■基本骨格を初代CX-5と共用しながら、まるで別のクルマのように深化した2代目CX-5
マツダは人気SUVであるCX-5を一部改良し、3月8日発売を開始する。
現行のマツダCX-5は、2017年にフルモデルチェンジし2代目となっている。初代マツダCX-5は、2012年に登場。新世代商品群と呼ばれる第1弾のモデルとして登場した。また、魂動デザインやクリーンディーゼルエンジンなどを搭載し話題になる。
デザインや先進テクノロジー、そして走りの良さが高く評価され2012-2013年の日本カー・オブ・ザ・イヤーにも輝いた。
その後、マツダは数々の次世代商品群を送り出し、不調だった経営状態化から脱却する。初代CX-5がそのけん引役となった。
2代目CX-5は、そんなCX-5のプラットフォーム(車台)をキャリーオーバーして開発された。プラットフォーム(車台)は、高額な投資と長い開発期間がかかる。そのため、2世代共に同じプラットフォーム(車台)を使うメーカーも少なくない。
メーカー側にとって、2世代共通のプラットフォーム(車台)の使用は、投資面で大きなメリットが出る。ただし、プラットフォーム(車台)は、クルマの基本性能を決める最重要部分。そのため、性能面ではライバル車に対して劣ってしまう場合もある。
そこで、2代目CX-5は初代CX-5のプラットフォーム(車台)を大幅に改良し開発された。効率的な補強の他、Aピラーやサイドシルなどに軽く強度の高い超高張力鋼板を採用。その結果、先代モデルに対し、ねじり剛性を15.5%高めている。
人気の中心である2.2Lクリーンディーゼルエンジンも大幅進化。静粛性や低振動性能を向上させた。こうしたエンジンの静粛性を高めた他、静粛性を高める手法がプラスされ、2代目CX-5の静粛性は大幅に向上。まるで、違うクルマと思えるほどだった。
燃費は、クリーンディーゼルエンジンのXD(FF)で18.0㎞/L。フルモデルチェンジ前は18.4㎞/Lだったので、燃費はダウンしてるのだが、実燃費性能を向上させたためとマツダはアピールした。
そして、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化。横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールする新世代車両運動制御技術「SKYACTIV-VEHICLE DYNAMICS」の第一弾「G-Vectoring Control」を全車に標準装備した。2代目CX-5は優れた走行性能と乗り心地性能を誇った。
■2.5Lエンジンには気筒休止システムを搭載! 実用燃費を重視しガソリンエンジンを大幅進化
もはや通例となったマツダCX-5の年次改良。毎年大幅に改良されるため、買い時が分からないクルマでもある。しかし、進化した分クルマは確実に良くなっている。
今回の改良では、2.0Lと2.5Lガソリンエンジンが大幅に進化した。まず、耐ノック性を向上させるため、ピストンのエッジカット形状の変更や排気ポート形状の見直しを実施。高負荷状態での実用燃費やトルクの改善に貢献。
さらに、ピストンスカート部の形状を最適化した「低抵抗ピストン」を採用。機械抵抗を低減。実用燃費の改善と静粛性を向上。
また、冷却水の流量を適切に制御することでシリンダーからの熱逃げを削減。冬季を中心に暖気性が向上。暖気性の向上は、ちょい乗り時などを繰り返すような乗り方などで、実用燃費が向上する。
そして、新ノズル付き拡散インジェクターを採用。理想的な高拡散噴霧により燃料がシリンダー壁面に付着する前に確実に気化することで無駄の少ない燃焼を実現。さらに、より正確な燃料噴射制御が行える新PCM(Powertrain Control Module)を採用。排出ガス中の粒子状物質(PM)を低減し、さらに優れたクリーンな排ガスとし環境性能を向上させている。
2.5Lエンジンには、さらに「気筒休止」機能が採用された。エンジン負荷が低い場合に、4気筒のうち2気筒を休止させ燃費を向上させる。
全体的に実用域での燃費向上をアピールする改良になっている。その結果、FF(前輪駆動)2.0Lエンジンは16.0㎞/L、2.5Lエンジンは14.8㎞/Lとなった。ただ、改良前のJC08燃費値と比べると変化がない。4WDの2.5Lエンジンは、14.2㎞/Lとなっていて、改良前の14.6㎞/Lより燃費が悪くなっている。このあたりが、実燃費にどう影響しているのかも注目したいところだ。
人気の2.2Lクリーンディーゼルエンジンは、先に発売されたCX-8に用意された改良型ディーゼルエンジンと同じエンジンが搭載された。静粛性と燃焼効率、高い環境性能を両立する「急速多段燃焼」を採用。「段付きエッグシェイプピストン」、「超高応答マルチホールピエゾインジェクター」、「可変ジオメトリーターボチャージャー」などの新技術により、最高出力を従来の175psから190psに、最大トルクを420N・mから450N・mに向上。燃費性能は、FF(前輪駆動)車で18.0㎞/Lから19.0㎞/Lに向上させている。パワフルさや燃費、フィーリングなど完成度の高いエンジンになった。
■大幅改良でも価格アップ無し! より良いクルマがより安くなった点は高評価
CX-5には歩行者検知式自動ブレーキやAT誤発進抑制制御、ブラインドスポットモニタリング、リヤクロストラフィックアラートなどの安全装備が標準装備されており、どのグレードを選んでもこのクラスではトップレベルの安全性能をもつ。
今回はさらに、最新の「360°ビュー・モニター」をメーカーセットオプションで設定。車両の前後左右にある4つのカメラ映像をさまざまな走行状況に応じて切り替えが可能。映像はセンターディスプレイに表示されるので、死角にある障害物などいち早く危険認知することができるようになった。
使い勝手面では、パワーリフトゲートのメーカーセットオプション設定グレードを拡大。「20S PROACTIVE」、「25S PROACTIVE」に用意された。
