日産GT-R/GT-Rニスモ(NISMO)新車試乗評価 究極の選択を迫られる2014年モデル。ストリート重視のGT-Rか? それともサーキット究極の速さを追求するGT-Rニスモか?
日産GT-R/GT-Rニスモ(NISMO)新車試乗評価の目次
クルマは人が創る。人が代わればクルマも変わる?
毎年進化を続ける日産GT-R。2014年モデルがいよいよ発売になった。今回の一番大きな変化は開発責任者の水野和敏氏からCPS(チーフプロダクトスペシャリスト)の田村宏志氏がGT-Rの担当になった事である。
同じ食材を使ってもシェフにより大きく味が変わる食事のように、担当者により車は大きく変わる。水野氏が市販車と同じ仕様でニュルブルクリンクのタイムを向上させる事に拘っていたが、田村氏は二つの方向性のあるGT-Rを提案してきた。
普通に乗る人には、より快適性を高めた日産GT-Rがあり、速さを求めスペシャルなGT-Rが欲しい人には究極の走りを目指したGT-Rニスモを用意した。その日産GT-R ニスモは世界一のテストコース、ドイツのニュルブルクリンク北コースを量産車で世界最速の7分8秒679のラップを刻み、スーパースポーツカーメーカーのハートに大きな刺激を与えたに違いない。
2014年モデルエクステリアで最初に気付いた変更点は、フロントフェンダーのオーナメントがクローム塗装に変更した事。また、高価なLEDヘッドランプを採用し、「稲妻の閃光」をイメージした新デザインのLEDポジショニングランプ、リヤコンビランプもより個性的なLEDランプが採用された。インテリアは、カラートリムの拡大やメーターのディテールのなどの変更もされている。
圧倒的な速さを保ったまま、乗り心地と静粛性が大幅に向上!
最初は、基準車で高速道路を含む一般道を試乗した。走り出して直ぐに気付くのがステアリングの軽さ、乗り心地の良さ、そして静粛性が向上した事である。ステアリングの軽さを希望するGT-Rユーザーが多かったらしいが、スカイラインGT-Rを乗り継いだ(R32GT-R、R34GT-R)私としては、従来の日産GT-Rはステアリングが特に重いと感じた事は無かった。ステアリングの軽さと引き替えに、日産GT-Rはスーパースポーツカーの所有満足度も少し軽くなったように感じる。
そうは言っても従来は乗り心地が悪く、覚悟を決めて乗る必要があったGT-Rだがが、より普通の車に近づいた2014年モデルは、いつでも気楽に運転が出来るようになった。
従来のGT-Rは、速さと引き替えに騒々しい車内であったが、2014年モデルはロードノイズだけでなくリヤからのメカニカルノイズがウソのように少なくなった。吸遮音材の最適配置やボーズのノイズキャンセラーの採用も静かさに貢献しているのだろうが、部品精度向上も要因との説明を受けた。年々、製作の熟練度が上がり、良くなるのに異論は無いが、逆にそんなに精度の向上が判るほど低い状態でリリースしていたのかと初期のGT-Rのオーナーから不満が出るかもしれない。
2013年モデルから最高出力550PSに上がったが、トラクション不足を感じる場面があった。しかし2014年モデルはサーキットを含め、しっかり路面にパワーを伝えトラクションに対する不満を感じる事はない。改善した理由としては、サスペンションの進化だけでなく車体剛性が向上し、タイヤの変更によりエンジンパワーを路面にしっかり伝えられるようになった。
勇気を出してアクセルペダルを床まで踏み込むと、飛行機の離陸のように身体がシートに押し付けられ顔の筋肉(表情筋)さえも後ろに引っ張られ、自分の意志と関係無く顔が強ばってしまう。アクセルを踏み続けるには勇気・気力が必要で、気付けばアクセルペダルを緩めてしまっている。高速道路に持ち込んでも、GT-Rは速すぎてその性能を試せるのは一瞬だけだ。GT-R本来の性能を知りたいならサーキットに行くしかない。これほどの高性能車なので、一般道では宝の持ち腐れになってしまうが、乗り心地が良くなり、静粛性が増した2014年モデルなら普段のちょっとしたドライブにでも出動する機会は多くなるだろう。
あり余る600psを思う存分楽しむのなら、高速サーキットに行くしかないと感じたGT-Rニスモ(NISMO)
サーキット試乗では、日産渾身の1台ともいえるGT-Rニスモを試した。大容量タービンを使ってチューンしたエンジンは+50PSの600PSに到達。カーボンファイバー素材を多用したフロント、サイドシルカバー、リヤスポイラー、アンダーカバーなど空力パーツを装着し、大幅に空力性能を向上。
サスペンションだけでなく、ボディもホワイトボディに構造用接着剤を追加して補強し、室内も専用のレカロ製バケットシートに変更されている。性能も凄いが、価格も1501,5万円と極めて高価であり、GT-Rニスモのステアリングを握れるのは選ばれた人のみである。
