【サーブ 9-3X ミニ試乗評価】SUV風味のサーブ、コレってアリ!?

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【その他】2011/02/19

 

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス)

サーブを取り巻く紆余曲折アレコレを経て、再び復活!

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) サーブブランド ロゴ 画像

 「クルマは画一化されてつまらなくなった」なんて、ちょっと斜に構えて言ってるあなた。感性鈍ってますよ! いやいやクルマの世界はまだまだ奥深いなあと実感する。サーブの「9-3X(ナイン・スリー・エックス)」は、そんな感慨を覚える1台。
ん・・「サーブ」!? なんだか懐かしいブランドだなあ。無骨でちょっと古典的なスタイルが受け、バブル華やかな頃ギョーカイ人とかにサーブ900のカブリオレがオシャレ車として支持されてたっけ。あれから20年。GMグループから独立したのは聞いてたけど、その後はどうなったん??
・・・というのが、多くのクルマ好きにとって正直な実感だろう。

サーブ・オートモービルがGMの完全子会社から独立したのは昨年2010年の2月のこと。独立経営事業として買収したのは、一時F1チームも手がけていたオランダの自動車メーカー、スパイ・カーズだ。ちなみにスウェーデン本国の工場はそのまま稼動している模様。これに伴い、日本での取扱いも従来のGM日本法人から、ケータハムなどの輸入車を扱う東京のピーシーアイへと2010年9月より移管している。まさにその移行期間ということもあり、今のところ引き続きヤナセ系のディーラーでも取り扱われている状態だ。そして今回紹介するサーブ 9-3Xは、その新生サーブの販売開始と同時に、目玉モデルとして発表されたのだった。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) エクステリア リアコンビランプ 画像
SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) フロント周り 画像
SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) ラゲッジルーム

新生サーブの目玉モデルは、ちょっとミーハーなSUV風

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) リアビュー 画像

タイヤサイズは225/50R17で専用デザインのアルミホイールと組み合わされる

 このサーブ 9-3Xを端的に言うならば、9-3(及びワゴンモデル「9-3 Sport Estate」)をベースに、流行りのSUVスタイルを採り入れたクロスオーバー版だ。ちょっとミーハーな気もするけれど、イマドキのトレンドに沿った格好か。
車高を35mm上げた事で、悪路や雪道での走破性を高めている。さらにバンバーやオーバーフェンダーにダークグレーの装飾を、またバンパーなどにアルミパネルの装飾も加えたことで、外観にもSUVのワイルドさも加えた。それでいてSUVほど大げさなボディサイズではないし、したがって街中での使い勝手も良好だと評価できる。
さらに、日本にやってくる9-3Xの駆動方式は4WD。サーブではXWD(クロスホイールドライブ)と呼ぶもので、湿式クラッチを介した電子制御式トルクトランスファーデバイス「TTD」により前後の駆動力を配分するフルタイム式4WDだ。前輪駆動のなんちゃってSUVというワケでは決してない。9-3Xの地上高の高さとともに、4WDはいざという時の心強い保険。キャンプ場などで未舗装路に踏み入れるシーン、また冬場には温暖な東京でも、年に1度くらいはまとまった積雪に出くわすこともある。「そうそう」と思えるのなら、選択肢に加えてみてはどうだろう。

というワケでさっそく乗ってみる。まずはキーを挿して、っと・・・ここで「え、どこだっけ」と焦っちゃいけない。サーブのキーは、昔からシフトの手前、手元位置と決まってるのだ。万が一の事故の際に、出っ張ったキーが乗員の足元に危険が及ぶことを嫌った、サーブ独自の安全思想が今も生きているというワケ。もっとも、シートベルト必須、そもそも挿さないスマートキーすら普及する現代にあっては、実はそれほど関係ないことなのだけど、こういうちょっとした”くすぐり”に、クルマ好きは弱いんだよな。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) イグニッション・キー 画像

SAAB車のイグニッション・キー位置は昔も今もこのセンターパネルの場所にある。乗員保護という安全哲学を基に、サーブらしさを頑固に保つ。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) フロントシート 画像

たっぷりしたサイズで乗員を包み込んでくれるフロントシートはロングドライブにも最適。レジャーカーとして活躍する9-3Xにもぴったりな仕立てだ。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) インパネ ドライバーズシート 画像

包み込むような計器類のデザインは往年のサーブ900あたりをほうふつとさせる。飛行機メーカー出自のデザインは「コックピット」と呼ぶに相応しい。

独自性と先進性を備えたサーブらしさを今も引き継ぐ

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) 2.0リッターDOHCインタークーラー付きターボ エンジン 画像

 搭載されるのは、GM時代に由来する2.0リッターエンジン。この車体の大きさに対し2.0リッターでは役不足では?と思うが、さにあらず。VWなんかより20年も早く小排気量+ターボチャージャーの組み合わせを採用していたサーブの伝統をしっかり受け継いで、直4 DOHC+インタークーラー付きターボを搭載している。
最高出力210ps(154kW)/5300rpm、最大トルク30.6kg-m(300N・m)/2500-4000rpmと十分な性能。ターボと聞いて思い浮かぶドカーンという刺激はないけれど(そういうのはイマドキ流行らない)、穏やかに、でもぐいぐいと加速しながら、気付くといいペースに乗っている感じが心地よい。これまたサーブの伝統であるたっぷりしたハイバックシートに身を委ね、ゆったりとロングドライブを楽しむにぴったりな性格だと評価したい。
ロングドライブといえば、「ナイトパネル」もしっかり装備されている。これは夜間ドライブの際に、メーターパネルの照明を最低限に落としてしまうというもの。もともと航空機メーカーだったサーブならではの発想で、夜間の巡航時に照明の明かりでドライバーを刺激しない仕掛けなのだ。昼間の短時間の試乗につき体感はかなわなかったけど、ちょっと気になるところ。どんな状態かは、欄外の画像を参照して頂こう。

伝統を頑なに守る頑固者のサーブに、イマドキ風味のSUV!?・・・と最初は違和感を覚えたけれど、穏やかで優しい走りにおおらかなSUV風味の組み合わせは、実のところサーブのキャラに良くマッチしていると思う。コレって、十分に「アリ」だ。短時間の試乗ではあるけれど、そう確信した。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) ナイトパネル スイッチ 画像

ナビゲーションシステムの隣り、上から2番目がナイトパネルのスイッチだ。下のSは6速ATのSモード切替スイッチ。シフトタイミングなどをより高回転まで引っ張るスポーティな仕様に切り替えることが出来る。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) ナイトパネル イメージ画像

ナイトパネルのイメージ画像[写真は欧州仕様車]
メーター内に最低限のインフォメーションのみ表示し、あとは消灯しているのが分かるだろう。

SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) パーキングブレーキ 画像

キーの位置も変わっているが、変わっているといえばパーキングブレーキ。デザイン性を重視してるのだけど、うっかりすると指を挟んじゃいそうな気も。
試乗車 SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス)[4WD]
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4690x1802x1529mm
車両重量[kg] 1680kg
総排気量[cc] 1998cc
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
最高出力[ps(kw)/rpm] 209ps(154kW)/5300rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 30.6kg-m(300N・m)/2500rpm
トランスミッション セントロニックマニュアルモード付き6速AT
10・15モード燃費[km/L]
定員[人] 5人
消費税込価格[万円] 520.0万円
発売日 2010/09/01
レポート 徳田 透(CORISM編集部)
写真 CORISM編集部
SAAB 9-3X(サーブ ナイン・スリー・エックス) リアビュー 画像

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