【真相究明レポート】トヨタ リコール問題。それでもトヨタを応援したい![CORISM] [CORISM]

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【ビジネス・経済】2010/02/23

確かにトヨタは悪かった・・・

トヨタ自動車 豊田 章男 社長

トヨタ自動車 豊田 章男 社長

 トヨタのリコール問題で北米&日本での、トヨタバッシングが続く。もはや、ヒステリックな様相を呈していて「豊田章男社長の頭の下げ方が低い」などという報道まで出ている始末。
 確かにトヨタの対応は悪かった。プリウスの問題では「クルマに問題はなく、感じ方の差である」という発言は、まさにお客様視点に立っていない。同情的立場で見ても、同じ内容でも、他にもっとソフトな言い方があったんじゃない? と、思えるほどだった。そもそも、豊田社長をとっとと会見の場に出して、話をさせればよかったのだが、トヨタ首脳陣がきっと「陛下(豊田社長)に頭を下げさせるなど、もってのほか」的な考え方があったのでは? と、感じてしまうほどだ。

GMとの合弁工場閉鎖が、すべての引き金か?

 そもそもトヨタのリコール問題のキッカケとなったのは、09年夏に閉鎖が決まったカリフォルニア州のヌーミー工場からだと思っている。この工場は、GMとの合弁工場。GMが政府の管理下に置かれ別名ガバメント・モータースと呼ばれるようになり、結果としてヌーミーからは撤退するしかなかった。きっと、この工場は赤字だったのだろう。トヨタは早々に撤退を表明した。

謙虚さに欠けていた!? 米国民の不満が爆発!

 ヌーミーの工場閉鎖が、従業員と地域の怒りをかった。全米自動車労組(UAW)はトヨタ車の不買運動をする、とまで表明。それは、GMやフォードを救うために税金が投入された新車買い替え支援策で、トヨタもその恩恵で莫大な利益を上げていたからだ。そうなれば、アメリカ人の心中も穏やかではいられない。「日本からやってきて、どこの国で商売して誰の税金で儲けてるんだ!」となるのは当然だろう。

 さらに、この想いは「GMやフォードが復活しない、アメリカ経済がよくならないのはトヨタのせいだ!」へ加速。そこに、アクセルが戻らないといったNEWSが大きく取り上げられ(トヨタ叩きのネタ探しされたのだろう)、トヨタに対する憎悪はイッキにエスカレートした。このナショナリズムが、アメリカの国民全体に伝播した。

 残念ながら、「もうかってないから閉めます」的な判断は、あまりにも他国で商売しているという謙虚さが欠けていた。この「自分だけ儲かればいい」という思想が、最悪の結果を導いたように思える。

 ただ、評価しなくてはならないのは、全米自動車労組(UAW)の言いなりにならなかったことだ。GMとフォードの再生はUAWとの関係が最後まで足かせになっていたからだ。

見え隠れするアメリカの思惑

 リコール問題は、大なり小なり自動車メーカーにとって避けられないことだろう。色々なクルマが、点検や車検時にCPUのアップデートが施されている。そんな現状なのに、今回のアメリカのバッシングはもはや常識を超えて悪意すら感じる。カローラのパワステ異常なんて、もはや何でもケチつけてやろう的でもある。パワステのような機械的なものは、目に見えやすく異常か異常じゃないかが比較的分かりやすい。それを察知したのか、議会での論点は、外的要因が複雑に絡み分かりにくい電子制御の部分に焦点を当てている。つまり「グレーな結果ならトヨタが悪い」という落としどころを狙っているようにさえ思える。

 業界では「次はヒュンダイかな?」。と、次に狙われるかもしれないメーカーが出てきているほどだ。他の自動車メーカーも対策を急ぐ。それは、トヨタ以外のメーカーも、新車乗り換え支援策で、それなりに儲けたからだ。

 トヨタのリコール問題をチャンスと考えたのか、北米メーカー系ディーラーではトヨタ車下取りなら数百ドル値引きという、容赦ない販売戦略が取られているようだ。

トヨタは米ナショナリズムの犠牲者か!?

 冷静に考えてみれば、アメリカ国民に見放され経営危機に陥った自動車メーカーには目をつぶり、逆に地道にアメリカでも愛されるクルマを作り続けたメーカーが、落ちぶれたメーカー再生のために国家ベースで叩かれる。それは、民主主義ではなく独裁国家のような手法。もはや、アメリカの経済は、ナショナリズムを煽って海外のメーカーを排除しなければならないほど、危機的状態なのだろうか? 仮想敵をつくり、自国の国民の不満をそらすのは、アメリカの伝統だ。

 日本のメディアも不思議なのだが、昔、メルセデス・ベンツが大規模なブレーキのリコールを行っている。このリコールも数百件という苦情が寄せられていて、プリウスの数倍だった。それなのに、海外ブランドに弱いのか、ほとんど騒ぎにならず、新聞紙面の一部を飾った程度で終了。なぜ、これだけ国内でトヨタが叩かれるのか理由が明確ではない。

 さらに、日本経済の代名詞ともいえるトヨタが北米での販売不振が長く続くと、日本経済にも影響は避けられない。政府も経済成長が停滞するのを懸念するなら、アメリカ政府と手打ちにする働きかけをするべきだとも思う。
 
 リコール問題という名を変えたアメリカ発のナショナリズム。アメリカで儲けすぎたトヨタから、賠償金という名の上納金で解決するのか? とにかく、トヨタと日本にとって、何ひとつ良いことがないのだけは明確だ。

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(レポート:大岡 智彦

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