【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】第5世代SLクラスに待望の初試乗[CORISM] [CORISM]

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【メルセデスベンツ】2009/02/24

思い入れ強いSLクラス

 SLクラスはいつの時代も誰でも憧れる高級ロードスターだ。私は第3世代の450SL(R107)と第4世代の500SL(R129)を乗り継いだSL ファンである。私のSLクラスに対する思い入れは他のクルマより強く、第5世代SL待望の初試乗である。しかも今回はビッグマイナーチェンジによりフロントのデザインが大きく変更され、新規に追加されたSL63 AMG。
 ロー&ワイドなボディスタイルは優雅さと共に高性能を感じ、特にリアスタイルは、リアエプロンから突き出た4本の太いエキゾーストパイプを見ていると、あまりの迫力に言葉が出てこない。
 インテリアは他のAMGモデル同様に高級なナッパレザーを使っているがSLは更に一層の上質感がある。全体で身体を包み込むシートは一日中走り回っても疲れを感じない。AMG専用のスピードメーターは320km/hまでの表示があり、レブカウンターは6.2リッターの大排気量では異例の7500rpmからがレッドゾーンで、このクルマのポテンシャルを視覚的にも誇示する。
 シフトレバー上部にあるエンジンスイッチを押すと、大きなエキゾーストビートが室内に飛び込んでくる。ノイズではなくビートであり、高価格車(1910万円)に乗ることを許されたオーナーが最初に感じる喜びだろう。試乗時は寒い日であったがバリオルーフを迷わず開けて走り出した。風の巻き込みは無く、強力なエアコン、シートヒーターとヘッドレストの隙間から温風が吹き出すエアスカーフにより、一般道は勿論、高速道路でも寒さは感じる事は無くオープンエアを楽しめると評価しよう。
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】 エクステリア フロント 画像
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】 エクステリア リヤ 画像
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】 エクステリア フロント 走り 画像

実用車としても満点

 ボディ剛性はとても高く、サスペンションを締め上げて前:255/35R19、後:285/30R19のワイドタイヤを装着しているにも拘わらず、通常オープンカーに見られるAピラーの振動は皆無である。この高いボディ剛性によりサスペンションはしなやかに動き、ハンドリングと乗り心地のバランスは絶妙であると評価しよう。
 操作系は軽く、日常の足として買い物にも充分に通用するSLクラスの取り回しの良さはそのままで、実用車としても満点である。6.2 リッターV8、525ps、最大トルク64.2kg-mのエンジンは低回転からパワーが爆発しアクセルを踏むだけで4.6秒後には時速100kmに達する。
 トランスミッションはトルクコンバーターから湿式多板クラッチに変更した7速AT(AMGスピードシフトMCT)でシフトレバーの横のダイヤルで4つのシフトモードを選ぶ事が出来る。最初はC(コンフォート、AT)モードで走っていたが、シフトチェンジは滑らかで通常のAT車との差は無い。途中でM(マニュアル)モードにダイヤルを回してみた。約0.1秒でシフトチェンジが可能と言われるように、ステアリングに付いているパドルシフトを動かした瞬間にはギヤが変わっている。シフトチェンジ時のショックは少なく、トルクコンバーターを排除したためアクセルのダイレクト感はMT車の様である。パドルシフトで自由にギヤを選べるのは楽しいが、エンジンが強力すぎて7速もギヤが必要無いのも事実であるが、過剰こそAMGに必要な装備だろう。
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】 インテリア インストルメントパネル 画像
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】 インテリア シート 画像
【メルセデス・ベンツ SL63 AMG試乗記】エンジン 画像

優雅さと高性能が両立で高評価

 エンジンは回転が上がれば上がるほど勢いが増し、エンジンサウンド、エキゾーストビートが入り混じり官能的であると評価していい。どんな回転数、スピードでも右足に力を入れると一瞬、目の前の道路が狭くなったような錯覚に陥るほど強烈な加速を体験する。ブレーキはフロント360mmの大径ドリルドベンチレーテッドディスクを採用して制動力には不満は無いが、ブレーキペダルのストロークと制動力がリニアでなく、また超高速域から制動時にクルマがやや不安定であった。おそらくこのクルマ固有の問題であり、再調整後に再び試乗したい。
 SL63 AMGは優雅さと高性能が両立し、しかも実用性は高くパーフェクトなロードスターである。ドライバーになるには品格(良心)が必要だろうと感じながら、私はクルマを降りた。

(レポート:丸山 和敏

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