変わってきた? 日産の技術開発
2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞した日産ノート、オーラ。日産にとって、10年振りの日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞だ。その受賞理由のひとつに「高出力リヤモーター搭載のe-POWER 4WDの優れた制御による安定した走りも特筆される」とある。今回は、長野県女神湖の氷上でe-POWER 4WDの実力を評価した。
この日産e-POWER 4WDの概要を聞いたとき、日産が変わってきていると感じた。今までの日産なら、これほど手の込んだ4WDをコンパクトカー向けには造らないと思っていたからだ。
先代ノートの4WDは、小さなモーターを後輪側に使い、とりあえず滑りやすいところから脱出できる程度のアシスト的なものだったからだ。この4WDに、走りの質や運転の楽しさという要素は一切ない。求められたのは、コスト低減による利益だ。
ところが、こうした傾向は、カルロス・ゴーン元社長が逮捕された2018年以降、徐々に変わってきたようだ。
エンジニアとの雑談の中で、e-POWER 4WDは利益重視の以前なら採用されなかった技術だったかもしれないと振り返った。その上で、もちろん利益が出せなければ会社の存続はなく、新しい技術への投資もできないとしながらも、新しい技術でより良いクルマができるのであれば採用されやすい環境に変化しているとも語った。そんな話を聞くと、今後出てくる日産車には、ますます期待できるのでは? と、なぜかうれしく思う。
コンパクトカーでは稀な大出力モーターを使ったe-POWER 4WD
さて、e-POWER 4WDを搭載したノートに乗る。フロントモーターは、116ps&280Nm、リヤモーターは68ps&100Nmという大出力を誇る。このリヤモーターの出力はオーラも同じ。
同様なリヤにモーターを使った4WDであるヤリスハイブリッドのリヤモーター出力は5.3ps&52Nm。いかに、ノートやオーラのe-POWER 4WDがパワフルか分かる。
まずは、横滑り防止装置であるVDC (ビークルダイナミクスコントロール)オンで走ってみた。路面は、ピカッピカのツルツル氷上。クルマの乗り降りに時にも転倒しないか気を付けなくてはならないくらいよく滑る。
そんな路面で、グッとアクセルを踏みつけてもわずかにタイヤが滑る感覚があるものの、ノートは何事も無く猛然と走り出した。明らかに後輪側にトラクション(駆動力)がかかっていて、イッキに加速する。
FF(前輪駆動)車は、どうしても加速時にはタイヤに荷重が乗らない。VDCが介入して、最適なトラクションを確保するものの、e-POWER 4WDのようなスタート&ダッシュはできない。
ドリフト自由自在のe-POWER 4WD
カーブ進入時の姿勢や減速もePOWER 4WDの安定感が光る。後輪側のモーターでも回生するので、車体の姿勢もよく減速もスムースだ。
カーブでは、多少オーバースピード気味に進入してもVDCが作動。想定の走行ラインに戻れるようにアシスト。FF車の制御では、とにかく車速を落としながらタイヤのグリップが戻るのを待ちながら曲がる印象が強い。だが、e-POWER 4WDは、積極的にリヤにトラクションをかけて曲げる制御になっている。
VDCをオフにしてみると、e-POWER 4WDは笑いが止まらなくなるくらい楽しい動きを披露。アクセルオフで旋回姿勢に入り、リヤ外輪側に荷重がかかったところで、アクセルをちょっと踏むとリヤタイヤはスルスルと非常にゆるやかにスライドを始める。アクセルを抜けば、グリップは戻り、逆にアクセルをさらに強く踏み続けると豪快にドリフトが可能。
滑り出しも分かりやすく、しかも緩やかに始まるので、誰もがコントロールしやすいと感じるはずだ。ノートとオーラ⁻は電動車なので、アクセル操作に対するクルマの反応も早いこともコントロールを容易にさせている要因のひとつ。ガソリン車ではできない走りの良さがある。クルマをコントロールするのが楽しいと素直に感じる4WDに仕上がっている。
こうしたFR(後輪駆動)的走りが楽しめる日産4WD車は、GT-Rを除きノートとオーラくらい。SUVのエクストレイルは、4WDロックにしても後輪を軽くスライドさせるくらいしかできない安定・安全重視の制御だ。これが悪いとは言わないが、自らクルマをコントロールする楽しさはない。
このe-POWER 4WDの楽しさは、雪道だけではなく乾燥舗装路でも同じ。カーブの立ち上がりでは、しっかりとリヤタイヤにトラクションがかかり、FR車のように後ろから押され安定した姿勢を維持。FFベースの4WDとは思えない走行フィールだ。こんなコンパクトカーは、初めてだ。日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞は伊達ではない。
なぜ、オーラNISMOにe-POWER 4WDの設定がない!?
ノート、オーラを評価すると、FF車であってもよいクルマだが、e-POWER 4WDなら、凄くよいクルマになる。雪国ではないから4WDは必要ない。ではなく、走りが楽しいからあえて4WDを選びたくなるクルマがノートとオーラだ。
だけど、日産もよい4WD技術を得たのに、どうも煮え切らない部分もある。残念ながら、走りに特化したオーラNISMOには、4WDの設定がない。むしろ、オーラNISMOにはe-POWER 4WDが必要! と、改めて思った。
<レポート:大岡智彦>
日産ノートe-POWER vs ホンダ フィットe:HEV徹底比較!
日産ノート価格
・X FF 2,186,800円/4WD 2,445,300円
・S FF 2,029,500円/4WD 2,288,000円
・F FF 2,054,800円
・X エアリーグレーエディション FF 2,629,000円/4WD 2,887,500円
・AUTECH FF 2,504,700円/4WD 2,763,200円
・AUTECH CROSSOVER FF 2,537,700円/4WD 2,796,200円
日産ノート燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:日産ノートe-POWER X FOUR
ボディサイズ:全長4045×全幅1695×全高1520mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1340kg
駆動方式:4WD
最小回転半径:4.9m
エンジン型式:HR12DE型 直3 DOHC 12バルブ
排気量:1.198L
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター型式:EM47
フロントモーター最高出力:116PS(85kW)/2900-10341rpm
フロントモーター最大トルク:280N・m(28.6kgf・m)/0-2900rpm
リヤモーター最高出力: 68PS(50kW)4775-10024rpm
リヤモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
WLTCモード燃費:23.8km/L
JC08モード燃費:28.2㎞/L
動力用主電池種類: リチウムイオン電池
サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
タイヤ前後:185/60R16
日産オーラ 価格
・G FF 2,610,300円/4WD 2,868,800円
・G leather edition FF 2,699,400円/4WD 2,957,900円
・NISMO FF 2,869,900円
日産オーラ燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:日産オーラ G FOUR
ボディサイズ:全長4045×全幅1735×全高1525mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1370kg
駆動方式:4WD
最小回転半径:5.2m
エンジン型式:HR12DE型 直3 DOHC 12バルブ
排気量:1.198L
エンジン最高出力:82PS(60kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:103N・m(10.5kgf・m)/4800rpm
フロントモーター型式:EM47
フロントモーター最高出力:136PS(100kW)/3183 -8500rpm
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-3183rpm
リヤモーター最高出力: 68PS(50kW)4775-10024rpm
リヤモーター最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/0-4775rpm
WLTCモード燃費:22.7km/L
JC08モード燃費:27.0㎞/L
動力用主電池種類: リチウムイオン電池
サスペンション前/後:ストラット/トーションビーム
タイヤ前後:205/50R17
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