また、車速感応式オートドアロック(衝撃感知ドアロック解除システム付)を全グレードに標準装備。
「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC)」の操作性を向上させるため、スイッチ表示を変更するとともに、モード切替時のビープ音を追加している。
マツダコネクトの機能も向上した。CX-8、デミオに搭載済みの自車位置演算ユニットを全グレードに搭載。さまざまな時間や場所において、安定した高精度測位が行えるため、従来のGPS衛星のみでは難しかった高層ビルの多い場所や高速道路の高架下などでの自車位置測位と表示がより正確化している。
注目したい点は、これだけの改良を施しながら価格アップしていない点だ。どのグレードも実質値下げに等しい。
■マツダCX-5のグレード選び
マツダCX-5のグレード選び。CX-5のグレードは、安全装備など重要なものはほぼ全車標準装備になっている。グレード間の差は、ほぼ豪華装備の有無によるものだ。どのグレードであっても、安心して乗れる仕様になっている。ある意味、理想に近いグレード体系といえる。
こうしたグレード体系なので、CX-5選びの重要なポイントは、どのエンジンを選択するかということになる。エンジンは、2.0Lと2.5Lのガソリン、そして2.2Lディーゼの3タイプから選ぶことになる。
予算重視でというのであれば、2.0Lガソリン車でも十分。ただし、FF(前輪駆動)車しかない。そのため、ウインタースポーツを積極的に楽しんでいるような人や降雪地域に住んでいる人で4WD車が必要な場合は、2.5Lガソリンか、2.2Lディーゼルという選択肢になる。
お勧めエンジンは、2.2Lディーゼルとなる。やはり、450Nmという大トルクを誇るディーゼルは、とにかく速く余裕のある走りができる。それでいて、18.0㎞/L(4WD)/19.0㎞/L(FF)という低燃費性能は群を抜いている。
さらに、ガソリンより軽油は20円/L前後も安い。そのため、ディーゼル車は燃費差含め燃料費が安くなる。燃料費が安い上に、ガソリン車を圧倒する450Nmという大トルクは捨てがたい魅力だ。また、2.5Lガソリン車は、FF車のみがエコカー減税に対応しているが4WD車は対象外。ディーゼル車は免税対応。節税金額の差も大きくなる。
2.5Lガソリンと2.2Lディーゼルの価格差は、約31万円。一見大きな差があるように感じるが、エコカー減税差を入れると、グレードによるが10万円前後の差が縮まる。さらに、燃料費差がある。長い距離を走る人なら、差はドンドンと縮まる。さらに、5年程度で売却を考えているのなら、リセールバリュー差もある。中古車マーケットでは、ディーゼル車の方が人気が高くリセールバリューも高い。こうした差を考えると、価格差を十分に回収できるレベルになってきている。
グレード選びは、標準グレードにプロアクティブ、Lパッケージと3グレード設定。安全装備などは、どのグレードでも一定レベル以上なので安心。主に豪華装備による差となっている。十分に満足できるグレードは、中間グレードのプロアクティブ。レーンキープアシストや全車速追従クルーズコントロールなどがプラス装備されている。とくに、全車速追従クルーズコントロールは、高速道路などでの渋滞時に非常に便利。ドライバーの疲労軽減にも役立つ。レザーシートが欲しいのであれば、Lパッケージになる。基本的には、プロアクティブをベースに装備の有無を検討して選ぶといいだろう。
今回の改良は、エンジンを中心に大幅改良が行われた。しかも、価格アップされていないので、非常にコストパフォーマンスの高いモデルになってきた。マツダは、初代CX-5からの始まった新世代商品群から、かなり強気の価格設定がされてきたことや、値引きゼロ戦略を続けたことから国内の販売台数面では厳しい状況が続いている。やや高めの価格設定に見えてはいるが、装備類を比較するとライバルに比べ充実していてほぼ同等といえるものだ。今回の改良は、より販売台数アップを狙い価格面でのメリットも訴求する仕様になっている。より良いクルマがより安くなることは、顧客にとって大きなメリットといえるだろう。
■マツダCX-5の価格
・20S(FF) 2,494,800円
・20S PROACTIVE(FF) 2,689,200円
・25S 4WD 2,721,600円
・25S PROACTIVE 4WD 2,916,000円
・25S L Package(FF) 2,986,200円/4WD 3,213,000円
・XD(FF) 2,808,000円/4WD 3,034,800円
・XD PROACTIVE(FF) 3,002,400円/4WD 3,229,200円
・XD L Package(FF) 3,299,400円/4WD 3,526,200円
■マツダCX-5燃費、スペックなど
代表グレード | マツダCX-5 XD PROACTIVE 4WD |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,545×1,840×1,690mm |
ホイールベース[㎜] | 2,700㎜ |
車両重量[kg] | 1,670kg |
総排気量[cc] | 2,188cc |
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] | 140〈190〉/4,500 |
エンジン最大トルク[N・m(㎏-m)/rpm] | 450〈45.9〉/2,000 |
ミッション | 6速AT |
JC08燃料消費率[km/L] | 18.0km/L |
価格 | 3,229,200円 |
レポート | 編集部 |
写真 | 編集部 |
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