システム出力218psを発揮するbZ4X、ソルテラ
トヨタとスバルが共同開発した量産BEV(バッテリー電気自動車)が、トヨタのbZ4Xとスバルのソルテラだ。
両車とも最初にステアリングを握ったのは、公道ではなくクローズドのサーキットと雪道だった。正式発表前だったこともあり、限られた条件下での試乗だったが、高いポテンシャルと素性のよさを垣間見せている。
そして待望の公道試乗は、300kmものロングドライブとなった。名古屋をスタートし、郡上八幡、白川郷を経て、高速道路で富山から金沢まで走ったのだ。
bZ4X、ソルテラともに駆動方式は、前輪駆動の2WDと4WD(AWD)を設定する。4WDシステムは、後輪用モーターを加えたツインモーター4WDだ。
前後に配されたモーターの最大出力は、80kW(109ps)/4535〜12500rpmずつで、システム最大出力は160kW(218ps)になる。最大トルクは前後とも169N・m/0〜4535rpmとした。
AWDモデルは、3.0Lクラスのガソリンエンジンと同等のトルクを発生する。前輪を駆動する2WDモデルは、最大出力が150kW(204ps)/5379〜7500rpm、最大トルクが266N・m(27.1kg-m)/0〜5379rpmのスペックだ。
ガソリン車から乗換えても違和感ないBEV
乗換えポイントとなった郡上八幡までは、ソルテラのステアリングを握った。パワー感は2WDも4WDも大きくは変わらない。
内燃機関と違い、モーターは瞬発力が鋭く、パワーとトルクが瞬時に立ち上がる。だから、エコモードでもアクセルを踏み込んだ直後から軽やかな加速を披露した。
名古屋高速や名神高速道路のランプ進入は、アクセルをひと踏みしただけで難なく本線に合流できたし、3名乗車で登坂路を走っても十分な余裕が感じられる。
これは、bZ4Xについても言えることだ。息継ぎのないシームレスな加速フィールが気持ちいい。
両車とも、ガソリンエンジン車から乗り換えても違和感のないように、絶妙にチューニングされている。ドイツやアメリカのBEVに多いスポーツカー的なパンチのある加速ではない。
だが、ノーマルモードなら2.0Lのターボ車と互角以上の加速を楽しむことが可能だ。初めてステアリングを握っても、愛車のように自在に操ることができる。自然体の乗り味で、違和感はまったく感じない。リニアで上質なパワーフィールにも驚かされた。
しかも、痛快な加速を繰り返しても、キャビンが静かに保たれているのはBEVならではの魅力だ。モーターやインバーターが発する不快なノイズも上手に封じ込めている。
だから、加速しているときでも心地よいオーディオの音色に耳を傾けながらドライブを楽しめた。
ただし、タイヤが発生するパターンノイズだけは気になった。これが惜しいところだ。
ソルテラの優位点とは?
ソルテラのAWDモデルは減速特性を4段調整できるパドルシフトを標準装備し、走りのキャラクターもパワーモードを追加して3パターンから選べるようにした。パワーモードではキレのよい加速を楽しませてくれ、スポーティ度も高まる。これは、ソルテラがbZ4Xに対し優位に立つ装備だ。九十九折りのワインディングロードでも重宝した。
ソルテラで驚かされたのは、高速道路での直進安定性のよさだ。ビシッっと真っ直ぐに走り、スピードが80km/hを超えたあたりから路面に吸い付いたように安定感が増してくる。
これは、bZ4Xにサーキットで乗ったときにも感じたが、高速クルージングでは安定感が一段と際立っていた。ドライブした日は横風が強かったが、無風のように真っ直ぐ走り、群を抜く安定感を披露する。ヨーロッパ製のBEVと比べても高速安定性は優秀だ。
それぞれ独自性ある走行フィール
郡上八幡でクルマを乗り換え、bZ4Xの4WDモデルのステアリングを握った。白川郷までは気持ちのいいカントリーロードだ。アップダウンが連続するが、軽やかな身のこなしを見せ、ハンドリングは素直だ。
ただし、サーキット走行でも感じたが、20インチタイヤを履くbZ4Xは、操舵に思いのほか力を必要とした。もう少し軽い方がロングドライブでは疲れにくいだろう。ソルテラや18インチタイヤ装着車では感じなかった動きだ。
