トヨタ シエンタ試乗記・評価 想像以上にシッカリとした足回りと優れた低燃費性能は◎。ただし、自動ブレーキが標準装備ではない点が☓
■動力性能はそれなりな1.5Lガソリン。しかし、燃費性能は秀逸で高評価!
シエンタ のガソリン車は、FFと4WD で搭載エンジンが異なり、FF車には燃焼効率を向上させた新世代エンジンの2NR-FKE型エンジンが搭載されている。パワー&トルクは80kW/136N・mを発生する。この数値は1500cc級のエンジンとして特に優れたものではない。シエンタは、背の高いミニバン タイプのクルマなので、車両重量がちょっと重くて1300kgに達しているが、シエンタのガソリン車を一般道で走らせて不満を感じるシーンはなかった。
元気良く走らせるためには、絶対的な動力性能がもっと高いほうが良いかも知れないが、ファミリーユースのミニバンという性格を考えたら、この性能で十分である。
動力性能と同時に大きく向上したのが燃費性能だ。FF車全車にアイドリングストップ機構を装着することなどによって、車両重量の重いミニバンなのに20.2km/Lを達成している。ハッチバック タイプのコンパクトカー のような燃費というわけにはいかないが、20km/Lを超える燃費は納得モノである。
アイドリングストップ機構は、ブレーキを踏んでいないと継続されないほか、ブレーキを踏み込むとエンジンが再始動するというトヨタ独特の設定だが、再始動時の振動や騒音も比較的良く抑えられている。ただ、ブレーキペダルから足を離した瞬間に、アクセルを踏み込むような動作をすると、少しギクシャクした動きを見せることがあった。落ち着いてペダルを踏み変えたい。
■ガソリン車よりも力強さを感じるハイブリッド車。燃費は27.2km/Lを達成!
ハイブリッド車 の搭載エンジンは1NZ-FXE型で、燃費効率を追求したチューニングの結果として54kW/111N・mのパワー&トルクを発生する。これに45kW/169N・mを発生する電気モーターを組み合わせ、システムとしては73kW(100ps)のパワーを発生する。絶対的な動力性能はガソリン車を下回ることになるが、ハイブリッド車ならではのスムーズな走りにより、走りのフィールはガソリン車を上回っている印象を受けた。
静かでスムーズに発進するほか、低回転域ではモーターのトルクが貢献することもあって、ガソリン車以上の力強さを感じる。ハイブリッドシステム自体は、リダクションギア付きのTHSⅡで、エンジンも含めたシステムはアクア 用を流用している。アクアに比べて車両重量が重いので、ギア比を変更して走りが鈍くならないように対応している。
EV モードを選択すれば、しばらくの間はモーターだけで走ることが可能だが、ちょっとアクセルを踏み込むなどすると、すぐにエンジンがかかるので、EVモードの領域はそれほど広いものではない。
ハイブリッド車の燃費は27.2km/Lだ。アクアの燃費には遠く及ばないが、これは車両重量の違いによるものだ。ファイナルギア比を低くしたことも影響している。それでも3列シート車で27.2km/Lというのはとても良い燃費性能である。ミニバンとして断トツの燃費であるのは間違いない。
2016年秋には、ライバルのホンダ フリードがフルモデルチェンジする。新型フリードは、1.5Lのハイブリッドと1.5Lガソリンの2タイプが用意されていて、シエンタと同じ構成。燃費やパワーがどうなるか楽しみな1台だ。シエンタ購入時には、ジックリとフリードと比較してから購入するといいだろう。
■選んではいけないオプションは16インチアルミホイール! これを選ぶと、コンパクトミニバンではなくなる? その理由は?
シエンタの足回りは、想像以上にしっかりした印象だった。この部分は、高評価できるポイントだ。とかくミニバンは、背の高いボディに加え、乗員の快適性を重視して柔らかめの足回り設定になりがちだ。結果として、コーナーでの挙動が落ち着かないものになったりしがちだが、シエンタはそれが意外なくらいなく、しっかりとしたハンドリング性能を誇る。
これは、走りの基本となる高いボディ剛性を確保した上で、前後のサスペンションを不快な振動や揺れを抑えたフラット感のあるものにチューニングした結果である。コーナーなどでも、安定感のある走りを実現していた。
なお、シエンタのタイヤは全車に15インチが標準装着されるほか、ハイブリッド車を含めたFF車には16インチタイヤがオプション設定されている。16インチタイヤなら操縦安定性が高まるのだろうが、これはお勧めしない。最小回転半径が5.2mから5.8mになり、小回りの効かないクルマになってしまうからだ。この最小回転半径は、アルファード /ヴェルファイア といった大型ミニバン並みだ。狭い駐車場などでは、小さいクルマなのに苦労するだろう。
■自動ブレーキはまさかのオプション! サイド&カーテンエアバッグとセットで装着することをお勧めする!
