国交省の大きな勘違で「日本の安全技術は大きく出遅れた」!? 追突被害軽減自動ブレーキの歴史を振り返る

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【その他】2014/12/28

 

トヨタ セーフティセンスセンサー図

過去には、停止できる自動ブレーキ技術がありながら、国交省の指導で停止できるクルマが販売できない自動車メーカーのジレンマ

追突被害軽減自動ブレーキ

 現在、注目されている安全装備の中心となる、追突被害軽減自動ブレーキについて振り返っておこう。実はこの分野で最も先進的なメーカーはトヨタ だった。2003年にハリアー に搭載したプリクラッシュセーフティシステムは世界初のもので、ミリ波レーダーで前方の障害物との衝突の危険を感知すると、ブレーキの油圧を立ち上げておき、ドライバーがブレーキを少しでも踏んだ瞬間にフルブレーキ状態になる仕組みだった。

ハリアーのすぐ後に、インスパイアレガシィ アウトバックが、油圧を立ち上げるだけでなく自動でブレーキをかける仕組みの追突軽減ブレーキを採用したので、トヨタもすぐに追従したが、2003年当時のトヨタを含めた3社のシステムはあくまでも追突軽減ブレーキだった。クルマが自動で停止する自動ブレーキではなかったのがこの時代である。

これは、国土交通省が認識を誤ったことにより、自動車の進化を妨げた指導によるものだった。

ブレーキをかけても良いが、クルマを自動停止させてはいけないという国土交通省の誤った指導があったため、クルマを停止させる技術や性能を持ちながら、ブレーキをかけて衝突の被害を軽減するだけの仕様でしかなかった。悪い表現だが、国交省は「被害軽減は良いことだが、必ずぶつけろ」と指導していたことになる。

国土交通省では、「クルマが自動で停止するようになると、ドライバーが気を抜いて前方を注意しなくなったり、ブレーキを踏まなくなったりする」との発想からクルマを停止させなかったのだ。その結果、高い技術を持ちながら、日本の自動車の安全技術は長く停滞することになった。

しかも、当時はまだミリ波レーダーの価格が高く、おまけに追突を防ぐのではなく、軽減するだけの装備ではユーザーに対する説得力がなく、高くて売れないままで数年の時間がムダに過ぎてしまうことになる。

 

 

 

ボルボの情熱と外圧が国交省を動かし、アイサイトも参入し、本格的な自動ブレーキ時代へ

追突被害軽減自動ブレーキ

 その間に、研究開発を進めたヨーロッパのメーカーやサプライヤーは、積極的にクルマを停止させて衝突の被害を防ぐ仕組みを開発し、どんどんクルマに搭載してきた。特に積極的だったのが安全に関して定評のあるボルボで、シティセーフティやヒューマンセーフティとして追突回避・軽減ブレーキを搭載してきた。

ボルボ が、これを国内でも販売しようとしたとき、国土交通省の前述の指導が引っ掛かり、すったもんだをした挙げ句、ヨーロッパでも認められていることから、何とか日本でもクルマを停止させる自動ブレーキとしての追突回避・軽減ブレーキが認められるようになった。

そのボルボとほぼ同時に申請を進めていたのがスバル で、当初ミリ波レーダー+カメラ方式での開発を進めていたが、それだとコストダウンが難しいため、カメラを2個使うステレオカメラ方式での開発を進めていた。

ステレオカメラを使うアイサイトが完成したタイミングが、ボルボの申請と重なったため、クルマを停止させる形でのアイサイトを搭載することができた。スバルにとっては、ボルボの外圧がラッキーな結果をもたらしたのだ。

クルマを停止させることができるため、“ぶつからないクルマ”というキャッチフレーズを使えるようになった。これが大きい。この分かりやすいキャッチによって、スバルのアイサイトは一気に大ブレークする。

アイサイトというネーミングや10万円という割安な価格設定も含めて、一気に普及を進める結果になった。スバルの店には、レガシィやインプレッサというクルマの名前を知らないユーザーが「“ぶつからないクルマ”をください」といって買いにくる状況になったのだ。

自動ブレーキから始まり、今では車の周囲360度を監視。より安全なクルマへと着実に進化している!

