2025 バンコク国際モーターショーレポート概要の目次
中国メーカーの出店ラッシュが続くバンコクショー
タイやインドネシアなどの東南アジアは、日系自動車メーカーの金城湯池ともいえる市場で、国によっては日本よりも日本車のシェアが高い例が見受けられるほどだ。その東南アジアで最大の市場であるタイで、日本車優位の状況が大きく変わってきた。
先に開催された第46回バンコク国際モーターショー2025を見ると、それが良く分かる。昨年から進出を強めた中国の自動車メーカーが、今年はさらに一気に出展を図ってきたからだ。
中国の自動車メーカーは昨年から、タイ政府が進める電気自動車推進策を中国の自動車メーカーが利用して、翌年にタイ国内で生産することを条件に電気自動車の完成車をタイに輸入してきた。
2025年にはその傾向がさらに強まり、ブランド数にすると実に14ものブランドがバンコク国際モーターショー2025に出展していた。日系のブランド数は7だったから中国ブランドは2倍の出展数となる。
中国ブランド車がタイに進出したのは、数年前からだ。上海汽車がMGブランドを引っ提げてタイ市場に参入。MGは知られている通り、英国由来の自動車ブランドだが、2005年に経営破綻した後、中国の南京汽車の傘下に入っていた。その南京汽車が上海汽車に買収された結果、MGブランドは上海汽車のものになったのだ。
MGブランドに続き、GWM(長城汽車)などもタイ市場に参入するようになった。だが、さらに大きな転機になったのが2024年のバンコク国際モーターショー。この年、タイ政府がBEVの普及促進を掲げたことから、中国の自動車メーカー各社が一気にタイ市場を目指す形になった。
タイ政府は、翌年にタイ国内でBEVを生産することを条件に、完成車輸入に対する関税を免除する措置をとったからだ。
中国から輸入されたBEVは、2024年のタイ市場で一定の売れ行きを示したものの、充電インフラの普及の遅れなどもあって売れ行きはまだ限定的なものとされている。
BEVに興味を持つユーザーが飛びついてものの、その後は販売が伸び悩んでいるのが実情だ。BEVに対しては、購入するユーザーにも税制上のメリットが与えられるが、2024年のタイ市場は前年比で20万台(26.2%)も販売台数を減らしており、大きな伸びにはつながっていない。
淘汰が進む? 中国メーカー
そんな中で、2025年のバンコク国際モーターショーにおける集中豪雨のような中国ブランドの進出だが、これだけ多くのブランドがすべてタイで生き残って行けるとは思えない。
タイ市場では、すでに過当競争によるBEVの大幅な値引き合戦が展開されており、今後は淘汰が進むことになるのは確実だ。
中国メーカーではないが、2024年のバンコク国際モーターショーに出展していたベトナムのビンファストは、今年は出展を見送っている。また、中国ブランドの淘汰が進むにしても、それと同時に日系の自動車メーカーも淘汰される可能性がある。
スズキがタイでの生産を2025年末までに終了することを発表(販売は継続する)したのは、その一例。ほかにも戦線を縮小しようとする動きがある。
いずれにしても、中国ブランド車の大量進出によって、日本の自動車メーカーと中国のメーカーの勢力図に大きな変化が現れたのが2025年のバンコク国際モーターショーであり、タイ市場、ASEAN市場の今後を占う意味でも興味深いショーになっていた。
BEVからPHEVへシフト
もうひとつ注目されたのは、中国メーカー各社が前年のBEV一辺倒から、今年はPHEVの比重を高めてきたことだ。
前年は、タイ政府のBEV推進政策に乗る形でBEV中心の展開を図っていたが、さすがにBEVだけでタイ市場での販売を広げていくのは無理と判断したためかPHEVを多く展示する例が目立っていた。
前年比∓44.8%の受注を獲得した2025年のバンコクショー
バンコク国際モーターショーは、かつての東京モーターショーのようにコンセプトカーや新技術・新型車をお披露目する場所としての性格より、クルマを販売する場としての性格を強めている。そうした状況の中で、今年は7万7379台の予約受注を獲得したという。
前年の5万3438台に対して、44.8%もの増加であり、大幅な伸びを記録した。バンコク国際モーターショーが、タイの自動車市場に与える影響の大きさを示すものと言っても良い。
ショー会場での予約受注といっても、実際にはショーの前に集めていたユーザーからの予約注文を、ショーの期間中に成立したものとしてカウントして発表する例が多い。あくまでも各社の自己申告の台数であるのだが、それにしてもタイの経済情勢が必ずしも好調とはいえない中で、大した数字である。
2024年のタイの新車販売台数は57万2675台。第46回バンコク国際モーターショー会場で7万7349台もの新車を受注したということは、年間販売台数の13.5%ほどを1週間ほどのショー期間中に受注したことになる。バンコク国際モーターショーがタイの自動車市場に与える影響がいかに大きなものであるかが分かる。
受注台数ナンバー1は、BYD!
しかも、見逃せないのはブランド別の受注台数だ。バンコク国際モーターショーが閉幕した後、主催者から発表されたショーの期間中の受注台数では何と9819台を受注したBYDが首位に立っている。
9615台のトヨタを抜いての首位である。以下、受注台数上位はGACが7018台、DEEPALが6067台、HONDAが5948台、MGが5910台、GWMが4959台、三菱が4398台、日産が3139台、いすゞが2989台などとなっていて、日本車が中国車にあおられている状況が良く分かる。
このような結果になったのは、中国ブランド各社が輸入したEVを無理やり押し込んだことも大きな要因とされている。中国ブランド同士の販売合戦は熾烈を極めていて大幅な値引き合戦が展開されているという。
ショー会場での予約受注という形なので、実際の販売状況が見えにくい部分もあるが、日本の自動車メーカーがうかうかしてはいられない状況になってきたのは、ある程度まで当たっている。
タイの現地資本の自動車販売会社が、日系ブランドだけでなく中国ブランドを扱うようになったり、あるいは日系ブランドに見切りをつけて好条件を提示した中国ブランドに乗り換える例も増えているという。このような形で市場環境が変化していけば、日系メーカーにとってはますます厳しい状況になりかねない。
<レポート>松下宏
※バンコク国際モーターショー2025に出展した中国ブランド(四輪車)は以下の通り。
・BYD
・DENZA
・CHANGAN
・FARIZON
・GAC
・GEELY
・GEELY RIDDARA
・GWM
・JUNEYRO AUTO
・MG
・NETA
・OMODA JAECOO
・XPENG
・ZEEKR
2024 バンコク国際モーターショーレポート概要& BYD編
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