
トヨタは自社ユーザーの囲い込みと収益の確保が目的

トヨタの軽自動車販売が間もなく(2011年9月下旬)始まります。
ダイハツからトヨタへの軽自動車のOEM供給は2010年9月に発表されており、スケジュール通りに実施されることになるわけです。昨年の発表では、3車種をめどに年間6万台を想定しているとのことでした。販売チャンネルはカローラ店とネッツ店で、軽自動車比率の高い市場ではトヨタ店やトヨペット店でも扱うことになっています。
取り敢えずムーヴコンテをベースにしたクルマと、軽商用車のハッゼットをベースにしたクルマのトヨタ版が登場するようで、もう一車種は第三のエコカー、ミラ・イースになるのかどうか。
トヨタブランドの軽自動車はエンブレムを変更する程度にとどめ、基本的にダイハツブランドの軽自動車と同じ仕様のままで販売されるとも伝えられています。トヨタが軽自動車販売に取り組むことで、日本の乗用車メーカーはすでべてが軽自動車を扱うことになります。
トヨタは以前は、ダイハツの軽自動車を紹介販売の形で扱っていましたが、9月からは直接扱う形になります。軽自動車のユーザーを自社ユーザーとして抱え込み、クルマの販売以外の部分での収益をしっかり確保すると同時に、軽自動車から上級移行するユーザーの代替需要を確保するのが狙いです。
販売現場の競争は激化必至
トヨタが軽自動車販売に本格参入することの影響がどう出るか、すでにいろいろな見方があります。スズキの鈴木修会長からは「軽自動車市場の活性化につながるので歓迎したい」とのコメントが伝えられていますが、これを額面通りに受け取る人は少ないでしょう。軽自動車の販売合戦が激しさを増すのは間違いないからです。
スズキ以上に影響を受けるのはダイハツのディーラーでしょう。軽自動車はディーラーというか、地域の販売店を通じて販売される台数が多いのですが、そうした販売店にとってはお客さんを奪われることになります。
1台目のクルマがトヨタの登録車で、2台目以降はダイハツなどの軽自動車を保有しているユーザーは地方にはたくさんいます。地方ではクルマがひとりに1台になっていて、2台目以降は保有コストの安い軽自動車を選ぶユーザーが多いのですが、そうしたユーザーはこれまでトヨタとダイハツの販売会社と付き合っていたのですが、それがトヨタディーラーだけで間に合うようになります。
ダイハツの軽自動車を扱う販売店は、地方の整備工場などが多く、クルマの販売ではほとんど儲けはないものの、後々の車検や整備などで収益を確保できるという形で商売していたのが、そのユーザーの一部がトヨタのディーラーに奪われることになります。
いずれにしても軽自動車販売が厳しい時代に入るのは間違いないでしょう。すでに日産などがOEM軽自動車を販売していて、そこでも同じようなことが起きていたわけですが、それがますます厳しい状況になるわけです。
軽自動車市場でのメーカー間の競争も激化する
ダイハツもメーカーとしては、OEM供給は必ずしも悪い話ではありません。トヨタ系ディーラーで販売してもらうことによって販売台数の上乗せが図れるなら、量産化によるコストダウンや工場の操業率の向上などがメリットになります。
またOEM車を供給する一方で、開発コストのかかるハイブリッド車や電気自動車などについてトヨタから技術供与を受けられるので、ダイハツにとっては開発コストの低減につながります。
最近、スズキとフォルクスワーゲンの別れ話が進んでいるとのことですが、別れ話が成立した後、スズキにとって最も大きいのは環境技術の開発をどう進めていくかと言われています。その点、ダイハツはトヨタグループにあることが有利に働きます。
トヨタのディーラーでは、すでにOEM車の事前受注を始めていて、発売直後には大量の受注台数が発表されるのではないかと言われています。
年間6万台という数字は相当に控えめなものと思われますが、この台数でもマツダを上回るものになります。2010年の実績ではスバルが10万台弱、三菱が11万台弱という数字でしたから、トヨタがこの台数に達するのはそう難しいことではないでしょう。
トヨタの戦略によっては、数年先には日産やホンダもターゲットにすることになるかも知れません。2010年の実績では、日産が15万台弱、ホンダが16万台強でした。ここしばらくは軽自動車の販売合戦が注目を集めることになるでしょう。
■トヨタ自動車が2011年秋より軽自動車を販売へ
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