 最近、トヨタはミリ波レーダー方式のプリクラッシュセーフティシステムを14万7000円までに価格を下げていた。基本的には、自動停止しないシステムであり、価格については現行クラウンでは10万円にまで下げたが、ぶつかる追突軽減ブレーキではインパクトは薄かった。

ホンダ は、一部車種の最上級グレードに標準装備する形でしか設定しなかったので、ますます普及が進まなかった。

そうこうしているうちに、ダイハツ軽自動車 用として簡易型の追突回避・軽減ブレーキの設定を始め、これにスズキ が追従する形で安全装備の普及は軽自動車から先に進むような形になった面もあった。

ヨーロッパのメーカーでは、本命のメルセデス・ベンツ がレーダーセーフティパッケージとして、自動ブレーキ用としてはミリ波レーダーとステレオカメラの機能を融合させ、さらに近距離用や後方用のレーダーなども含めた総合的なシステムを20万円弱の低価格で設定してきた。

車線逸脱警報&逸脱防止や後方からの追突に備えるリヤCPAと呼ぶ機能など、先進技術の塊のようなパッケージとしていた。最新のメルセデス・ベンツは、クルマの周囲360度がほぼ見えているような状況である。

日本のメーカーも、マツダや日産などが複数のシステムを車種によって搭載するようになり、ホンダも従来からの追突軽減ブレーキ(CMBS)に加えて簡易型も搭載するようになるなど、安全装備は百花繚乱に近いような広がりを見せるようになっている。

トヨタが2015年から新世代のプリクラッシュセーフティシステムの搭載を発表したので、今後はほかのメーカーも含めて、機能の向上とコストダウンの競争が進むはず。より安全なクルマが期待される。

 

 

 

同じセンサーでも性能差は色々。追突被害軽減自動ブレーキなど、クルマの安全に寄与するセンサーとは?

トヨタ セーフティセンスP

トヨタ セーフティセンスP

 追突回避・軽減自動ブレーキに使われるセンサーはいろいろあり、それぞれに特徴を持つ。

●ソナー(音波)
これまでもバックソナーなどとして使われてきたセンサーで、数十㎝からせいぜい数mくらいまで検知することのできないもの。これだけでは追突軽減ブレーキ用としては使えないが、日産 の簡易型エマージェンシーブレーキには、カメラと組み合わせる形で採用されている。

●レーザー(赤外線、光)
光を使ったセンサーで、ソナーよりは遠くまで見ることができるが、ミリ波レーダーほど遠くまで見ることはできない。見える距離はせいぜい数十mである。

ボルボのシティブレーキを始め、軽自動車各車、ホンダやフォルクスワーゲンなどの簡易型はこのタイプを採用する。

スズキやトヨタは、レーザーレーダーという言い方をしていて、ミリ波レーダーと混同されかねない部分がある。

●ミリ波レーダー
電波を使ったセンサーで、数百m単位で遠くまで見ることができる。センサーとしての信頼性も高いが、価格はそれなりに高くなる。ただ、価格についてはここにきて急速にコストダウンが進み、スズキはソリオに低価格のミリ波レーダー方式の自動ブレーキを採用している。

●カメラ
ソナーも赤外線もミリ波レーダーも、距離はともかく前方の障害物を認識することができるが、前のクルマの反射板から反射を利用するなどしても、前方にどんな形でどんな大きさものがあるのかは分からない。

形を認識するにはカメラが必要であり、また形から人間を認識するためにもカメラが必要である。

カメラといっても解像度の高いものは価格が高くなるし、またモノクロかカラーかでも大きく価格が異なる。

逆に単眼のカメラでは距離の測定が難しいため、スバルでは複眼のステレオカメラを採用している。少し前までは、複眼カメラを使ったスバルのアイサイトが最も効果的かく低コストのシステムになっていた。

●ミリ波レーダー+カメラ
現状では最も優れているのがミリ波レーダー+複眼のカラーカメラを使った方式だ。遠くまで見える上にカメラによって人間を認識して衝突を防ぐことができるからだ。

ただ、コストが高くなるのは当然で、この方式のコストをどう下げていくかが今後の課題だろう。

スバルも今後は、斜め後方の安全確認などをするためには、ミリ波レーダーを組み合わせた方式を採用せざるを得なくなると見られる。

トヨタ セーフティセンスC

トヨタ セーフティセンスC

ホンダ センシング

ホンダ センシング

スバル アイサイト

スバル アイサイト
(レポート:松下 宏

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