走る電池になった日産リーフ【クルマが住宅へ電力供給】 [CORISM]

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【ビジネス・経済】2011/08/06

■電気自動車が、自宅用走る蓄電池になる時代

日産リーフ
 日産自動車は、電気自動車リーフの駆動用バッテリーから一般住宅に電力を供給するPCS(パワー・コントロール・ユニット)を公開した。

 このPCSは、日産リーフのバッテリーに蓄電された電力を家庭用に使える電圧や周波数に変換するユニット。リーフに搭載されるバッテリーの容量は24kwhと、なんと一般家庭における約2日分の電力に相当する。この大容量の電力をPCSを経由することで停電や、緊急時のバックアップ電源として使用可能。さらに、深夜電力で充電し昼間の電力供給ピーク時に使用すれば、ピークカットの役割も果たすことができるという優れものだ。このPCSを日産は、2011年度中に販売を目指している。残念ながら、価格は未定だ。

■住宅とクルマ、エネルギー、3つをワンピースとして考える時代に突入した

積水ハウス観環居
 震災以降、停電の影響もあり家庭用の蓄電池が売れいる。また、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)など、住宅用太陽光発電で得た電力を蓄電し使用する家庭用電力のあり方も大きく変化してきている。そんな中、電気自動車である日産リーフの大容量リチウムイオン電池の使い方に注目が集まった。リーフの電池から電力を取り出すことができれば、家庭用蓄電池が必要なくなるという考え方だ。しかし、厳密にいえば日産リーフは基本的にクルマ。家族の誰かがリーフを使い外出してしまえば蓄電池としての機能しない。あくまで、リーフが車庫にあるときにだけPCSは有効に使うことができる。

 今回、日産と協力したのは積水ハウス。実証実験を始めている「観環居」は、HEMS設備に加え、電気自動車用200Vコンセントも装備し、日産PCSも導入した最先端のスマートハウス。積水ハウスの総合住宅研究所技術研究室長の石井さんは「今まで住宅とエネルギー、そしてクルマはそれぞれ個別のものでした。しかし、電気自動車やPHVなど蓄電機能があるクルマの登場や、太陽光発電などで、家を中心に今まで個別に管理していたものがワンピース化されていく時代になるかもしれません」と語る。HEMSがさらに進化すれば、スマートグリッドなどの社会インフラに発展する。今まで住宅とクルマは、せいぜい車庫が接点だった。しかし、電気自動車リーフの誕生で住宅とクルマの関係がさらに密接になった。

■電気自動車への温度差と独自性

日産リーフと観環居
 住宅大手といえば、日産と協力した積水ハウスの他に大和ハウス、そしてトヨタグループの一員でもあるトヨタホームなどがある。トヨタは独自にプリウスPHVなどを基軸として、スマートハウスの実証実験開始している。大和ハウスなどは、グループ企業から独自の蓄電池を調達し実証実験を開始するが、クルマとの関連は薄く、電気自動車を外部電源として使用するなどの発展性は低い。ハウスメーカー各社、独自にスマートハウスのあり方を研究中のようだ。

 住宅メーカーを傘下に持たない日産は、積水ハウスだけではなく協力先をさらに増やしていく意向。当然、積水ハウスも日産だけではないHEMSを検討中だろう。住宅メーカーにとっては、特定の自動車メーカーだけというのでは、間口を狭くするだけなので、より多くの自動車メーカーに対応することが重要だ。そういう意味では、充電ポートなどの統一規格であるCHAdeMO規格がベースになるだろう。

 また、中堅住宅メーカーもかなり注目しているようで、住友林業なども有力視されている。中堅住宅メーカーに関しては、HEMSが今後大きな起爆剤になる可能性も秘めているだけに無視できない状態だという。

 クルマの動力源が電気に変化した途端、生活や住宅、そして街のあり方さえもが変化する。電気自動車の価値は、ゼロエミッションという単純なものでは終わらない可能性を秘めている。

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(レポート:大岡 智彦

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