなグリルがマツダ2の象徴だったが、そのグリルをあえて塞いだデザインを採用。グリルの必要がないEV(電気自動車)のようなデザインだ。
このデザイン、意外なほどマツダ2に合っていて、塊感あるデザインをより強調したようなフロントフェイスになっている。これだけ、グリルを塞いでラジエーターへの導風は大丈夫なのか? と、思ってしまうが、マツダのデザイナーによると、これでも十分とのことだ。
さらに「自分らしく、自由な発想で、遊び心をもって」をコンセプトに、豊富なカラーバリエーションを設定。ボディカラー11色、インパネカラー3色、ルーフカラー3色、ホイールキャップカラー6色などで、なんと、198通りものカラーコーディネイションが可能となっている。まさに、自分好みの仕様にできる楽しさがある。
これだけでなく、ディーラーオプションの用品も多数用意。「ルーキードライブ」、「クラップポップ」といった仕様を用意。こうした用品を使えば、さらに個性的な仕様となる。
ハイブリッド全盛期だからこそ、マイノリティなガソリン車ユーザーを積極的に取り入れる?
こうした仕様にしたのには、当然、理由ががある。ここ数年、マツダのコンパクトカーは、若年層が減ってきているという。マツダ2 BDは、従来のマツダ2ではリーチできなかった若年層をターゲットとしている。
また、注目したいのが価格。1.5Lガソリン車BDの価格は1,647,800円となかなかリーズナブル。これもまた、若年層が買いやすいように安価な設定としている。アルミホイールの設定ではなく、あえてホイールキャップ仕様としてカラフルさを楽しみながら、価格を下げている工夫はさすがだ。
また、あえて、高価なハイブリッド車と勝負するのではなく、ライバル車がターゲットとしていない安価なガソリン車マーケットをターゲットにして、販売台数を維持しようという戦術でもある。
分かりやすい新グレード「SPORT」復活!
そして、復活したSPORT系は、人気の特別仕様車ブラックトーンエディションのスポーティさを強化したグレード。16インチアルミホイールに、専用メッシュグリル、ブラック基調のシート生地にレッドのレッドのアクセントが入る。ブラック&レッドという色の組み合わせは、スポーツ系グレードの定番。分かりやすく売れるカラーだが、色にこだわるマツダであれば、もっと斬新なカラーの提案が欲しいところだ。
Sunlit Citrusは、従来のグレードからさらに質感を高めたグレード。本革巻きステアリングや専用メッシュグリル、パワーシート、ステアリングヒーター、レーダークルーズコントロール、レーンキープアシストなどが標準装備される。
燃費だけではない、マツダ流環境対応技術
そして、今回の新グレードで投入されているアイテムの中には、優れた環境対応技術も織り込まれている。
まず、2トーンルーフには、塗装ではなくフィルムが採用された。これは、2トーン塗装では2回の上塗工程があったが、フィルムを採用することで1回の上塗で済み、約30.0kg/台のCO2削減が可能になった。
また、マツダ2だけでなく、グリルや内装材などに国内で売られているモデルに積極採用されているのが、マツダが開発したバイオエンプラだ。バイオエンプラとは、バイオエンジニアリングプラスチックの略で、植物由来の原料から生産される。そのため、CO2減や石油資源使用量減という環境負荷を軽減するメリットがある。
このバイオエンプラ、まだまだメジャーな材質ではないため、原材料コストは高い。バイオエンプラは、透明な素材。マツダは着色して使用することで、従来あった塗装工程を廃止することで、コストダウンが可能としている。これで、より積極採用が推進された。こうした技術が評価され、「令和2年度科学技術分野の文部科学大臣表彰」の「科学技術賞(開発部門)」を受賞した。
新型マツダ2の失敗しないグレード選び
新型マツダ2のグレード選びは難しい。マツダは、BDのガソリン車で安価をメリットにしている。しかし、カーボンニュートラル時代に、単なるガソリン車を選ぶというのも微妙。予算に余裕があれば、250Nmという大トルクを誇り21.6㎞/L(WLTCモード)という低燃費性能を誇る1.5Lディーゼルエンジンを搭載したXD BDがお勧めだ。予算がないのであれば、15 BDという選択になる。
このBDに、クルーズコントロールやレーンキープアシストなどが装備されるセーフティクルーズパッケージをオプション選択。後は、好みのルーフフィルムなどを選択すとよいだろう。
スポーツモデルが好きというのであれば、オーソドックスな仕様だがやはりSPORTということになる。恐らく、このグレードが最もリセールバリューが高くなると予想できる。FF(前輪駆動)モデルには、MTも設定されている。装備も充実しているが、その分、価格もグッと効果になっている。
Sunlit Citrusは、かなり装備が充実。運転席パワーシート、運転席&助手席シートヒーター、アルミホイールなどが標準装備。BDと比べると高価だが、充実した装備が魅力。BDにオプションをプラスすると、Sunlit Citrusに近い価格になってくる。装備を重視したいのなら、Sunlit Citrusを選択するとよいだろう。
マツダ2価格
・15C FF AT 1,529,000円/ 4WD AT 1,749,000円
・XD FF AT 1,903,000円/4WD AT 2,123,000円
・15 BD FF AT 1,647,800円/4WD AT 1,867,800円
・XD BD FF AT 1,991,000円/4WD AT 2,211,000円
・15 SPORT FF AT、MT 2,002,000円/4WD AT 2,222,000円
・XD SPORT+ FF AT、MT 2,321,000円/4WD AT 2,541,000円
・15 Sunlit Citrus FF AT 2,101,000円/4WD AT 2,321,000円
・15MB FF MT 1,749,000円
マツダ2燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード マツダ2 XD BD FF
全長×全幅×全高 mm 4,080×1,695×1,525
ホイールベース mm 2,570
トレッド(前/後) mm 1,495/1,480
最低地上高 mm 145
車両重量 kg 1,140
エンジン型式 S5-DPTS型
エンジンタイプ 直4気筒 DOHC16バルブターボディーゼル
総排気量 ㏄ 1,498
最高出力 kW(ps)/rpm 77(105)/4,000
最大トルク N・m(kgm)/rpm 250(25.5)/1,500-2,500
トランスミッション 6速AT
サスペンション 前:ストラット 後:トーションビーム
タイヤ 前後 185/65R15
最小回転半径 m 4.7
燃料消費率 WLTCモード ㎞/L 21.6
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