バンコク国際モーターショーレポートの目次
中国メーカー、タイへ攻勢かける!?
コロナ禍で3年もの間隔が空いてしまったが、久々にバンコク国際モーターショーを取材した。3年の間に状況は大きく変わっていて、会場のIMPACTコンベンションセンター周辺も、3年前は空き地ばかりだったのに今回来て見ると高層ビルや高層住宅がたくさん建設され、また新しい高架道路が通るなど、大きく様変わりしていた。モーターショー会場内の展示内容についても同様で、大きく変わっていた。その雰囲気を紹介していきたい。
バンコク国際モーターショーは、東南アジア最大のモーターショーを標榜しており、今回が44回目という歴史を持つ。
タイの王立自動車クラブが主催者に名を連ねていることもあり、会場のエントランスに王室関係の展示などがある。今回は年代モノのジープ・ワゴニアが展示されていた。
タイで圧倒的なシェアを占める日系自動車メーカーのほか、販売台数は少ないものの欧米のメーカーも数多く出展しており、近年は中国メーカーの出展も目立つようになっていた。
今回のショーでは、それが一段と際立っていて、4年前に来たときにはMG(上海汽車)だけだった中国メーカーが、今回はBYDやGWM(長城汽車)が加わったほか、メタという小さな中国系自動車メーカーも出展していた。
中国系自動車メーカーが目立つのは、展示スペースの広さを見ても分かる。タイ市場で圧倒的なシェアを持つトヨタ/レクサスが広いスペースを占めるのは当然で、BMW/ミニも負けない広さを持つが、それに次ぐのがMGやBYD、さらにはGWM(長城汽車)などのメーカーだ。
この3社のスペースはホンダ、三菱、日産、マツダ、スズキなどよりも広く、日系メーカーを押し退けて中国系メーカーが出張ってきているのが分かる。中国系メーカーは販売面ではまだまだ日系メーカーにはるかに及ばないはずだが、それでも広いスペースを確保するのはタイ市場に本格的に食い込んでいこうとする意欲の表れと言っていい。
これらを念頭に各社のブースを順に見ていこう。
トヨタブース
トヨタ ハイラックス・レボBEVコンセプト
ステージ上に並べられていたのは、ハイラックス・レボのBEVと新型プリウスの2台だった。プリウスはともかくハイラックス・レボの電気自動車仕様は昨年12月にタイトヨタの60周年を記念して発表されたもの。必ずしも市販を前提としたものではなく、あくまでもコンセプトモデルとしての展示だ。
ただ、タイでは政府が電気自動車推進策を展開しており、税制上の優遇措置をとっているほか、充電設備の整備を進めていることから、市場ニーズが高まってくれば市販も検討するというスタンスだ。
トヨタの懐の深さというか、引き出しの多さを示す展示である。なお、日本で市販されたbZ4Xもステージ脇にさりげなく展示されていた。
トヨタ LPG HEVタクシーコンセプト
注目されていたのは、LPG HEVタクシーコンセプトだ。JPNタクシーにタイのタクシーのカラーリングを施して出展されていたもので、これは本気で発売するものと見られる。車名通り、LPG(液化石油ガス)とHEV(ハイブリッド)を組み合わせたもので、環境に優しいタクシーだ。
日本で2017年に発売されたJPNタクシーは、その後の新コロナウィルス禍などの影響もあってトヨタの思惑通りの売れ方にはなっていない面もある。香港への輸出に続いてタイでも販売するようになれば、生産台数はかなり増えることになる。
現在タイでタクシーに使われているクルマの多くはカローラセダンだが、JPNタクシーにはハイブリッドによる燃費の良さや居住性・乗降性の高さなどがあるため、タイ市場に受け入れられやすいだろう。
問題は価格で、日本生産車を輸入したのでは関税が高くつく、営業車としての優遇を受けられれば良いが、そうでない場合には現地生産を目指すことになるだろう。タイで生産すればインドネシアへの輸出は容易だし、将来的にはタイ生産車を日本へということも考えられないではない。
このほか、水素エンジンを搭載したカローラクロスH2コンセプトモデルや3月9日に改良モデルを発表したばかりのヤリス、さらにヤリスATIVなどが注目モデルだった。中でもヤリスATIVはタイでは昨年発売されたモデルで、その後インドネシアではヴィオスとして売られており、東南アジアの個人ユーザー向けの中心車種である。展示はモデリスタ仕様とされていた。
レクサスブース
レクサスRZ450e
レクサスのブースでは、BEVのRZ450eがお披露目された。トヨタはレクサスブランド車をEV化することが宣言しており、タイでも早くもRZ450eを導入することになった。
ただ、プライスタグを見てびっくり。何と419万バーツとされていた。日本円にすると1600万円超の価格である。タイでは日本以上にレクサスのブランドイメージが確立されているものの、この価格でどれだけ売れるか、気になるところだ。他に、改良された航続距離が伸びたBEVであるUX300eも出展されていた。
<レポート:松下宏>
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