コンサバの真相【シトロエンC4試乗評価】

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【シトロエン】2011/07/05

 

販売戦略上、負けられない。そのための、デザイン

シトロエンC4

 なぜ、コンサバになるのか? シトロエンC4を見て叫びたくなったし、一番の疑問でもあった。これで、コンサバ? と思う人も多いかもしれないが、先代のC4や現行のC6の丸くて独創的なデザインからみれば、十分にコンサバだ。シトロエンC6なんて、未だに街に現れるとセンセーショナル。子供ですら、変わったクルマが走っている! と、指をさすほど。

シトロエンのデザインは、C5あたりからコンサバ系へとその方向を変えた。理由は、シトロエンのデザインはトビ過ぎだから・・・。マニアック視点で見れば、そんなシトロエンが大好きなのだが、シトロエンも自動車メーカー。芸術品を作っているわけではないので、どれだけ売れたかが商品の価値を決める。トビ過ぎデザインでは、好き嫌いが明確に分かれ、台数が出ない。残念なことだけど、ニッチではビジネスにならないのだ。とくに、このC4のように欧州が主戦場でボリューム勝負のクルマは、冒険ができないのが実情。VWゴルフを見れば分かる通り、結局、コンサバが勝負を制する。そんな訳で、シトロエンC4も、少しコンサバ系へとシフトした。

少しコンサバ系と書いたのは、シトロエンはやっぱりシトロエン。コンサバになったとはいえ、十分に個性的だ。リヤビューに関しては、それほど魅かれないが、顔がいい。キュッと釣り目のライトや、ボンネットに縦に入ったプレスライン。全体にギュッと引き締まっていて精悍だ。先代C4のユルさも良かったが、これはこれで納得がいく。

ボディサイトにまわると、2本のキャラクターラインがリアドア中心付近で、交わることなく消える。オイオイ、プレスラインの入れ間違えてない? なんて、ことはなくボディサイドのシャープさを強調する手法だ。ちょっと、ドイツ車っぽくなったなんて、口が裂けても言えないが、ドイツ車好きでも気になる存在になったのは間違いない。

シトロエンからもらった数々の資料には、380リッターのクラス最大級のラゲッジルームの容量だとか、ペットボトル4本が収納できるセンターコンソールなど、らしくない記述もたくさんあることからも、間違いなくドイツのライバル車を意識していること感じさせてくれた。

シトロエンC4
シトロエンC4
シトロエンC4
コンサバの真相【シトロエンC4試乗評価】

 

センターフィックスステアリングが無いが、ハイドロじゃないのにハイドロっぽいフットワーク

シトロエンC4

 エクスクルーシブには、パドルシフトが装備される

 シートに座り、ステアリングを握る。少し動かそうとステアリングを切ると、アレっ? が3連発ほど。固定式のセンターパッドを持つ、センターフィックスステアリングではないのだ。壊れたのかと思ったほど、驚いた。たぶん、コストの問題だろう。センターメーターも無くなり、インテリアもコンサバだ。しかし、柔らかなラインで構成されるダッシュボードや、6速EGS(自動変速6MT)のカーボン調シフトゲートやノブのデザイン力はさすがだと評価したい。

シートデザインもスタイリッシュ。ヘッドレストのカタチにこだわりを感じる。座り心地も、昔のフカフカシートとはいかないものの、ゆったりしたサイズでリラックスできるタイプ。ベージュのインテリアとオプションのパノラミックガラスルーフパッケージと組み合わせると、明るく開放的なインテリアが強調される。

搭載されるエンジンは2タイプ。セダクションと呼ばれるグレードには、1.6リッター直4エンジン。120馬力&160Nmを発揮し、4ATと組み合わされる。また、エクスクルーシブと呼ばれるグレードには、ハイパワーな1.6リッター直4ターボが搭載され、6速EGS(自動変速6MT)と組み合わされ、156馬力&240Nmをアウトプットする。

1.6リッターエンジンのフィーリングは、ごく普通で平均的。どちらかというと、高回転で走るタイプだ。4ATだが、積極的に自らシフトチェンジすれば、それなりにスポーティな走りができる。また、この4ATは熟成が進み妙なショックはない。

