【EV新時代のキーパーソンPART3】EV充電方式の共通規格化を目指すCHAdeMO(チャデモ)協議会 [CORISM]

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【ビジネス・経済】2010/06/02

規格共通化で充電インフラ整備を加速させる

EV充電ソケット
 新分野では常に標準規格を巡る主導権争いが起きる。往年のベータとVHS、最近ではブルーレイとHD DVDの争いなどが記憶に新しい。こういったもめごとで不利益を被るのは常にユーザーである我々だ。産業界にとっても決して益のあることではない。なんとかならないものか。
 本格的な普及が目前に迫るEV(電気自動車)の充電方式についても同じことがいえる。性能や価格面で市販化に漕ぎ着けたEVだが、それとは裏腹に遅々として進まないのが充電施設の整備だ。都市周辺ではようやく見かけるようになったものの、地方で見かけることはまずない。そんな充電インフラ整備の遅れは、とりもなおさず充電方式の標準規格化が立ち遅れたため。
 今年3月、今後のEVに不可欠な急速充電器の設置箇所の拡大することを目的に設立されたのが、CHAdeMO(チャデモ)協議会だ。協議会が推奨するCHAdeMOプロトコルと呼ばれる急速充電方式を標準規格としたうえで、今後のいっそうの普及を目指すのがミッションのひとつ。ネーミングには「CHARGE de MOVE=動く、進むためのチャージ」「de=電気」さらには「クルマの充電中にお茶でもどうですか」という意味が込められているという。
 このCHAdeMO(チャデモ)協議会。東京電力が音頭をとり(会長に東電会長の勝俣恒久氏が就任)、日産、三菱、富士重が設立準備会を設立。当初は加盟に慎重だったトヨタもメンバーに加わり、5社で代表幹事を務めるかたちで2010年3月に正式発足している。そのほか充電機器メーカー、充電サービス提供企業、およびこれを支援する企業や行政など、国内外含めて158の企業・団体が参加する大所帯になっている。業界を横断して設立されたCHAdeMO(チャデモ)協議会の設立で、ようやく充電方式の共通規格化の方向が定まった。充電インフラ整備の立ち遅れによってEVの普及を阻害することがあってはならない。
三菱 i-MiEV 充電風景

三菱 i-MiEV

日産 リーフ 充電風景

日産 リーフ

トヨタ プリウス プラグイン ハイブリッド フロントビュー

トヨタ プリウス プラグイン ハイブリッド

すでに三菱 i-MiEVなどのEVが市販され、日産も年内には新型EVリーフを発売予定。トヨタもプリウス プラグイン ハイブリッドを発表するなど、充電規格の統一は急がれる。

国際標準を目指して各国がしのぎを削る

トヨタ プリウス プラグイン ハイブリッド 充電ソケット
 CHAdeMO(チャデモ)協議会は、充電インフラの普及だけが目的ではない。日本の充電方式の国際標準化を目指すのも重要なミッションだ。日本の充電インフラが国際標準化されれば、国産EVは改修を行わずそのまま販売でき、関連産業も研究開発の成果をそのまま輸出することが可能になる。関連企業が連携して標準規格に取り組むのはそのためでもある。
 5月26日、世界の主要電力会社首脳が集まる東京e8サミットが開催された。会期中に、東電会長でありCHAdeMO協議会の会長も務める勝俣恒久氏は、カナダを代表する電力会社ハイドロケベック社が協議会に加盟することを公表し、国際標準化への強い自信を示した。今後も国際標準化機関への規格採用の働きかけを、各国代表を通じて強めていくという。
 充電インフラの国際標準を目指しているのは日本だけではない。ドイツやアメリカなど、国家的なプロジェクトとして充電インフラの整備、規格化に取り組んでいる国もあり、水面下で熾烈な覇権争いが行われている。ある専門家は「ドイツなどに比べて日本の充電インフラは規格化の点で一歩進んでいる」というが、怖いのは国内市場を重視するあまりガラパゴス化してしまった携帯電話のように、高度な技術をもちながら国際競争力を失ってしまうことだ。国産EVひいては日本の自動車関連産業の行く末は、CHAdeMOの成否にかかっているといっても過言ではない。
普通充電ソケット
急速充電ソケット
急速充電器説明書き

EVの充電方法は2通りあり、100Vまたは200Vの普通充電(写真左)と急速充電用ソケットの両方を装備している。使い方もセルフスタンドでの給油を意識したものとなっている。

(レポート:CORISM編集部

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