逆に全車にオプション設定のトヨタセーフティセンスCとサイド&カーテンエアバッグはぜひとも装着したいオプションだ。歩行者検知式の自動ブレーキではないのだから、せめて全車標準装備にしてほしい。トヨタセーフティセンスCは、赤外線とカメラを組み合わせた簡易型の自動ブレーキを含めたシステムである。今どきのクルマには、必需品といえるものである。実際に購入する場合には、こうした安全装備には予算を確保して万全の仕様にしたい。
試乗したシエンタG(7人乗り)の本体価格は198万円。これにディーラーオプションのカーナビを始め、LEDランプパッケージ、自動ブレーキを含むトヨタセーフティセンスCなど、いろいろなオプションが装着されて255万円ほどの仕様になっていた。Xグレードを選び、LEDパッケージを省略すれば30万円くらい安くなるので、それがリーズナブルな選択だと思う。
シエンタハイブリッドG(6人乗り)の本体価格は233万円弱。これにディーラーオプションのカーナビを始め、LEDランプパッケージ、自動ブレーキを含むトヨタセーフティセンスCなど、いろいろなオプションが装着されて287万円ほどの仕様になっていた。値引きを考慮しても諸費用を含めたら300万円を超えるような予算である。小さいからといって、安いクルマではない。
ハイブリッド車は、ガソリン車に比べると35万ほど高い。距離を走るユーザーならハイブリッド車の燃費で価格差を取り戻せる可能性もあるが、ほとんどのユーザーは取り戻せない。ハイブリッド車のほうが良く売れているが、ガソリン車を選ぶのは現実的な選択である。
■トヨタ シエンタ/シエンタ ハイブリッド価格
■トヨタ シエンタ(SIENTA)価格
●1.5Lガソリン車
・X“Vパッケージ” 7人乗り 2WD 1,689,709円/6人乗り 4WD 1,831,091円
・X 7人乗り 2WD 1,816,363円/6人乗り 4WD 1,957,745円
・G 6人乗り/7人乗り 2WD 1,980,327円/6人乗り 4WD 2,121,709円
●1.5Lハイブリッド車
・X 7人乗り 2WD 2,226,763円
・G 6人乗り/7人乗り 2WD 2,329,855円
■トヨタ シエンタ(SIENTA)ハイブリッド燃費、スペックなど
定員[人]7人
代表グレード | トヨタ シエンタ(SIENTA)ハイブリッドG 7人乗り |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,235×1,695×1,675mm |
車両重量[kg] | 1,380kg |
総排気量[cc] | 1,496cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 74(54)/4,800rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 11.3(111)/3,600〜4,400rpm |
モーター最高出力[ps(kw)] | 61ps(45kw) |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] | 17.2kg-m(169N・m) |
システム全体[ps(kw)] | 100ps(73KW) |
ミッション | 電気式無段変速機 |
最小回転半径[m] | 5.2m |
バッテリー 種類/容量(Ah) | ニッケル水素/6.5 |
価格 | 2,329,855円 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
【関連記事】
- 動画あり!トヨタ シエンタ(SIENTA)新車情報・購入ガイド ライバルを圧倒する燃費27.2㎞/Lと価格。最上級グレードGでも、フリードより安い約233万円という価格設定!
- トヨタ シエンタ新車情報・試乗評価一覧
- トヨタ ポルテ/スペイド新車情報・購入ガイド 洗えるシートが装備されたオシャレな特別仕様車デビュー!
- トヨタ ポルテ/スペイド新車情報・試乗評価一覧
- 新型ホンダ フリード/フリードハイブリッド新車情報・購入ガイド ライバル、シエンタに待ったをかける新型フリード、ついに先行公開! 発売時期や燃費・価格を予想した
- ホンダ フリード新車情報・試乗評価一覧
- 日産セレナ新車情報・購入ガイド 新型セレナ、8月末発売開始!? 自動運転技術「プロパイロット」日産車初搭載! セレナハイブリッドは、1年遅れか? 燃費や価格を予想した
- マツダ プレマシー新車情報・試乗評価一覧
- トヨタ ノアG's/ヴォクシーG'S新車情報・購入ガイド 走行性能を向上させて「もっといいミニバン」に大変身!
- トヨタ ノア/ヴォクシー新車情報・試乗評価一覧
- ホンダ ステップワゴン新車情報・購入ガイド 苦しいホンダの台所事情。デビュー後1年未満の新型車に、まさかのお買い得な特別仕様車投入!