尚、ニュルブルクリンク北コースを7分8秒で駆け抜けたGT-Rは、今後オプションで発売される予定だというパッケージを装着したものであり、今回の試乗車とは若干異なる。試乗コースはミニサーキットの主に外周だけを使いコーナーの数は少なく、直線も短いのでパドルシフトが忙しい。それでもメインスタンド前では4速まで入れて、第一コーナーに飛び込む。強力な減速Gを発生するブレーキのペダルの感触を確かめながら踏み込み、ハンドルを右に切ると想像以上にフロントがインに切れ込んでいく。後輪のグリップが前輪に比べて低いのでリヤが外側に出てクルッと回り込む。外側に出るリヤタイヤだが、コントロール制は良く不安を感じない。出口見えたらアクセルを踏むだけで4輪がしっかり路面を蹴り、600PSという大パワーが炸裂する。
正直言うと基準車の550PSと、ニスモの600PSの差が分かりにくい。どちらも凄い加速なのは変わりないからだ。サーキットで乗り心地を云々するのはおかしいかもしれないが、基準車同様にニスモの乗り心地も良い。3周だけの短い試乗であったが、2014年モデルの進化に触れる事が出来た。
一方、高速コーナーのあるサーキットでGT-Rを試したみたいという欲求が湧いてきた。可能なら、2013年モデルを試乗した菅生サーキットや富士スピードウェイで乗ってみたい。一番、試してみたいのはニュルブルクリンク北コースであり、どんな走りを見せてくれるのか想像するだけでワクワクしてくる。
まだまだ改良の余地を残す日産GT-R。10年後まで、進化は続くのか?
2014年モデルの日産GT-Rを誉めすぎたので、独善的な意見を述べよう。乗り心地は良くなったのは大賛成である。しかし、タイヤの接地感が低下したように感じた。新しいダンロップの専用タイヤは横剛性を高めたとの事であるが、柔らかく感じて私は好きになれない。もっとしっかりした剛性感が欲しい。ただ、これはタイヤだけの責任ではなく、サスペンションの影響が大きい。フロントの回頭性が良くなったが、リヤのスタビリティを低下させて確保している。もっと高い次元でのバランスを取る方向にして欲しい。また、タイヤのグリップを越えてからのコントロール性は良いのだが、グリップの範囲内での繊細な応答性が悪くいえば大雑把である。「エイ!」「ヤァ!」とハンドルを切るイメージである。運転して凄いとは思うものの、楽しくはない。
インテリアは1,000万円のクルマとしては、魅力的とはいいにくい。良くも悪くもニッサン車のクルマであると一目で分かる素材、造形がそう感じさせる。ステアリングの位置調整も手動であるのは、世界のスーパースポーツカーと戦うクルマとしてはいかがなものかと感じる。エアコンの吹き出し口もマーチと同じような方式だったりと、特別な1台という印象はあまりしない。
GT-Rだけの為に部品を造るのは、コストの面から出来ないのは理解出来るが、せめてダッシュボードや天井部分にアルカンターラなどの高級素材を使うとか、アクセントでトリム部分を変更するなどセンスでカバーして欲しい。ポルシェだって見えない部分には、フォールクスワーゲンのパーツを使用しているのだから、高級感を上手に演出する方法はまだまだあるはずだ。
日本車では異例のイヤー・モデルとして、毎年大きく変化するGT-R。2014年モデルも確実に進化していた。新たに二つの方向性のGT-Rが登場し、今後の展開が楽しみである。今回も最新のGT-Rがベストという状況なので、GT-R好きな人なら毎年乗り換えても後悔はしない。
日産GT-R価格、スペックなど
■日産GT-R価格
GT-R Pure edition 9,051,000
GT-R Black edition 9,933,000
GT-R Premium edition 10,111,500
代表グレード | 日産GT-R ニスモ |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,680×1,895×1,370mm |
ホイールベース[mm] | 2780mm |
トレッド前/後[mm] | 1,600/1,600mm |
車両重量[kg] | 1,720kg |
総排気量[cc] | 3,799cc |
エンジン最高出力[ps(kw)] | 600(441) |
エンジン最大トルク[N・m(㎏-m)] | 652Nm(66.5) |
ミッション | 6速デュアルクラッチトランスミッション |
タイヤサイズ | F:255/40 ZRF20、R:285/35 ZRF20 |
燃費 | JC08モード -km/L |
定員[人] | 4人 |
税込価格[円] | 15,015,000円 |
燃料 | 無鉛プレミアム |
レポート | 丸山和敏 |
写真 | 編集部 |
日産GT-R ニスモ(NISMO)画像集
日産GT-Rニュルタイムアタック仕様車画像集
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