事業仕分けのやり玉に挙げられた独立行政法人「NASVA」の活動を改めて公開
国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)は1月20日、「平成22年度自動車アセスメント」(JNCAP)の試験の一部について報道関係者への公開を実施した。公開されたのは、財団法人 日本自動車研究所(JARI)[茨城県つくば市]内にある屋内衝突実験場でのオフセット前面衝突試験、側面衝突試験など全3項目。
自動車アセスメント(JNCAP)は、国内で一般に売られる市販車の安全性について中立の立場で試験を実施し、これについてアセスメント(評価)を行うことで、より安全なクルマの普及を促進させようとする取り組みだ。欧米で行われる同様の自動車アセスメントとも連携を図り検討され、いくつかの衝突安全試験やブレーキ試験、歩行者頭部保護試験などが行われ、総合評価を実施する。
【関連情報(外部リンク)】
■「自動車アセスメント」[NASVA 独立行政法人 自動車事故対策機構 ホームページ]
上記リンク先を見ても分かるように、自動車を購入する上で一般ユーザーには判断が付きづらい安全性能について、JNCAPはひとつの明確な指針を示している。また各自動車メーカー自身も、JNCAPの評価結果を広告に用いたり、次期モデル設計の際にJNCAP基準をクリアする安全性能を加えることで、更なる安全性能の向上にも繋がっている点も見逃せない。
実は、昨年4月に行われた政府の行政刷新会議、いわゆる「事業仕分け」の第二弾において、今回の自動車アセスメント(JNCAP)を行うNASVAがやり玉に挙げられていた。結果、自動車アセスメント業務について「他の法人で実施しコストを縮減せよ」との判断を下されている。現在その可能性を模索している段階で、平成23年度のJNCAP実施については現時点では検討中という。
確かに、近年とみに各車の安全性能が上がり、JNCAPでは軽自動車も普通車でも軒並み高得点を表示するなど、点数表示の問題点はある。したがって、素晴らしいアセスメントだと100%手放しで評するワケではない。しかし、相変わらずこのアセスメントが我々ユーザーにとって有益な客観情報なのは確かだ。
未来の地球を大切にするエコ、環境性能も大事。しかし、ヒトの命は、エコカー減税なんかより、ホントは何より真っ先に優先すべきことだ。それを忘れてはならない。「安全」をカンタンに仕分けるなんて、して良いワケがないのだから。
今後この自動車アセスメントは法人化するのか、あるいは欧米のように保険会社などが共同で行うのか、あるいは再び行政主導で行うのか、いずれにせよ、これからも継続すべき事業であるのは間違いないだろう。いち自動車ユーザーとして、その動向については今後も注意深く見守って行きたい。
平成22年度自動車アセスメント[JNCAP] 「オフセット前面衝突試験」
[自動車アセスメント:オフセット前面衝突試験例:トヨタSAI(NASVA)]
※今回の公開試験とは別に実施
「オフセット前面衝突試験」は、車幅の運転席側40%を金属バリアに衝突させ、運転席と助手席後部乗員ダミーの傷害や車体変形などを試験・評価する。
従来の「フルラップ前面衝突試験」(コンクリートに前面を衝突させる)に対し、より実際の交通環境で起こりうる事故に近い環境下を再現出来るとも言われている。今回の試験は、国の試験が行われる時速56km/hに対し、時速64km/hとさらに厳しい条件だ。
乗員保護性能の度合いは前席・後席に分け、それぞれ5段階で評価される。またフルラップ前面衝突試験や側面衝突試験の結果と合わせ、衝突安全総合評価を6段階で評価する。
平成22年度自動車アセスメント[JNCAP] 「側面衝突試験」
「側面衝突試験」は、側面から950kgのバリア台車(先端には、乗用車同様の固さとしたアルミハニカムの衝撃吸収部位)を時速55km/hで衝突させ、運転席のダミーの頭部や胸部、腹部、腰部といった傷害値を5段階で測定する。さらに今回の試験車両「フォルクスワーゲン ポロ」のようにカーテンサイドエアバッグを装着した車種については、その展開状況などについても評価する。
[自動車アセスメント:側面衝突試験例:トヨタSAI(NASVA)]
※今回の公開試験とは別に実施
平成22年度自動車アセスメント[JNCAP] 「歩行者脚部保護性能試験」[調査試験]
近年、乗車中での死亡事故数は年々減少傾向にあり、いっぽうで交通弱者と呼ばれる高齢者や子供など歩行者が含まれる事故の割合が高まって来ている。既に実施されている「歩行者頭部保護性能試験」はその一環であり、今回の歩行者脚部保護性能試験は第2弾だ。
大人の脚を模した「フレックス脚部インパクタ」(画像1:左/中央の金属製は海外で使用されるリジッド式)をクルマの正面から時速40km/hでぶつけ(画像2・3)、インパクタ自身が受ける衝撃を計測する。フロントバンパーセクションは6分割にし、それぞれの位置にインパクタを当てる。そのため試験の度にバンパーやグリル類は交換され新たに計測される。主に脚部の脛骨や靭帯などの傷害値をもとに段階評価をする予定だ。
「フレックス脚部インパクタ」は日本主導で造られた独自規格だ
動画による評価が行われる
バンパー形状の変位が見て取れる。衝撃吸収後は元の形状に戻った。
その場でインパクタからデータの収集が行われる
フロントバンパー部を6つに分け、各々インパクタをぶつけて検証する
右の黒い壁の向こうから時速40km/h相当でインパクタが飛び出す
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