エクスクルーシブは、1370kgというボディに2.5リッター車並のトルクがあるので、カタチは同じC4でもまったく違うクルマのようだ。1400回転という低回転から最大トルクを発揮するので、想像以上にホットな走りが楽しめる。ただ、学習機能付の6速EGSだが、やはりダイレクト感のないちょっとヌルっとしたシフトチェンジは、VWのDSGなどと比べると分が悪い。

スタイルがコンサバにったこともあり、乗り心地がカタメの少々ドイツ車っぽくなっているのかと心配したが、それはいらぬ心配だった。たっぷりあるサスペンションのストロークを十分に使った乗り心地は、シトロエンならではのもの。ハイドロサスペンションではないのに、なぜかそれっぽい。フワッとした柔らかめの乗り味だが、コシがあるというべきなのか、路面の上を滑っているイメージだ。この乗り味は、明らかにドイツ車とは違う独特なもの。このフィーリングが気に入れば、それだけで買ってもいいかもしれない。

シトロエンC4

 全長が伸びたことにより、ゆとりある空間になったリヤシート

シトロエンC4

 ゆったりとしているが、しっかりと体をホールドするフロントシート

シトロエンC4

 380Lというクラス最大級の容量を誇るラゲッジ

 

シトロエンC4

 シートバックを倒すと877㎜の荷室長が1565㎜まで拡大する

シトロエンC4

 カーボン調のマテリアルでスポーティに演出されている6速EGSのシフトまわり

シトロエンC4

 4ATのシフトまわりは、EGSに比べるとオーソドックス。EGS並みの演出が欲しい

もう少し安いとウレシイ!

 C4を選ぶなら、やはり大きな開口部が魅力のパノラミックガラスルーフが欲しくなる。しかし、この装備は17インチホイールとセットで、なんと16万円。すると、256万円のセダクションが272万円となり、エクスクルーシブ299万円(パノラミックガラスルーフ標準装備)との差は、27万円となる。エクスクルーシブには、さらにキセノンヘッドライトやフロントソナー/パーキングスペースセンサー、パドルシフトなどが装備されるので、27万円アップでターボエンジンとこれらの装備が付くなら、逆にお買い得だったりもするので悩ましい。ガラスルーフをつけたいのなら、エクスクルーシブで、ガラスルーフがいらないのならセダクション。そんな選び方がいいかもしれない。

どちらにしても、ちょっと高価な価格帯であるのには間違いない。エントリーグレードになるセダクションの価格256万円は、ライバルのVWゴルフトレンドライン(257万円)より1万円安い。エコカー減税対応のゴルフに比べれば、税制面や燃費、ミッションなどで差が出ているのも現実。エモーショナルな部分だけで買う覚悟を決めるには、少々ハードルが高い。価格面でもう少しリーズナブルであれば、C4も日本においてその存在価値は高くなるはずだと評価できる。

シトロエンC4

 パワフルな1.6リッターターボエンジン。このエンジンには、インテリジェントトラクションコントロール機能が装備される

シトロエンC4

 エクスクルーシブのメーター。左がタコメーターで、シフトポジションが表示される。光の加減で走行中、反射が激しく見にくいときもあった

シトロエンC4

 メーターの照明色は、好みに応じて白色系からブルー系まで5段階に調整可能

 

シトロエンC4

 まるで、ハイドロのような滑らかなフットワークをもつ

シトロエンDS4

 近日中に発表予定であるDS4

シトロエンDS4

 3ドアのように見えるが、5ドア。リヤのドアノブが分からないようなデザイン処理が施されている

 

代表グレード シトロエンC4セダクション
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4330×1790×1490mm
車両重量[kg] 1310kg
総排気量[cc] 1598cc
最高出力[ps(kw)/rpm] 120ps(88kW)/6000rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 16.3kg-m(160N・m)/4250rpm
トランスミッション 4速AT
定員[人] 5人
消費税込価格[万円] 256万円
発売日 2011/07/1
レポート 編集部
写真 プジョー・シトロエン・ジャポン

 

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(レポート:大岡 智彦

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