- ホンダ ステップワゴン新車情報・試乗評価一覧
- ミニバン新車情報・試乗評価一覧
- 新型ホンダ オデッセイハイブリッド新車情報・購入ガイド 絶対王者「アルファード/ヴェルファイア」の牙城を崩した!? 売れ行き好調! パワーアップした進化型ハイブリッドシステムを搭載! オデッセイハイブリッドの価格は356万円から!燃費は26.0㎞/L!
【オススメ記事】
- 三菱エクリプスクロス試乗記・評価 さすが4WDの三菱! 豪快にリヤタイヤを振りだすような走りも楽しめる絶妙なS-AWCに脱帽!【レビュー】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.6】 日差リーフの実電費チェック! (一般道編)コツコツ電費を稼ぐe-Pedal【評論家ブログ : 日産リーフ】
- メルセデス・ベンツSクラス新車情報・購入ガイド 約20年振りの直6エンジンに、ISGを組みあわせた次世代エンジンを搭載!【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.5】 日差リーフの実電費チェック! (高速道路編)実電費アップは、こだわりの空力性能にあり!【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 三菱エクリプスクロス新車情報・購入ガイド スタイルに走り、装備とスキ無しの完成度を誇るコンパクトSUV。ガソリン車だけしかないことが、唯一の弱点?【ニュース・トピックス】
- 【日産リーフ 長期評価レポートvol.4】 30歳代クルマ好き女性、初めての電気自動車! その評価は?【評論家ブログ : 日産リーフ】
- 日産セレナe-POWER新車情報・購入ガイド ついに、シリーズハイブリッドシステムを搭載したセレナ! 5ナンバーミニバン、ハイブリッド車戦争へ加速!!【ニュース・トピックス】
- マツダCX-8試乗記・評価 際立つ運転のしやすさ! こだわりの「躍度」を雪上でチェック!【レビュー】
- 日産テラ(TERRA)新車情報・購入ガイド ナバラベースのSUV中国でデビュー! 日本への導入は?【ニュース・トピックス】
- フォルクスワーゲン パサート新車情報・購入ガイド 遅れてきた大本命! クリーンディーゼルエンジンを搭載したTDIデビュー!!【ニュース・トピックス】
【関連記事】
- 速報!2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー「トヨタ プリウス」に決定!!【イベント】
- トヨタ グローバルハイエース BEVのメリットを生かした次世代バン JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート【トヨタ】
- トヨタ IMV 0(アイエムブイ ゼロ) 日本導入が気になる1台 JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート【トヨタ】
- トヨタKAYOIBAKO 自由自在な荷室空間で多様性に対応 JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート【トヨタ】
- トヨタ FT-3e/FT-Se トヨタはBEVに積極的! JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート【トヨタ】
- 日産ハイパーツアラー 未来型エルグランド? JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート【日産】
- レクサスLM新車情報・購入ガイド 4人乗りのみ! まさかの2,000万円! 世界最高級ミニバンか?【レクサス】
- トヨタ クラウンスポーツ新車情報・購入ガイド 新たな価値観を追求した攻めの姿勢に変化なし!【トヨタ】
- トヨタ センチュリー新車情報・購入ガイド SUV風ショーファーカー! 新時代の扉が開いた!【トヨタ】
- トヨタ GRカローラ新車情報・購入ガイド マニアックな一部改良。550台の抽選申し込み開始!【トヨタ】
【オススメ記事】
- トヨタ プリウス新旧比較 失敗・後悔しないクルマ選び【対決】
- レクサスNX新車情報・購入ガイド ラグジュアリー系だけでは戦えない? アウトドア仕様の新グレード「オーバートレイル」新投入!【レクサス】
- 日産車雪上、試乗記・評価 雪道でe-4ORCEの実力は?【日産】
- ホンダZR-V vs 日産エクストレイルを徹底比較・評価! 失敗・後悔しない新車選び【対決】
- BMW i7試乗記・評価 2つの顔を持つ電気自動車【BMW】
- ボルボXC40 リチャージ試乗記・評価 後輪駆動化の恩恵で、よりスッキリ系ハンドリングへ!【ボルボ】
- アバルト500e試乗記・評価 かわい過ぎるスポーツEV【フィアット】
- ヒョンデ コナ動画・評価 高コスパBEV日本デビュー!【BLOG】
- 日産セレナ VS トヨタ ヴォクシー/ノア、失敗・後悔しないための徹底比較評価【対決】
- スバル クロストレック VS スバルXV、失敗・後悔しないための新旧比較評価【イベント・モーターショー】
CORISM公式アカウントをフォローし、最新記事をチェック!