bZ4Xは、フロア下に重いバッテリーを敷き詰め、シャシー剛性も高いので姿勢が安定しているように感じられた。操舵フィールがよく、扱いやすく感じられるのも美点である。山岳路で重宝したのが、アクセル操作だけで多くの走行シーンをこなせる「Sペダルドライブ」だ。アクセル操作での減速に加え、パドルシフトで減速特性を変えられるのも嬉しい。
4WDはスタビリティ能力が高く、コントロールできる領域も広い。ホットな走りでは設置フィールがよく、ロールの収まりもいいソルテラの方に魅力を感じた。
だが、日常域で穏やかな乗り心地を提供し、ハンドリングも素直なbZ4Xも魅力的だと言える。初めてBEVに乗った人で違和感を覚えない。ビギナーでも扱いやすいはずだ。快適性も一級で、どの席に座ってもリラックスできる。
ちなみに、ソルテラはダンパーの減衰力を高め、電動パワーステアリングの味付けも微妙に変えた。スタビリティを重視したセッティングで、気持ちよくクルマが狙った方向に向く。ただし、荒れた路面や低速域での乗り心地は、bZ4Xが一歩上の印象だ。
航続距離には、何の不満もない!?
今回のロングドライブで馴染めなかったのは、ステアバイ・ワイヤを前提としたメーターまわりのデザインである。ステアリングが邪魔になってメーターは見づらいなど、視認性は今一歩。タッチパネル式のナビゲーションシステムの使い勝手も不評だった。また、リアワイパーも装備して欲しいところだ。
BEVで気になることの1つは電費だろう。バッテリー容量は71.4kWhと、かなり大きい。一充電での走行可能距離は、ソルテラの2WDモデルが567km(WLTCモード)、20インチタイヤを履く4WDのET-HSでも487kmと記載されている。
だが、この数値はベテランドライバーが秘術のかぎりを尽くしてのものだ。今回のドライブでも登り坂で積極的にアクセルを踏んでいくと電費は一気に落ち込んでしまった。
電費は4㎞/kWh前後まで下がり、登り坂ばかりだと航続距離は一気に短くなってしまった。当然、エアコンなどの快適装備を使い、アクセルを積極的に開けていくとグッと電費は落ち込んでしまう。
とはいえ、公道なら航続距離が300kmに届かないことはないはずだ。エアコンを作動させ、ちょっと積極的に走っても平均電費は6km/kWhに迫った。ヒーターを使う冬場はもう少し電費は下がるだろう。
だが、BEV乗り慣れている筆者から見ると、実用上、不便は感じないレベルのBEVだ。不安なら1回だけ急速充電すればいい。30分以下の充電でも無理なく400kmの距離を走れるはずである。
しかも、ロングドライブしたときの快適性は、ガソリンエンジン搭載車を相手にしない。bZ4Xもソルテラも、合格点を出せるBEVであることが、300kmのロングドライブで分かった。
<レポート:片岡英明>
トヨタbZ4X価格
・Z FF 6,000,000円/4WD 6,500,000円
*ただし、全車リース販売。詳しくはこちらへ。bZ4X専用プラン
スバルSOLTERRA価格
・SOLTERRA ET-SS 5,940,000円(FWD) 6,380,000円(AWD)
・SOLTERRA ET-HS 6,820,000円(AWD)
スバルSOLTERRA電費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:SOLTERRA ET-HS
ホイールベース[mm]: 2,850
最低地上高[mm]: 210
最小回転半径[m]: 5.6
車両重量[kg]: 2,030
フロントモーター最大トルク[N・m]:169
リヤモーター最高出力[kw]: 80
リヤモーター最大トルク[N・m]:169
航続距離WLTCモード[km/l]: 487
総電力量[kWh]:71.4
サスペンション前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
タイヤサイズ:235/50R20
充電時間:90kW出力の急速充電器で約40分で約80%までチャージ
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